日常外来診療に基づいた総合内科のアプローチ
-- 臨床研修医のために --

末梢性ニューロパチー

臨床症状

感覚障害と運動障害がみられますが、いずれも局在がはっきりしていることが最大の特徴です。

感覚障害の症状はしびれと疼痛ですが、脊髄実質や脳幹障害でみられる解離性感覚障害(触覚と温痛覚の解離)は起こりません。

運動障害の症状は筋力低下ですが、特徴的な運動麻痺には下垂足、下垂手、鷲手、猿手などがあります(多発性単神経炎)。

神経所見

  1. 患側で深部腱反射減弱し、多くの場合左右差がみられること
  2. 病的反射はみられない
  3. 筋萎縮と線維束れん縮

感覚性運動失調(Romberg徴候陽性、開脚・ふらつき歩行)などの深部感覚障害や自律神経障害(無汗症や発汗過多、体温調節障害、嘔吐・便秘ならびに下痢などの消化管障害、起立性調節障害など)は神経根や脊髄実質病変では起こることがありますが、純粋な末梢性ニューロパチーでは目立ちません。

実臨床でしばしばみられる末梢性ニューロパチーとして絞扼性ニューロパチーがありますが、多くの種類と特徴があるため、詳しくは別に詳しく述べることにします。

末梢性ニューロパチーの種類

末梢性ニューロパチーには次の種類があります。

表1 末梢性ニューロパチーの種類
種類(疾患名) 特徴
■血管炎に伴うニューロパチー 表2へ
代表は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症EGPA
■免疫介在性ニューロパチー 表3へ
1.Guillain-Barre症候群(GBS)、Fisher症候群
2.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
3.多巣性運動ニューロパチー(MMN)
4.IgMパラプロテイン血症を伴うニューロパチー
■代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー 表4へ
1.ビタミンB1欠乏性ニューロパチー(dry beriberi)
2.葉酸欠乏性ニューロパチー
3.アルコール性ニューロパチー
4.尿毒症性ニューロパチー
5.化学療法によるニューロパチー
■糖尿病性末梢神経障害DPN 表5へ
■遺伝性ニューロパチー 表6へ
1.Charcot-Marie-Tooth病CMT(=HMSN)
2.遺伝性運動性ニューロパチー(HMN)
3.遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)
■家族性アミロイドポリニューロパチー
(遺伝性トランスサイレチンTTR型アミロイドーシスATTR)
表7へ
■傍腫瘍性ニューロパチー 表8へ
1.亜急性感覚性ニューロパチー
2.感覚運動性ニューロパチー
3.自律神経性ニューロパチー
■膠原病性ニューロパチー 表9へ
代表はシェーグレン症候群

それぞれの疾患の特徴は、表2から表9にまとめました。クリックすると参照できます。

血管炎に伴うニューロパチー

表2 血管炎に伴うニューロパチー
種類
(疾患名)
特徴
血管炎に伴うニューロパチー
  • 代表は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症EGPAで、下肢の感覚障害と運動障害が特徴
  • 多発性単神経炎(multiple mononeuropathy)は複数の主要神経幹が障害され左右非対称 
    *腓骨神経(下垂足)、尺骨神経(鷲手)、橈骨神経(下垂手)、正中神経(猿手)など 
  • 頸椎疾患・腰椎疾患などと誤診されやすい
  • 典型的な臨床像は、①左右差を有し、②四肢遠位部に障害のアクセントのある、③感覚>運動型の、④亜急性に進行する多発性単神経炎
  • 症状は左右対称に起こることはなく、最初に右の下垂足が起こり、次の日には左手の下垂手、というような進行形態をとるのが典型例
  • 障害される神経は細かい分枝ではなく、右の腓骨神経、左の橈骨神経、左の深腓骨神経といったように神経幹の支配領域の感覚障害・運動障害
  • 感覚障害を伴わない多発性単神経炎では、血管炎以外の疾患(たとえば、多巣性運動ニューロパチー)をまず念頭に浮かべるべき
  • 罹患神経の支配領域に沿った強い痛みを伴うことも血管炎性ニューロパチーの大きな特徴の一つ
  • ANCA陰性で炎症が末梢神経に限局する非全身性血管炎性ニューロパチーと呼ばれる病型も存在するが、基本的には血管炎は全身疾患

