心肥大では左室の心筋が分厚くなるため、心臓自体が硬くなります。
そのため 収縮するにも余分な力がいる だけでなく、動脈硬化がなくても相対的な血流不足 に陥ります。また心筋が硬いため 弛緩するときにもスムーズにもとに戻りにくく なります。
このため心肥大(左室肥大)では、① R波の増高、② ST降下、③ T波異常 が組み合わさって認められます。左室肥大の程度が強くなればなるほど、これら3つの所見は著明に表れます。
左室肥大を起こす病態は、
などが考えられます。
軽度の左室肥大では、R波が高くなるだけでT波が正常です。またR波は正常でもT波だけ尖鋭化を示すことがあります。(図1)
典型的な左室肥大では、肥大した心筋は血流不足になるため(心筋虚血)、ST降下やT波陰性化を伴います(図2)。
著明な左室肥大を起こす肥大型心筋症では、ST降下と巨大陰性T波が特徴です。
心尖部肥大型心筋症(心臓の一部分だけ肥大を起こすタイプ)ではST変化は伴わないで、大きな陰性T波を生じます。(図3、4)
強い左室肥大では、心筋虚血と同じようにST降下やT波の変化が起こるため、まとめてST-T変化といいます。
point point強い左室肥大では心筋虚血と同じST-T変化を起こす!
左室肥大の診断にはいくつかの診断基準があります(成書をご覧下さい)。
診断基準はR波の高さなどにより少しずつ違いますが、R波の増高とST-T変化を伴う点からは同一です。