内科診療所には、さまざまな訴えを抱えて多くの患者が来られます。限られた短い時間内に診察を行い、適切に検査計画をたてる必要があります。しかし、これは簡単なことではありません。
そのためには経験を踏まえて、ある程度パターン化された思考過程を持っておくことが重要だと常々感じています。言い換えると、診察のコツのようなものがあります。
ここでは、私の長年の診療経験に基づいた診断のためのコツを述べたいと思います。
発熱診断のコツ | |||
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1 | 患者の声に注意 | ➡ | 扁桃周囲炎や急性喉頭蓋炎に注意 |
2 | 検尿と尿沈渣 | ➡ | 急性腎盂炎では? |
3 | 発熱の4日ルール | ➡ | 肺炎と髄膜炎をまず疑う、長引く場合は結核を疑う |
4 | 海外渡航歴? | ➡ | マラリヤ、腸チフス、デング熱、その他旅行者感染症 |
*食事・山歩き・農作業・ペット飼育・自宅環境・性交渉 などについても確認 | |||
5 | 発疹・紅斑・関節痛? | ➡ | 以下の疾患を疑う |
溶連菌感染症、伝染性単核症(EBV・CMV・HIV など)、菊池病 ヒトパルボウイルスB19、水痘、マイコプラズマ感染症、梅毒 *皮膚筋炎、結節性紅斑、川崎病、成人スティル病 を忘れない 風疹、麻疹 ツツガムシ病・日本紅斑熱、SFTS、回帰熱、ライム病、Q熱 など(ダニ媒介) デング熱、チクングニア熱、ジカ熱、日本脳炎、マラリア など(蚊媒介) |
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6 | 下痢や咳がなく、発熱のみ先行することも | ||
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7 | 頚部リンパ節腫大または頚部痛 | ||
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8 | 周期的発熱 | ||
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9 | 超音波検査をしてみよう:Point of care ultrasound(POCUS) | ||
10 | 結核を疑う:結核性髄膜炎、粟粒結核を見落とさない | ||
11 | 心雑音に注意しよう:感染性心内膜炎では? | ||
12 | 若い女性の原因不明熱:高安動脈炎と膠原病を疑ってみよう | ||
13 | 見落とされやすい身近な原因:うつ熱、薬剤熱、悪性腫瘍では? | ||
14 | 老人ではまず悪性リンパ腫を疑い、次いで炎症反応と関節痛があれば血管炎、膠原病を疑う | ||
悪性リンパ腫および血液疾患 血管炎症候群、膠原病および類縁疾患 リウマチ性多発筋痛症 好酸球増多症候群、サルコイドーシス、アミロイドーシス IgG4関連疾患、Cogan症候群、再発性多発軟骨炎 |
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15 | 炎症性腸疾患は全身疾患と考えよう | ||
潰瘍性大腸炎、クローン病 |
発熱の有無に関係なく、咽頭痛を訴える場合には、患者の声に注意します。
「くぐもった声」はこもったような声で、扁桃周囲炎や急性喉頭蓋炎の発見にたいへん重要です。同時に食事や水分が取れるかどうか、確認します。水分やつばが飲み込みにくい時や夜に息苦しさを感じたときも、これらの疾患を疑います。
多くの場合に発熱はなく、咽頭痛だけを訴えて来院するので、声を聞いて反射的に疑いを持つことが重要です。
扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍は口を開けてもらって扁桃を観察するとすぐに分かりますが、これらの所見がなくてくぐもった声や嚥下困難を訴えるときには、急性喉頭蓋炎を疑います。
急性喉頭蓋炎を見逃すと、2~3時間後には息ができなくなることがあり大変危険です。
くぐもった声から扁桃周囲炎・膿瘍や急性喉頭蓋炎が疑われたときは、ただちに耳鼻咽喉科に紹介します。
発熱では、受診時に必ず検尿を行い、異常があれば尿沈渣も調べます。
女性では急性腎盂炎が発熱の原因のことがあります。
肋骨脊椎角(costovertebral angle:CVA)の叩打痛の左右差も調べます。
「発熱の4日ルール」は、肺炎の診断のためのルールです。
37.5℃以上の熱が4日以上続いていれば、咳の有無にかかわらず肺炎を疑いながら必ず胸部X線を撮影します。咳があればまず肺炎の可能性が高いのですが、咳がなくても肺炎が見つかることがしばしばあります。
次に、発熱が続くときには髄膜炎も疑います。髄膜炎の診断には、頭痛の有無とともに Jolt accentuation test と項部強直が大切です。これらの所見なく発熱と頭痛だけが続き、他に原因が考えられないときには、常に髄膜炎の可能性を考える必要があります。