免疫介在性ニューロパチー

表3 免疫介在性ニューロパチー
種類
(疾患名)
特徴
免疫介在性ニューロパチー ❶ Guillain-Barre症候群(GBS)
  • ①感冒や下痢などの先行感染の存在、②急速進行性・左右対称性の四肢筋力低下を主徴とし、症状は4週以内にピークになり以降は軽快
  • 四肢筋力低下と腱反射の減弱または低下、その他に脳神経症状、手袋靴下型の感覚障害、運動失調ならびに自律神経障害など多彩な症状
  • 抗糖脂質抗体(主にガングリオシド)の検出率は約60%
  • 24%に尿閉が合併し、66%で腰痛などの疼痛があり、SLRT(straight leg raising test)陽性が27%と報告
Fisher症候群
  • GBSの亜型と考えられ、急性外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を3徴、GQ1b IgG抗体陽性
  • GBSを疑い、両側の瞳孔異常と全方向性眼筋麻痺では本症を疑う
❷ 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
  • 2ヶ月以上進行する四肢対称性の筋力低下を呈し、腱反射の減弱または消失
  • 四肢筋力低下と共に、手袋靴下型の異常感覚を伴うことが多い
  • 慢性経過をたどるため、再発を繰り返すと二次性の軸索障害を来し不可逆性の病態に伸展する可能性
❸ 多巣性運動ニューロパチー(MMN)
  • 緩徐進行性で左右非対称の筋力低下を来す慢性免疫性ニューロパチー
  • 筋力低下は上肢遠位部にみられ、筋萎縮を伴い、感覚障害は伴わない
  • 重要な鑑別疾患に頸椎疾患やALS、とくにALSとの鑑別がむつかしい
❹ IgMパラプロテイン血症を伴うニューロパチー
  • 慢性進行性の経過、四肢対称性で遠位優位の感覚運動性ニューロパチー
  • 通常、感覚障害が強く、深部覚障害による運動失調がみられるが、運動障害は軽度であることが多い
  • 血清免疫電気泳動でIgM M蛋白がみられる
  • 神経伝導検査では遠位部優位の脱髄所見がみられるため、CIDPとの鑑別が重要

代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー

表4 代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー
種類
(疾患名)
特徴
代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー ❶ ビタミンB1欠乏性ニューロパチー(dry beriberi)
  • 偏食、アルコール依存、胃切除、暑い季節の屋外重労働などによる消費量の増加
  • 下肢優位の多発ニューロパチー、初発症状は下肢遠位部のしびれ感や下肢の脱力、急性発症が多いが緩徐進行など多様
  • 運動障害>感覚障害が多く、中には急速に筋力低下が進行し、当初GBSと誤診された例も報告
  • 感覚障害は表在感覚も深部感覚も同程度に障害される傾向があり、葉酸欠乏性やアルコール性との鑑別に重要
  • ビタミンB1欠乏による他の症状、Werniche脳症、心不全ならびに筋痛などの合併は患者によりまちまちでニューロパチーによる症状がのみが目立つことが多い
    Werniche脳症は失調が先行し、82%で何らかの意識障害・眼振を認め、進行すると縮瞳。末梢神経障害は29%にとどまる
  • 速やかにビタミンB1投与するが、胃切除患者でも経口投与のみで効果を期待できる
❷ 葉酸欠乏性ニューロパチー
  • 葉酸は新鮮な緑黄色野菜、柑橘類、豆類、レバーなどに多いが、熱に弱く調理の際に失われやすい特徴
  • 葉酸欠乏は免疫系、造血系、心血管系、皮膚、神経系などさまざまな障害、とくに巨赤芽球性貧血、神経管閉鎖不全に伴う二分脊椎、亜急性連合性脊髄変性症が有名
  • 我が国でも葉酸欠乏患者が増加し、今日ではニューロパチーの鑑別診断の中でも重要な位置を占めるに至っている
  • 下肢優位の多発ニューロパチー型の障害分布、初発症状は下肢遠位部のしびれ感や感覚性運動失調による歩行時のふらつきであり、月から年単位の緩徐進行性
  • 感覚障害>運動障害であるが、感覚障害は表在感覚よりも深部感覚が優位に障害される
  • ニューロパチーでは通常、深部腱反射は低下するが、葉酸欠乏では脊髄症を合併してとくに上肢の深部腱反射が亢進することも多い
  • 血清葉酸測定の特異度は高くなく、葉酸欠乏による代謝障害によりホモシステインが増加する。ホモシステイン上昇はビタミンB12 欠乏でも起こりうる
  • 葉酸欠乏を疑うときは、ホモシステイン、B12も同時に測定。巨赤芽球性貧血がないことで葉酸欠乏を否定しないこと
❸ アルコール性ニューロパチー
  • 下肢優位の多発ニューロパチー型の障害分布はビタミンB1欠乏と同様だが次の点で異なっていた
  • 初発症状が下肢の痛みであり、月から年単位の緩徐進行を示した
  • 深部感覚よりも表在感覚の障害が目立つ点
❹ 尿毒症性ニューロパチー
❺ 化学療法によるニューロパチー

