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結節性紅斑

結節性紅斑は内科疾患とも関係の深い重要な皮膚所見です。

(写真1)結節性紅斑
写真1結節性紅斑

(写真2)結節性紅斑
写真2結節性紅斑

point下腿伸側の硬結と著明な圧痛を伴う紅斑は結節性紅斑の特徴です。結節性紅斑にプラスαの症候を認めるときは基礎疾患、特にベーチェット病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患などに注意します。

結節性紅斑は成人女性に好発する皮下の脂肪織炎であり、1~10cm大の圧痛を伴う結節状の紅斑が、下腿伸側を中心とした四肢に対称性に認められます。
下腿伸側以外にも、大腿下部や前腕など、脂肪組織のあるいずれの部位にも生じます。随伴症状として発熱、全身倦怠感、関節痛などがみられます。
鑑別として多型性浸出性紅斑がありますが、通常痛みがなく、2cm以内で中心部に陥凹を伴う紅斑(標的病変)が特徴です。

原因は特発性が最も多いですが、溶連菌、結核、薬剤、炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシスなどによる二次性に注意します。その他、気道感染症、消化管感染症、悪性腫瘍など様々な報告があります。
治療はNSAIDによる対症療法ですが、痛みが強い場合にはヨウ化カリウムやステロイドを使用することもあります。ふつうは8週間以内に自然治癒します。

関節痛・結節性紅斑・肺門部リンパ節腫脹を伴うサルコイドーシスはレフグレン症候群と呼ばれます。非常にまれな型ですが、1~2ヶ月で自然軽快することが多く、予後良好です。

血管炎で類似の皮疹を認めるため、びらんを伴う皮疹、下腿病変がない8週以上持続などがあれば、皮膚生検を考慮すべきです。
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)では浸潤を触れる紫斑が両下腿を中心としてみられます。HSPは皮膚小血管性血管炎の1つで、消化器症状で発症し、次いで関節痛、皮膚症状、腎障害が続きます。
皮膚症状としては、両下腿や足背を中心に浸潤を触れる紫斑を呈しますが、大腿や体幹、上肢にも認めることがあります。血管壁の炎症による紫斑であり、浸潤を触れることがこの病態の特徴と言えます。

結節性紅斑と同じく皮下脂肪織の疾患ですが、圧痛がないときの鑑別として皮下脂脂肪織炎様T細胞リンパ腫を考えます。
皮下脂脂肪織炎様T細胞リンパ腫は、皮下脂肪織を主たる浸潤組織とするまれな皮膚リンパ腫です。全身性・無痛性の多発皮膚硬結で発症しますが、通常は下肢優位であり、硬結は下腿の全周性にみられる特徴があります。
病勢が強い部位では紅斑を伴うことがあります。多くの症例で発熱などのB症状を伴い、sIL-2Rの上昇がみられます。

菌状息肉症は皮膚T細胞リンパ腫の一種で、年単位で病気が進行する「低悪性度」に分類されます。主に成人および高齢者に発症しますが、小児や若年者にみられることもあります。
湿疹やアトピーとも間違われやすい皮膚の症状から発症し、数年から数十年という単位で徐々に紅斑期→局面期→腫瘍期と進行する病気です。初期段階で発見できた場合の10年生存率は95〜100%と報告されており、早い段階で診断し治療介入することがとても重要な病気です。

皮下結節性脂肪壊死症は膵疾患に伴う皮膚病変で、一見すると結節性紅斑に類似します。本症は膵癌などの膵疾患の約0.3%に合併するまれな疾患です。
皮膚所見は下腿前脛骨部に好発し、四肢の関節炎を多く合併します。膵腫瘍だけでなく急性および慢性膵炎、膵嚢胞性病変やERCP後の合併症としても報告されています。
機序は不明な点も多いのですが、膵疾患に伴い逸脱した各種膵酵素が血行性やリンパ行性に皮下や関節に到達します。活性化した膵酵素がその周囲の脂肪細胞膜を破壊し、細胞内の脂肪壊死を引き起こすことが示唆されています。

結節性紅斑
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