「発熱の4日ルール」では胸部X線で肺炎がなければ、次に髄膜炎を疑うのが大切な手順です。
さらに、長引く原因不明の発熱では結核を疑います。
結核性髄膜炎は急性~慢性などさまざまな経過を取り、頭痛がなく意識変容、意欲低下、認知機能低下のみを主訴とする場合があります。項部硬直も24%で陰性と報告されています。
髄液からの結核菌の証明も困難なことが多く、胸部X線・CT、髄液検査、ADA、結核菌PCR、IGRA(T-スポット、クオンティフェロン)などを参考にします。
粟粒結核は、結核菌が血行またはリンパ行性に全身に広がり、多臓器に結核病変を形成する重症な結核感染症です。結核の1~2%を占め、血流が豊富なリンパ組織、肝臓、脾臓、中枢神経、副腎に播種する頻度が高く、剖検例では眼病変を50%に、前立腺病変を7%に認めると言われます。
高齢者やHIV患者など免疫低下患者で発症しやすいですが、健常人でも発症することがあり、亜急性に増悪する不明熱患者では積極的に疑うことが重要です。健常人では、結核蔓延国への渡航歴がないか確認することも大切です。
粟粒結核では喀痰の塗抹および培養検査の感度はいずれも約40%と低いと言われます。IGRAの活動性結核全体に対する感度は90%ですが、粟粒結核では79%にとどまることに注意します。
これらの検査で異常がないときには、簡単に「かぜ」と診断しないで、次に述べるような原因疾患がないか疑いの気持ちを持つことが極めて重要です。
海外渡航歴、食事内容、山歩き、農作業、ペット飼育、自宅環境、性交渉 などについて確認します。
海外での旅行者感染症では、まずマラリア、腸チフス、デング熱を疑います。当院でもインド出張でデング熱、ベトナム旅行での回帰熱疑いの例を経験しました。先進国のアメリカでも、地域によってコウモリの糞由来のヒストプラズマ症などに感染することがあります。
また、国内例ですが、ダニ媒介のSFTSの疑い例を経験しました(感染経路は不明)。
熱帯地からの帰国者の発熱で注意すべき疾患と検査法は次の通りです。
マラリア | ➡ | 血液塗抹標本 |
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腸チフス | ➡ | 血液培養、便培養 |
デング熱 | ➡ | PCR法、IgM抗体(保険適応外) |
発熱とともに、紅斑性皮疹を生じることがしばしばあり、診断の手がかりになります。
紅斑の中でも小紅斑やレース状のうすい紅斑は、患者自身も気がついていないことがあります。風呂上がりなどに、とくに前腕部や大腿部に発赤がないかどうか 聞いてみることが大切です。
紅斑性皮疹を生じやすいのは次の疾患です。
よく見られる原因 |
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溶連菌感染症は小児や小学生ではふつうに見られます。
子供から感染して、大人(とくに母親)も発症します。発熱がなく咽頭痛や手足や体の紅斑だけの症状もしばしばあります。軟口蓋の発赤は特徴的で、内出血を思わせるほど赤くなります(写真1)。
写真をクリックすると拡大します
慣れると、咽頭の特徴的な発赤をみるだけで疑うことができます。その場合、咽頭をぬぐって迅速診断キットで調べると簡単に分かります。
顔や手足の紅斑は特徴的で、とくに手足の浮腫を伴った紅斑は川崎病に類似します。
典型的な手指の落屑やイチゴ舌は、最近少なくなった印象があります。
溶連菌感染症、伝染性単核症IM、菊池病(壊死性リンパ節炎)、ヒトパルボウィルスB19(HPV-B19)感染症の4つは、小児や若者の原因の明らかでない発熱や発疹を見たときには常に念頭におきます。
伝染性単核症IMの中でEBウィルス感染症は若者の病気で、発熱に扁桃炎や頸部リンパ節炎、さらに特徴的な血液結果などから想定することは簡単です。
IMと診断したときには、EBウィルス、サイトメガロウィルス、HIVなどの感染の有無を調べます。ときに診断に困るのは、菊池病とHPV-B19感染症です。
菊池病は40歳以下(平均21歳)の女性に多いですが、学童や中・高校生にもみられます。
症状だけみると、伝染性単核症にたいへん似て区別は困難です。
特徴的な咽頭痛(80~85%)や有痛性頸部リンパ節炎(56~98%)が軽度で、発熱(30~50%)だけが続くことがあります。そこに、口内炎や皮膚症状(約10%に丘疹性紅斑や滲出性紅斑などの皮疹)が重なるといよいよ菊池病の診断が難しくなります。
このような多彩な症状は小児・学童に起こりやすく、親も心配されるため、結局小児科専門病院に紹介することになります。
症状が多彩なわりに特徴的な所見や検査結果がないこと、これが菊池病の特徴かもしれません。
HPV-B19感染症は、小児ではリンゴホッペから、大人(とくに小児や学童の母親)では関節炎と四肢のレース状紅斑から、容易に疑うことができます。
しかし、学童や中・高校生では、発熱だけが続いて、紅斑や関節炎が乏しいことがあります。血液検査からIgM抗体が上昇して、始めて本症と気がつくことがあります。