糖尿病性末梢神経障害DPN

表5 糖尿病性末梢神経障害DPN
種類
(疾患名)
特徴
糖尿病性末梢神経障害DPN
  • 遠位性対称性多発神経障害DSPNと呼ばれる感覚運動神経障害と自律神経障害DANを含む
  • その他の全身性DPNには治療誘発性神経障害などの急性有痛性神経障害が含まれる
  • 局所DPNは単神経障害として脳神経障害(多くは外転神経麻痺)および四肢絞扼性・圧迫性神経障害(手根管・肘部管症候群など)、
  • 多巣性神経障害として脊髄神経根・神経叢および多発性単神経障害を含む
  • DPNは遠位性対称性多発神経障害で、感覚障害が運動障害に先行する
  • 糖尿病などで症状の明らかな左右差、上肢優位、運動優位の神経障害をみたら他疾患(脊髄疾患や絞扼性神経障害、脳血管障害など)を鑑別する
  • DPNでは病型にかかわらず疼痛が問題となる。痛みは「ジンジン、ピリピリ」と表現され、疼痛部に感覚異常を伴い夜間に増悪する

遺伝性ニューロパチー

表6 遺伝性ニューロパチー
種類
(疾患名)
特徴
遺伝性ニューロパチー 症状により遺伝性運動感覚性ニューロパチーHMSN(CMT)、遺伝性運動性ニューロパチー(HMN)ならびに遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)に大別。
HMSNは、Charcot-Marie-Tooth病CMTの名前で知られる。
遺伝性ニューロパチーの発症年齢は必ずしも小児期ではない。
❶ Charcot-Marie-Tooth病CMT(=HMSN)
  • CMTの診断には家族歴と臨床所見が大切である。発症年齢は20歳未満の小児期と50歳前後の壮年期にピークがみられる。高齢発症でもCMTは否定できない
  • 凹足(pes cavus)はほとんどのCMT患者でみられる所見
  • 下肢では遠位優位型の筋萎縮が特徴的で、シャンペンボトルを逆さまにしたような萎縮(逆シャンパンボトル様萎縮)がみられる
  • 上肢では母指球筋や骨間筋など遠位優位の筋萎縮がみられ、正中神経障害による猿手や尺骨神経障害による鷲手がみられることがある
  • 筋力低下は緩徐に進行するため自覚がない場合もある、感覚障害は軽度であることが多く、感覚障害の訴えがない場合はHMNと臨床診断されることもある
  • 深部腱反射減弱ないしは消失するが、一部のCMTでは上位運動ニューロン障害の合併のため、深部腱反射は亢進しBabinski反射などの病的反射がみられることがある
❷ 遺伝性運動性ニューロパチー(HMN)
  • 下位運動ニューロン障害により筋萎縮する。感覚障害はないか、あってもごく軽度である
  • 遠位筋萎縮を主体にするものは遠位筋型distalHMN、近位筋萎縮を主体とするものは脊髄性筋萎縮症SMAと呼ばれるため、dHMNは遠位型脊髄性筋萎縮症とも呼ばれる
  • 2017年本邦初のアンチセンスオリゴヌクレオチド療法が保険適用となった
❸ 遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)
  • 感覚障害を主症状とするまれな遺伝性ニューロパチー
  • 表在覚障害、深部感覚障害、自律神経障害の程度はさまざまである
  • 表在覚の低下・消失により無痛症を呈することも少なくない。無痛症では足趾の外傷・感染に気がつくのが遅れるため、壊疽・潰瘍や骨髄炎となり、足趾切断を余儀なくされる。むしろこのようなことをきっかけに診断されることもある
  • 自律神経症状も多彩で、無汗症や発汗過多、体温調節障害、消化管障害(嘔吐、便秘ならびに下痢)、起立性調節障害などがみられる
  • 頭蓋変形を呈するものやCharcot関節を呈するものが多くみられる(神経性関節症とも呼ばれ、関節に炎症が生じても痛みを感じないために関節破壊が進行することで生じる関節変形)

