感覚障害と運動障害がみられますが、いずれも局在がはっきりしていることが最大の特徴です。
● 感覚障害の症状はしびれと疼痛ですが、脊髄実質や脳幹障害でみられる解離性感覚障害(触覚と温痛覚の解離)は起こりません。
● 運動障害の症状は筋力低下ですが、特徴的な運動麻痺には下垂足、下垂手、鷲手、猿手などがあります(多発性単神経炎)。
感覚性運動失調(Romberg徴候陽性、開脚・ふらつき歩行)などの深部感覚障害や自律神経障害(無汗症や発汗過多、体温調節障害、嘔吐・便秘ならびに下痢などの消化管障害、起立性調節障害など)は神経根や脊髄実質病変では起こることがありますが、純粋な末梢性ニューロパチーでは目立ちません。
実臨床でしばしばみられる末梢性ニューロパチーとして絞扼性ニューロパチーがありますが、多くの種類と特徴があるため、詳しくは別に詳しく述べることにします。
末梢性ニューロパチーには次の種類があります。
| 種類(疾患名) | 特徴 |
|---|---|
| ■血管炎に伴うニューロパチー | 表2へ |
| 代表は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症EGPA | |
| ■免疫介在性ニューロパチー | 表3へ |
| 1.Guillain-Barre症候群(GBS)、Fisher症候群 | |
| 2.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP) | |
| 3.多巣性運動ニューロパチー(MMN) | |
| 4.IgMパラプロテイン血症を伴うニューロパチー | |
| ■代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー | 表4へ |
| 1.ビタミンB1欠乏性ニューロパチー(dry beriberi) | |
| 2.葉酸欠乏性ニューロパチー | |
| 3.アルコール性ニューロパチー | |
| 4.尿毒症性ニューロパチー | |
| 5.化学療法によるニューロパチー | |
| ■糖尿病性末梢神経障害DPN | 表5へ |
| ■遺伝性ニューロパチー | 表6へ |
| 1.Charcot-Marie-Tooth病CMT(=HMSN) | |
| 2.遺伝性運動性ニューロパチー(HMN) | |
| 3.遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN) | |
| ■家族性アミロイドポリニューロパチー (遺伝性トランスサイレチンTTR型アミロイドーシスATTR) |
表7へ |
| ■傍腫瘍性ニューロパチー | 表8へ |
| 1.亜急性感覚性ニューロパチー | |
| 2.感覚運動性ニューロパチー | |
| 3.自律神経性ニューロパチー | |
| ■膠原病性ニューロパチー | 表9へ |
| 代表はシェーグレン症候群 |
それぞれの疾患の特徴は、表2から表9にまとめました。クリックすると参照できます。
| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 血管炎に伴うニューロパチー |
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| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 免疫介在性ニューロパチー | ❶ Guillain-Barre症候群(GBS)
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❷ 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
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|
❸ 多巣性運動ニューロパチー(MMN)
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❹ IgMパラプロテイン血症を伴うニューロパチー
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| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー | ❶ ビタミンB1欠乏性ニューロパチー(dry beriberi)
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❷ 葉酸欠乏性ニューロパチー
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|
❸ アルコール性ニューロパチー
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|
| ❹ 尿毒症性ニューロパチー | |
| ❺ 化学療法によるニューロパチー |
| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 糖尿病性末梢神経障害DPN |
|
| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 遺伝性ニューロパチー | 症状により遺伝性運動感覚性ニューロパチーHMSN(CMT)、遺伝性運動性ニューロパチー(HMN)ならびに遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)に大別。 HMSNは、Charcot-Marie-Tooth病CMTの名前で知られる。 遺伝性ニューロパチーの発症年齢は必ずしも小児期ではない。 |
❶ Charcot-Marie-Tooth病CMT(=HMSN)
|
|
❷ 遺伝性運動性ニューロパチー(HMN)
|
|
❸ 遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(HSAN)
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| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 家族性アミロイドポリニューロパチー (遺伝性トランスサイレチンTTR型アミロイドーシスATTR) |
|
| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 傍腫瘍性ニューロパチー | 腫瘍に発現する抗原とヒト神経系の構成成分との分枝相同性による自己免疫性機序によって発症する神経症候群。 中枢・末梢神経系のいずれにも生じるが、返縁系脳炎、小脳変性症とともに亜急性感覚性ニューロパチーの頻度が高く、全体の30%を占める。 60%以上に神経症状出現時に腫瘍そのものは発見されておらず、神経症状出現後数ヶ月から2年程度の間に腫瘍の存在が明らかになることが多い。 |
❶ 亜急性感覚性ニューロパチー
|
|
| ❷ 感覚運動性ニューロパチー | |
| ❸ 自律神経性ニューロパチー |
| 種類 (疾患名) |
特徴 |
|---|---|
| 膠原病性ニューロパチー | シェーグレン症候群では、血管炎による急性のものと、慢性の経過をたどり、感覚神経だけが左右対称に遠位部から侵されてくる失調性感覚性(多発性)ニューロパチーの2つの型がある |
これらの中で、栄養障害によるニューロパチーには注意が必要と考えています。「一人暮らし、やせた男性、アルコール多飲」という条件がそろうと、ビタミンB1欠乏性やアルコール性ニューロパチーが問題になります。
実臨床で見逃したくないニューロパチーは次の通りです。
■血管炎および免疫性ニューロパチー
■代謝性・栄養性・薬剤性ニューロパチー
■糖尿病性末梢神経障害DPN
診断名につながるポイントとして発症様式と経過、対称性、部位、症状などに注目し、表にまとめました。(表10~12)
| 急性の発症 | ||
|---|---|---|
| 疾患名 | 血管炎 | GBS |
| 対称性 | × | ○ |
| 部位 | 四肢遠位部 | 四肢 |
| 症状 | 感覚障害>運動障害
|
筋力低下が中心
|
| その他 | 基本的に全身疾患 |
|
| 亜急性の経過 | ||
| 疾患名 | CIDP 2ヵ月以上にわたり進行または再発 |
|
| 対称性 | ○ | |
| 部位 | 四肢 | |
| 症状 | 筋力低下が中心
|
|
| その他 | 脱髄疾患 | |
| 慢性の経過 | ||
| 疾患名 | MMN | IgMパラプロテイン血症を伴うニュロパチー |
| 対称性 | × | ○ |
| 部位 | 上肢遠位部 | 四肢遠位部 |
| 症状 | 筋力低下と筋委縮
|
感覚障害が強く、筋力低下は軽度
|
| その他 | 抗GMI抗体 | 血清免疫電気泳動でIgMのM蛋白 |
| 疾患名 | ビタミンB1欠乏性ニューロパチー(脚気) |
|---|---|
| 対称性 | ○ |
| 部位 | 下肢優位の多発ニューロパチー |
| 症状 | 運動障害>感覚障害、中には急速に筋力低下が進行し、当初GBSと誤診された例も報告
|
| その他 |
|
| 疾患名 | 葉酸欠乏性ニューロパチー |
| 対称性 | ○ |
| 部位 | 下肢優位の多発ニューロパチー |
| 症状 | 感覚障害>運動障害
|
| その他 |
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| 疾患名 | アルコール性ニューロパチー |
| 対称性 | ○ |
| 部位 | 下肢優位の多発ニューロパチー |
| 症状 | 分布はビタミンB1欠乏と同様だが、次の点で異なる
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| 疾患名 | 糖尿病性末梢神経障害DPN |
|---|---|
| 特徴 |
|