水痘は、水疱の真ん中付近にくぼみのある小さな黒い点を見つけると、数少ない水疱であっても初期に診断は可能です(写真2)。
しかし、このような特徴的な水疱ばかりではなく、初期には紅斑性丘疹だけで診断に困る場合も少なくありません。親に水痘の可能性を説明して、1~2日後にもう一度来てもらい、広がり具合などを確かめるようにします。
マイコプラズマ感染症は呼吸器症状の他に、多彩な症状があることが知られています。
その中で皮膚症状は、紅斑丘疹や水疱性発疹からSJSまで幅広いと言われています。SJSの16%がマイコプラズマ感染を伴っていたとも報告されています。
レイノー現象も、マイコプラズマ感染症で認められることがあります。これはおそらく寒冷凝集素の形成に関連して起こる現象と思われます。
梅毒に伴うバラ疹は忘れてはいけない紅斑性皮疹です。
バラ疹ができやすい場所は、主に腕、足、背、胴、顔ですが、通常発疹ができにくい、手掌や足の裏にもできることもあります。比較的コモンなジベルばら色粃糠疹との鑑別に有用です。
忘れてはいけない原因 |
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IgA血管炎は3~10歳の子どもに多く、やや男児に多い傾向があります。高齢者でもみられることがあり、注意が必要です。
当院での女児経験例では、腹痛から発症し始めはウィルス性胃腸炎や急性虫垂炎を疑っていたところ、続いて歩行が困難なほどの下肢の関節痛が起こり、やがて下腿部に紫斑が出現して、この時点で始めてIgA血管炎と診断できました。その間、4~5日の経過でした。
その後しばらくして、男子高校生で同じ経過をとりながら、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症EGPAと診断された例を経験しました。
多彩な症状で有名な血管炎ですが、このような経過は小血管を中心とした血管炎に気がつくポイントの一つと考えています。
皮膚筋炎は忘れかけた頃にやって来る、たいへん重要な病気です。
ヘリオトロープ疹は有名ですが、顔全体の浮腫状紅斑のこともあり、何かのアレルギー疹に間違えてしまいます。
ゴットロン徴候(手の指の関節の手の甲の方で紫紅色の皮疹)、V徴候(頸の前の方から胸までの赤い発疹(紅斑)、ショール徴候(肩から背中にかけてショールの形をして赤い発疹(紅斑)、Mechanic’s handなどに注意します。
結節性紅斑は皮下脂肪織炎で、下腿前面(伸側)の圧痛を伴う紅斑性皮疹が多発します(写真3)。
特発性が多く、ついで溶連菌感染症が主な原因です。さらに気道感染症、消化管感染症、結核、薬剤、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、ベーチェット病、悪性腫瘍 などが原因でないかスクリーニングします。
皮膚T細胞リンパ腫(下腿全周性の無痛性紅斑)と間違えないように注意します。
内科で診察する機会の多いやや大きくなった小児の川崎病では、発熱と頸部リンパ節腫大が病初期から起こる強い印象があります。この場合、菊池病(壊死性リンパ節炎)との鑑別が問題になります。
乳幼児期の川崎病では、他の皮膚症状に比べて頸部リンパ節腫大はあまり重要視されないようですが、やや成長した小児ではかなり大きく腫れることが多く特徴的な所見の一つと思います。
成人スティル病での発熱は「弛張熱」と呼ばれるタイプを取ることが多く、夕方から早朝にかけて39度以上の発熱を認めますが、日中は解熱します。こうした発熱と同時に、「サーモンピンク疹」と呼ばれる紅斑性皮疹を体幹や四肢に認めます。
成人スティル病で見られる関節症状は、手首や肘、肩、膝などの大関節に多発性に認めます。血液検査ではフェリチンの異常高値を認めるのが特徴です。
風疹や麻疹は、開院当時(20数年前)は珍しくありませんでした。しかし、十数年前からは全くみなくなりました。
風疹の皮疹は溶連菌やHPV-B19感染症の小紅斑に似ていますが、耳介後部のリンパ節が腫大する特徴があります。
麻疹は発疹が出る前の高熱時から消耗感(重篤感)が強く、結膜充血や眼脂、コプリック斑が特徴的で、皮疹も一度経験すると忘れることはないでしょう。
家族性地中海熱でも丹毒様紅斑と表現される浮腫性紅斑が出ることがあります(7~40%)。
ダニ媒介および蚊媒介感染症も最近は耳にする機会が増えてきました。
実際に当院でも、ダニ媒介のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)や回帰熱(確定診断には至りませんでしたが)の疑い症例を経験しました。また、インド出張で感染した日本人のデング熱を経験しました。
代表的なダニ媒介、蚊媒介感染症は次の通りです。
ダニ媒介感染症: | ツツガムシ病、日本紅斑熱、SFTS、回帰熱、ライム病、Q熱 など |
蚊媒介感染症: | デング熱、チクングニア熱、ジカ熱、日本脳炎、マラリア など |