家族性アミロイドポリニューロパチー(遺伝性トランスサイレチンTTR型アミロイドーシスATTR)

表7 家族性アミロイドポリニューロパチー(遺伝性トランスサイレチンTTR型アミロイドーシスATTR)
種類
(疾患名)
特徴
家族性アミロイドポリニューロパチー
(遺伝性トランスサイレチンTTR型アミロイドーシスATTR)
  • TTRの遺伝子変異で最も多いのは30番目のバリンがメチオニンに置換したV30M変異型が最も多い
  • 集積地(熊本県や長野県)のV30M変位型は、20~40歳代の比較的若年で発症し、濃厚な家族歴を有する
    下肢末梢有意の感覚障害および多彩な自律神経障害が認められる。感覚障害は温痛覚障害が先行し、触覚・深部感覚の障害が軽い解離性感覚障害が特徴
  • 非集積地のV30M変異型では、解離性感覚障害や自律神経障害が目立たず、発症年齢が50歳以上と高齢であることや家族歴が明らかでない症例が多いことから、しばしばCIDPなどと初期診断される
    免疫治療に反応しないCIDPなどでは本疾患を疑い、生検によるアミロイド沈着やTTR遺伝子解析を行うことが重要
    筋力低下などの運動神経障害は、感覚障害よりも2~3年遅れて出現することが多い
    起立性低血圧による失神、下痢、便秘ならびに嘔吐などの消化器症状、発汗障害、神経因性膀胱、男性では勃起不全などの多彩な自律神経症状は初発症状となることが多く予後に多大な影響

傍腫瘍性ニューロパチー

表8 傍腫瘍性ニューロパチー
種類
(疾患名)
特徴
傍腫瘍性ニューロパチー 腫瘍に発現する抗原とヒト神経系の構成成分との分枝相同性による自己免疫性機序によって発症する神経症候群。
中枢・末梢神経系のいずれにも生じるが、返縁系脳炎、小脳変性症とともに亜急性感覚性ニューロパチーの頻度が高く、全体の30%を占める。
60%以上に神経症状出現時に腫瘍そのものは発見されておらず、神経症状出現後数ヶ月から2年程度の間に腫瘍の存在が明らかになることが多い。
❶ 亜急性感覚性ニューロパチー
  • 数ヶ月で進行する亜急性発症を呈し、四肢のしびれ感と深部感覚障害による運動失調がみられる
  • 深部感覚障害による運動失調が認められ、Romberg徴候陽性となる、運動失調のため開脚歩行となり、不安定で易転倒性を示す。指鼻試験・踵膝試験で運動失調が観察され、腱反射は四肢で消失
  • 最大の特徴は、筋力低下を伴わない点であり、運動神経は障害されない
  • 原発腫瘍としては、肺小細胞がんが最も多いが乳がん、卵巣がん、肺腺がん、リンパ腫など
❷ 感覚運動性ニューロパチー
❸ 自律神経性ニューロパチー

膠原病性ニューロパチー

表9 膠原病性ニューロパチー
種類
(疾患名)
特徴
膠原病性ニューロパチー シェーグレン症候群では、血管炎による急性のものと、慢性の経過をたどり、感覚神経だけが左右対称に遠位部から侵されてくる失調性感覚性(多発性)ニューロパチーの2つの型がある

これらの中で、栄養障害によるニューロパチーには注意が必要と考えています。「一人暮らし、やせた男性、アルコール多飲」という条件がそろうと、ビタミンB1欠乏性やアルコール性ニューロパチーが問題になります。

実臨床で見逃したくないニューロパチー

実臨床で見逃したくないニューロパチーは次の通りです。

血管炎および免疫性ニューロパチー
代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー
糖尿病性末梢神経障害DPN