カンピロバクター腸炎の潜伏期は1~7日(平均3日)と長いのが特徴で、下痢や発熱から発症します。ただし、発熱が消化器症状に先行する場合や、局所症状に乏しい場合があるため、インフルエンザなどと鑑別が必要となる場合があります。あらかじめ問診で鶏肉摂取(とくに鳥刺しや生レバ、ユッケなど)を確認する必要があります。
非定型肺炎では咳嗽が主症状になりますが、頭痛や消化器症状などの肺外症状で発症することがあります(下表)。
非定型肺炎の臨床症状 | ||||
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C.pneumoniae | L.pneumoniae | M.pneumoniae | C.psittaci | |
咳嗽 | 90.2% | 68.8% | 100% | 78% |
呼吸困難 | 43.9% | 45.8% | 21.7% | 24% |
頭痛 | 17.1% | 29.2% | 34.7% | 87% |
悪心もしくは嘔吐 | 2.4% | 10.4% | 2.1% | 49% |
下痢 | 9.8% | 25% | 2.1% | 20% |
「発熱の4日ルール」に従って胸部X線を撮影することが、肺炎を見落とさないために大切です。
レジオネラ肺炎では初期には発熱と頭痛が先行し、3~4日遅れて胸部X線で肺炎像が見られるようになります。病初期には注意が必要です。
10~20歳台の発熱+頸部リンパ節腫脹=伝染性単核症または菊池病を疑う
伝染性単核症では、発熱94.6%、頚部リンパ節腫大89.3%の他、咽頭・扁桃炎73.6%、肝機能障害82.1%、脾腫62.5%、発疹31.4%、眼瞼浮腫30.4%、口蓋出血斑12.5%などが見られます。
発疹は主に体幹、上肢に出現し、斑状、丘疹状の麻疹様あるいは風疹様紅斑で、その形態は多彩です。アンピシリン(ABPC)を 内服すると薬疹を生じて、鮮明な浸出性紅斑様皮疹や丘疹などを呈します。眼瞼浮腫と発熱が同時にあれば、伝染性単核症を疑うことも重要です。
若者や学童の伝染性単核症ではEBV感染を疑いますが、中年患者ではCMV(サイトメガロウィルス)感染を考えます。HIV感染は成人では常に考慮します。
菊池病(壊死性リンパ節炎)は良性の炎症性リンパ節疾患で、40歳以下(平均21歳)の女性に多く、有痛性頸部リンパ節腫脹(56~98%)と発熱(30~50%)が主症状です。丘疹性紅斑や滲出性紅斑などの皮疹(約10%)、白血球数低下(約50%)、LDHやCRPの上昇を認めることがありますが、異型リンパ球や肝機能障害はありません。
1~4ヶ月の経過で自然軽快しますが、3~10%で再燃が認められる他、約3%で全身性エリテマトーデスに移行することがあります。鑑別には、伝染性単核症の他、全身性エリテマトーデス、結核性リンパ節炎、悪性リンパ腫などが挙げられます。
学童で頸部リンパ節腫脹が軽度で発熱だけが続くと、菊池病の診断が困難なことがあります。症状に特徴がなく、発熱だけが続くときは菊池病も念頭に置きながら、特に頸部リンパ節の腫れがないか注意します。
川崎病は4歳以下、とくに1歳前後の子どもに多く起こります。高熱はすべての患者にみられる症状で、眼瞼結膜の充血や唇・舌の症状(乾燥や充血、イチゴ舌)、発疹、手足の症状(手足が赤く腫れ、指先の皮がむける)は約90%の患者に現れます。
これらの症状は溶連菌感染症に類似しますが、溶連菌感染症はもう少し年長になって、保育所などに通園するようになってから感染します。
首のリンパ節の腫れは約70%にみられます。やや年長になって発症する川崎病では、高熱と比較的大きなリンパ節腫脹(ときに500円硬貨くらい)が先行することがあり、川崎病診断の手がかりになることがあります。
亜急性甲状腺炎は上気道炎を前駆症状として破壊性甲状腺炎を起こす疾患で、甲状腺の有痛性腫瘤と甲状腺機能亢進症を生じます。腫瘤は外からも分かり、圧痛が著明で診断は比較的容易です。甲状腺エコーでは、圧痛部位に一致して返縁不整の低エコー域を認めます。
痛みは数日から数週後に反対側に移動することがあります(クリーピング現象)。また、甲状腺の痛みは喉の痛みと表現される場合があり、嚥下により甲状腺は上下方向に移動するため嚥下痛を起こします。
発熱と疼痛に対してはNSAIDSを投与しますが、症状が強いときには経口ステロイドを考慮します。甲状腺機能は徐々に正常化しますが、約15%では甲状腺機能低下症が起こると言われます。
高安病は大動脈とその分枝における血管炎で、アジア人の若年女性に好発します。病初期には発熱や血管痛などの炎症症状を起こすことが多いですが、病初期には手がかりが乏しいことがあります。
頸動脈に炎症を来した場合に、頸部痛を起こすことがあります。頸部の触診を丁寧に行い、頸動脈に沿って圧痛を認めることが参考になります。腰背部痛があり、腹部大動脈に沿った圧痛がある場合は同部の血管炎を疑います。
若年女性の不明熱では、血管痛を示唆する病歴や身体所見を見逃さないように注意します。
解離性大動脈瘤は一般には重度の胸背部痛や大動脈分枝の虚血症状を起こしますが、6.4%は胸背部痛を訴えないと言われます。
また、大動脈解離は発熱の原因にもなります。保存的加療の場合の発熱期間は15.9±11日と報告されています。
高齢者に急性発症した頸部~肩痛、微熱では解離性大動脈瘤(Stanford A型)も忘れないようにします。当院でも同じような経験がありますが、ときにリウマチ性多発筋痛症や環軸関節偽痛風などと間違えないようにします。
巨細胞性血管炎GCAは50歳以降の高齢者に発症し、代表的な症状は頭痛、顎跛行、視力低下ですが、歯痛、咽頭痛など歯科、耳鼻咽喉科領域の症状を認めます。しばしばリウマチ性筋痛症を伴うとされます。
高齢者の新規発症の頭痛に加えて、発熱を伴う歯科・耳鼻科症状の鑑別に巨細胞性血管炎を鑑別に入れます。
リウマチ性多発筋痛症PMRは、平均70歳前後の高齢者に起こり、80歳代もまれではありません。発熱や頸部、肩、腰、大腿など四肢近位部(近位筋)の疼痛を主訴とする原因不明の炎症性疾患です。筋肉痛のため、起き上がるのが困難になります。
PMRの発熱は、微熱(37℃台)であり、高熱(38℃以上)はまずありません。まず始めに整形外科を受診することが多く、診断がつかずに患者が諦めかかって相談を受けて始めて分かることがあります。診断までの経過が長くなると、発熱は明らかでなくなります。
見つけるポイントは、起き上がるのが困難なほどの筋肉痛と両上肢の挙上(バンザイをしてもらいます)がスムーズにできないことです。ふつう、赤沈値の亢進、CRP値などの炎症反応の上昇を認めますが、経過が長くなるとCRP上昇はごく軽度のことがあります。本症を疑ったとき、少量のプレドニンを投与して、症状が改善するかどうかを調べます。
リウマチ性多発筋痛症はしばしば遭遇するコモンな疾患です。本症を疑ったときには、巨細胞性動脈炎、骨髄腫、傍腫瘍症候群、環軸関節偽痛風、副腎機能不全、多発性筋炎などが隠れていないか注意します。
環軸関節偽痛風CDSは環軸歯突起周囲にある靱帯の石灰化に関連する、結晶誘発性関節炎(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症)の一つで、高齢者に急性発症する頸部から上肢帯にかけて疼痛を起こします。後頸部痛(100%)、頸部のこわばり(98%)、発熱(80.4%)が一般的な症状です。
本症を見つけるポイントは、高齢者(70歳以上)の急な頸部の回旋時の痛み、すなわち「朝起床時から急に起こる寝ちがい」であると考えています。
「寝ちがい」様の痛みは、石灰沈着性頸長筋腱炎でも起こりますが、決定的な違いは年齢です。石灰沈着性頸長筋腱炎は30~50歳代に好発し、頸部の回旋運動だけでなく、屈曲、伸展、側屈すべての動きで疼痛が誘発されます。本症では発熱はありません。
周期性発熱症候群としては、代表的な家族性地中海熱とPFAPA症候群を考えます。
家族性地中海熱は急性の発熱と身動きできないほどの激しい漿膜炎(多くは腹膜炎、心膜炎や胸膜炎もあります)の発作を長年にわたって繰り返す常染色体劣性遺伝の自己炎症性疾患です。
発作は2~3日で自然観開始、間欠期は無症状で、月経やストレスが誘因となります。発熱間隔は4週間ごとが多いです。
発症年齢は10歳以下が65%、20歳以下まで含めると90%となりますが、大人の発症例もあります。まれな疾患で診断に至るまで長い年月を要してしまいがちで、大人になってから始めて診断されることもあります。
耐えがたい腹痛や胸痛の問題だけでなく、治療が遅れるとAAアミロイドーシスを発症し、これによる腎不全が主要な死因になります。7~40%に浮腫性紅斑が認められ、丹毒様紅斑とも呼ばれます。
3日以内に軽快する38℃以上の発熱を3回以上繰り返す病歴、発作時の重症度および炎症反応、コルヒチンに帯する良好な反応性などから診断されます。
PFAPA症候群は一般に2~5歳で発症する小児の疾患ですが、成人発症(25.9±8.3歳)の報告もあります。Clockwork periodicityと表現される規則的な周期熱(発熱の間隔は平均24日:3~8週)に、アフタ性口内炎、咽頭炎、頸部リンパ節炎を伴います。
診断のための特異マーカーはなく、
の5項目からなる診断基準により臨床的に判断します。
診断的治療として、発熱時のプレドニン(1~2mg/kg)の内服後数時間内に著効することが、家族性地中海熱との鑑別点になります。
家族性地中海熱は漿膜炎が中核症状ですが、PFAPF症候群は口腔咽頭症状が中心になります。
成人スティル病では、1日に1、2回ほど39度以上の高熱が出ます。夕方から明け方にかけて発熱することが多く、発熱した際に皮疹や咽頭痛、関節痛が起こることがあります。
皮疹はサーモンピンク疹と呼ばれ、ピンク色の皮疹が腹部や背部、大腿部などにできますが、発熱したときに悪くなり、熱が下がると消失します。