診断名につながるポイントとして発症様式と経過、対称性、部位、症状などに注目し、表にまとめました。(表10~12)

血管炎および免疫性ニューロパチー

表10 血管炎および免疫性ニューロパチー
急性の発症
疾患名 血管炎 GBS
対称性 ×
部位 四肢遠位部 四肢
症状 感覚障害>運動障害
  • 非対称が特徴
  • 多発性単神経炎
  • 強い痛みを伴うことも
筋力低下が中心
  • 手袋靴下型の感覚障害
  • 運動失調
  • 自律神経障害 など多彩
その他 基本的に全身疾患
  • 先行感染の存在
  • 抗糖脂質抗体
    (ガングリオシド)
亜急性の経過
疾患名 CIDP
2ヵ月以上にわたり進行または再発
 
対称性  
部位 四肢  
症状 筋力低下が中心
  • 手袋靴下型の感覚障害
 
その他 脱髄疾患  
慢性の経過
疾患名 MMN IgMパラプロテイン血症を伴うニュロパチー
対称性 ×
部位 上肢遠位部 四肢遠位部
症状 筋力低下と筋委縮
  • 感覚障害はない
  • 非対称性
  • 頸椎疾患とALSとの鑑別
感覚障害が強く、筋力低下は軽度
  • 深部感覚障害による運動失調がみられる
  • CIDPとの鑑別が重要
その他 抗GMI抗体 血清免疫電気泳動でIgMのM蛋白

代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー

表11 代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー
疾患名 ビタミンB1欠乏性ニューロパチー(脚気)
対称性
部位 下肢優位の多発ニューロパチー
症状 運動障害>感覚障害、中には急速に筋力低下が進行し、当初GBSと誤診された例も報告
  • 初発症状は下肢遠位部のしびれ感や下肢脱力感
  • 急性発症が多いが緩徐進行など多彩
  • 感覚障害は表在感覚も深部感覚も同程度に障害される傾向があり、葉酸欠乏性やアルコール性との鑑別に重要
その他
  • 偏食、アルコール依存、胃切除、暑い季節の屋外重労働などによる消費量の増加
  • Werniche脳症
  • Beriberi heart
疾患名 葉酸欠乏性ニューロパチー
対称性
部位 下肢優位の多発ニューロパチー
症状 感覚障害>運動障害
  • 初発症状は下肢遠位部のしびれ感や感覚性運動失調によるふらつき
  • 経過は月から年単位の緩徐進行性であることが多い
その他
  • 葉酸は新鮮な緑黄色野菜、柑橘類、豆類、レバーなどに多いが、熱に弱く調理の際に失われやすい特徴
  • 巨赤芽球性貧血
  • 神経管閉鎖不全に伴う二分脊椎
  • 亜急性連合性脊髄変性症
疾患名 アルコール性ニューロパチー
対称性
部位 下肢優位の多発ニューロパチー
症状 分布はビタミンB1欠乏と同様だが、次の点で異なる
  • 初発症状が下肢の痛みであり、月から年単位の緩徐進行を示す
  • 深部感覚よりも表在感覚の障害が目立つ

糖尿病性末梢神経障害DPN

表12 糖尿病性末梢神経障害DPN
疾患名 糖尿病性末梢神経障害DPN
特徴
  • 遠位性対称性多発神経障害DSPNと呼ばれる感覚運動神経障害と自律神経障害DANを含む
  • その他の全身性DPNには治療誘発性神経障害などの急性有痛性神経障害が含まれる
  • 局所DPNは単神経障害として脳神経障害(多くは外転神経麻痺)および四肢絞扼性・圧迫性神経障害(手根管・肘部管症候群など)、多巣性神経障害として脊髄神経根・神経叢および多発性単神経障害を含む
  • DPNは遠位性対称性多発神経障害で、感覚障害が運動障害に先行する
  • DPNでは病型にかかわらず疼痛が問題となる。痛みは「ジンジン、ピリピリ」と表現され、疼痛部に感覚異常を伴い夜間に増悪する
  • 糖尿病などで症状の明らかな左右差、上肢優位、運動優位の神経障害をみたら他疾患(脊髄疾患や絞扼性神経障害、脳血管障害など)を鑑別する

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