関節痛や関節の腫大は、手首・肘・肩・膝・足などの大関節を中心に起こり、関節症状も発熱したときに悪くなります。血液検査ではフェリチンが著しく高くなり、80%以上の好中球増加を伴う白血球増加(10000/ml以上)を認めます。
一日の中で高熱が上下する疾患(弛張熱)は成人スティル病の他、敗血症、膿瘍、膠原病 などが挙げられます。
回帰熱はシラミまたはダニによって媒介されるスピロヘータの一種ボレリアを病原体とします。菌血症による発熱期、菌血症を起こしていない無熱期を3~5回程度繰り返す、いわゆる回帰熱を特徴とします。
感染後5~10日を経て菌血症による頭痛、筋肉痛、関節痛、羞明、咳などをともなう発熱、悪寒がみられます(発熱期)。発熱期は3~7日続いた後、いったん解熱します(無熱期)。
無熱期では血中から菌は検出されませんが、発汗、全身倦怠感、時に低血圧や斑状丘疹をみることもあります。この後5~7日後再び発熱期に入ります。
もう少し短い周期で発熱を繰り返すのはマラリアです(三日熱・四日熱マラリア ほか)。これらは、海外旅行で感染する場合が多く、旅行先を確認する必要があります。
診療所の診察でできる強みの一つは、簡単にベッドサイドで超音波検査ができることです。Point of care ultrasound(POCUS)と呼ばれる短時間で終える超音波の検査方法は、今や当院では診療の上で不可欠なものとなっています。
この検査方法のメリットの一つは、患者の主訴から的を絞って重点的に検査ができることです。第二のメリットは、スクリーニングの目的で検査を行うと、驚くような意外な所見が得られることが少なからずあることです。
とくに、腹部症状を主訴とする患者には、超音波検査は力を発揮します。腹部膨満感を訴える高齢者では悪性リンパ腫も想定しながら、腹部大動脈周囲のリンパ節腫大に注意する ことも、当院で得られた経験の一つです。
下腹部痛を訴える女性では、高率に卵巣や子宮の変化(腫瘍や嚢胞、機能的変化など)や腹水貯留(ときに腹腔内出血)を見つけ、原因を特定することができます。
腹部CTには劣りますが、腸管の異常を見つけることもできます。原因不明の発熱に関係して、腹部超音波で肝膿瘍が見つかることがあります。また、心臓超音波は感染性心内膜炎の発見に極めて有用です。
結核性髄膜炎は急性~慢性などさまざまな経過を取り、頭痛がなく意識変容、意欲低下、認知機能低下のみを主訴とする場合があります。24%で項部強直陰性と報告されており、jolt accentuationも明らかでないことがあります。
髄液からの結核菌の証明が困難なことが多く、胸部X線・CT、頭部造影MRI、髄液検査、ADA、結核菌PCR、IGRA(T-spot、QFT)などを参考に診断します。持続する発熱と頭痛では、ウィルス性髄膜炎や結核性髄膜炎を疑い、腰椎穿刺を考慮します。
粟粒結核は高齢者やHIV感染など免疫低下患者で発症しやすいが、健常人でも発症することがあり、亜急性に増悪する不明熱患者では積極的に疑うことが重要です。
胸部X線や胸部CTを注意深く観察することが大切ですが、粟粒結核では結核菌が血行またはリンパ行性に全身に広がり、多臓器に結核病変を形成します。
結核の1~2%を占め、血流が豊富なリンパ組織、肝臓、脾臓、骨髄、中枢神経、副腎に播種する頻度が高く、剖検例では眼病変を50%に、前立腺病変を7%に認めた報告があります。
粟粒結核における喀痰の塗抹・培養検査の感度はいずれも約40%と低いため、注意が必要です。IGRAの活動性結核全体に対する感度は90%ですが、粟粒結核では79%にとどまるため、陰性でも除外することはできません。
罹患患者のうち、compromised hostは半数以下で、健常者も発症することや、胸部X線では初期の粟粒結核をとらえにくいことに注意します。
感染性心内膜炎では、心雑音は初期には約50~80%の患者で、最終的には90%を超える患者で聴取されます。したがって、発熱患者では常に心雑音に注意します。心臓超音波で弁尖に疣贅を認めると診断は確定しますが、初期には認めにくいこともあります。
感染性心内膜炎の大半は左心系(僧帽弁または大動脈弁)に生じます。右心系(三尖弁または肺動脈弁)は約10~20%ですが、静注薬物乱用者では,右心系心内膜炎の発生率が非常に高いです(約30~70%)。
塞栓症は約20~50%で認められます。塞栓症状は多彩で、爪下出血8%、Janeway斑5%、眼球結膜出血5%、Osler結節3%と報告されています。約35%の患者では中枢神経系への影響がみられ、一過性脳虚血発作、脳卒中、中毒性脳症のほか、中枢神経系の感染性動脈瘤が起こります。
腎塞栓が生じると、側腹部痛やまれに肉眼的血尿がみられます。脾塞栓では左上腹部痛が生じることがあります。鑑別はコレステロール結晶塞栓症で、足趾先端に無痛性の紫斑を認めることがあります(blue toe syndrome)。
感染性心内膜炎が疑われる場合は,24時間以内に3回の血液培養(各20mL)を異なる静脈で行うべきで、ほとんどの患者が持続的な菌血症を呈するため、悪寒または発熱の発生中に血液培養を行う必要はない とされます。
感染性大動脈瘤は大動脈壁が感染により、破綻して拡張した状態であり、動脈硬化、感染性心内膜炎、免疫低下(糖尿病、アルコール多飲など)がリスクになります。死亡率は内科治療のみでは90%で、死因の大半は動脈瘤破裂です。
高安動脈炎は若年女性に好発する大血管炎で、病初期には発熱や血管痛などの炎症症状を示すことが多くありますが、手がかりに乏しいこともあります。
しかし、血管狭窄や動脈瘤などの不可逆的変化を未然に防ぐためには早期診断が重要です。若年女性の不明熱症例では、血管痛を示唆する病歴や身体所見を見逃さないようにします。
頸動脈に炎症を来した場合、頸部痛を示し両側の頸動脈に沿って圧痛を認めます。進行して血管の狭窄を起こすと、上肢の跛行(しびれ)、脈拍や血圧の左右差(鎖骨下動脈)、めまい、失神(総頸動脈、椎骨動脈)などを認めます。
腰背部痛は血管性病変を示唆する病歴としてピットフォールになりやすいですが、高安動脈炎の診断基準においても臨床症状の一つに挙げられています。腹部触診で腹部大動脈に沿って圧痛がないか注意します。
高安動脈炎や巨細胞性動脈炎では、まれに頑固な咳嗽を起こすことがあります。機序は明らかではありませんが、血管壁に接した咳反射球心路(迷走神経)への炎症の波及と考えられ、病変部位としては肺動脈、上行咽頭動脈、迷走神経心臓枝に接する大動脈弓部とその分枝血管起始部の炎症 などが挙げられます。
本症はとくにアジア人に多く、大半は若年女性に発症しますが、高齢発症例も存在します(約1%)。発熱、全身倦怠感、食欲不振など非特異的全身症状から発症し、失神、めまい、上肢のしびれ、血圧の左右差を起こすようになります。
身近なところに発熱の原因が潜んでいることがあります。
うつ熱は高温環境や激しい運動により放散以上に体熱が産生され、その結果高体温を来す状態です。高温・多湿・無風という環境下では、放熱機構の効率が悪化しうつ熱を招きやすく、高齢者では体温調節機能が低下するとともに、行動性体温調節(意識的に環境を整える)能力も低下するために、体温異常を来しやすいといわれます。
高齢者の熱中症の機序として、①発症日の暑さ指数28℃以上、②自宅環境での発症が多い、③多くが自宅に空調設備がないか、あっても適切に使用していない などが挙げられています。抗コリン薬などの薬剤がが、うつ熱の原因になることがあります。
薬剤熱は投与開始から数日~3週で発熱することが多いですが、数年間の内服で発症する症例もあります。薬剤を使用している限り、熱源として可能性を除外することはできません。
入院患者の発熱の原因の1割を占めると言われ、紅斑、蕁麻疹、粘膜潰瘍、臓器障害、好酸球増多などを伴うことがあります。
比較的徐脈は薬剤熱の1割の患者で見られますが、レジオネラ肺炎、クラミジア肺炎、オウム病、腸チフス、悪性リンパ腫、β-ブロッカー服用、詐病 などを鑑別します。
*比較的徐脈とは・・・1℃の体温上昇に対して、脈拍増加が10を下回る病態。正常では39℃の発熱で110/分くらいです(覚え方は、「39℃で110番」)。
悪性リンパ腫では、原因不明の発熱や体重減少、寝具の取り替えを要するほどのひどい寝汗(盗汗)がみられることがあり、これら3つの症状はB症状とも呼ばれます。その他、全身倦怠感、貧血を認めることがあります。
リンパ節腫脹は初期症状として見られることが多く、頸部や腋窩、鼠径部などリンパ節の多いところに、通常痛みのないリンパ節腫脹として現れます。
しかしこのようなリンパ節腫脹が体表面で明らかでない場合は診断が難しく、画像診断で偶発的な胸腔や腹腔内リンパ節腫脹で発見されることもあります。悪性リンパ腫が前縦隔腫瘍や涙腺腫瘍、扁桃腫大として発見されることがあります。
高齢者の白苔を伴う扁桃炎では、細胞性免疫の低下を疑い、リンパ腫も鑑別に挙げます。皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫では、無痛性の下肢結節性紅斑として現れます。ホジキンリンパ腫では約3割に、夜間に増悪する掻痒症を認めることがあります。
リンパ腫の末梢神経、神経根あるいは神経叢への直接浸潤は neurolymphomatosis と呼ばれ、有痛性多発性神経障害および多発神経根障害、馬尾障害を呈することがあります。血管内リンパ腫では通常リンパ節腫脹は認められず、血管内に増殖した腫瘍細胞がさまざまな臓器に浸潤します。
血液検査で原因の明らかでないLDH上昇やフェリチン上昇を認めた場合には、悪性リンパ腫も鑑別の一つに挙げます。また、腹部膨満感を訴える患者では、腹部超音波で腹部大動脈周囲のリンパ節腫大の有無にも注意します。
老人の原因不明の発熱ではまず、悪性リンパ腫を疑います。次いで血液検査で炎症反応があり、関節痛が認められた場合には血管炎と膠原病を疑います。
血管炎と膠原病は全身症状を起こすことで知られますが、初期には必ずしも全身症状を起こすわけではないことに注意します。膠原病は特徴的な症状を有することと、血液検査で自己抗体を認めることから、膠原病を疑うことさえできれば、診断に困ることは比較的少ないと思います。
血管炎は膠原病よりも進行が早く、病初期から全身症状を起こしやすい印象があります。当院でも川崎病、IgA血管炎、高安動脈炎、バージャー病、EGPA、MPA、GCA(疑い)の経験があり、珍しい疾患とはいえ遭遇する機会はゼロではありません。
血管炎を見つけるポイントはいくつかあると思いますが、特徴の一つは発症年齢と思います(下図)。
*EGPA:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、GPA:多発血管炎性肉芽腫症、PN:結節性多発血管炎、GCA:巨細胞性血管炎、MPA:顕微鏡的多発血管炎
乳幼児期は川崎病、幼児期から学童期はIgA血管炎を考えますが、高齢発症の例もあります(約10%)。高安動脈炎は20歳前後の若い女性、バージャー病は50歳までの喫煙男性です。閉塞性動脈硬化症ASOと鑑別が問題になりますが、ASOは高齢発症であり、バージャー病とは年齢層が異なります。MPAは70歳以降の高齢発症である特徴があります。
血管炎に共通する全身症状は発熱や体重減少などですが、一方ではそれぞれの疾患に特徴的な局所症状があります。それらをまとめてみました。
血管炎の特徴 | |
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1.川崎病 | 高熱、目の充血、イチゴ舌、手足のテカテカ・パンパンなどは年長児の溶連菌感染症に類似、やや年長児になると早期から大きな頚部リンパ節の腫大 |
2.IgA血管炎 | 激しい腹痛から始まり、下肢の関節痛で歩くのも困難、次いで下肢の浸潤を触れる紅斑 |
3.バージャー病 | 50歳以下の喫煙男性、多臓器障害を伴わない点が、他の血管炎と異なる、四肢末梢の動脈性循環不全(レイノー現象など) |
4.EGPA | 気管支喘息、アレルギー性鼻炎が先行し、著明な好酸球増多、血沈亢進、血小板増加、IgE高値、MPO-ANCA陽性 |
5.GPA | 発熱や体重減少、上気道から下気道症状および腎障害、PR3-ANCA陽性 |
6.PN | 発熱や体重減少などの全身症状と腎不全、多発単神経炎、筋痛、皮膚病変、消化器症状など、まれながら指趾壊疽 |
7.GCA | 発熱(50%が微熱、15%が高熱)や体重減少、新規発症頭痛、顎跛行、視力低下、側頭動脈の怒張・圧痛・拍動消失、PMR合併(約50%) |
8.MPA | 全身症状とともに尿潜血・蛋白の増加、血清Cr上昇し腎不全へ、皮疹(約60%:紫斑、網状皮斑など)、多発性単神経炎(約60%)、関節痛(約50%)、MPO-ANCA陽性 |
*PMR:リウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症PMRは内科外来で稀ならずみられます。患者の主訴の特徴は、四肢近位部の筋肉痛や関節痛のため、起き上がる、寝返りをうつなどの日常動作が困難になる点です。両上肢を上げてもらうと、辛そうにして不十分にしか上げることができません。
PMR様の症状をみたときは、GCAや多発性骨髄腫、その他の疾患に伴ってPMR様症状が起こることがあり、これらを鑑別する必要があります。
高齢者で両上肢を挙げることが困難な時に、鑑別すべき内科疾患 |
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左右どちらか一方しか上げることができないときは、まず肩周囲炎や腱板断裂など整形外科の疾患を疑います。両側で上肢を挙げることが困難な時は、これらの疾患を鑑別します。
炎症性腸疾患は重症になるにつれて、発熱もみられるようになります。頻繁に粘血便が出ていることで貧血や脱水が生じ、その結果として顔面蒼白、動悸やふらつきが現れたりします。また食欲不振や体重減少などを伴うことがあります。
腸管外合併症は全身のさまざまな部位に出現し、免疫や栄養状態、腸管病変などが関与していると考えられています。
潰瘍性大腸炎は発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。
腸管外合併症の主なものとして、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、眼病変(ブドウ膜炎など)、口内炎、血清反応陰性脊椎関節症、骨粗鬆症、尿路結石症(腎結石)、肝臓や胆嚢・胆管、膵臓の病変などが知られています。
クローン病ほとんどが若年発症(10代後半~20代前半)ですが、60歳以降での発症例も約3%存在します。家族歴を有する場合には、発症リスクが10倍となります。
腸管以外の諸臓器(関節・骨、脊椎、皮膚・粘膜、眼、肝胆膵、血管など)に多彩な病変を合併します。眼症状では、ぶどう膜炎、虹彩炎、強膜炎のほか、稀に肉芽腫性炎症による涙腺腫瘍を合併することがあります。
炎症性腸疾患では、血清反応陰性脊椎関節症および眼病変(ぶどう膜炎、虹彩炎、強膜炎)、結節性紅斑など、腸外病変を合併することがあります。