日本では主に1歳前後でEBウィルスの初感染が起こりますが、その多くは不顕性感染(ウィルスに感染しても発病しないままに抗体ができ、一生を通して発病しないこと)で終わり、その後も発病することはありません。
日本ではかっては3歳までに80%以上がEBウィルスの感染を受けていましたが、最近は衛生状態の改善、生活水準の向上により、初感染の年齢が上昇している傾向があります。アメリカでは17歳になり80%が抗体陽性となります。
西欧では思春期に急に抗体陽性が増えてきますが、EBウィルスは経口感染によると考えられており、kissing desease という異名が与えられています。したがってEBウィルス感染として実際に発病するのは思春期以降が多く、不顕性感染を除く約半数が発病すると考えられています。
高熱で始まり、のどの奥(咽頭)や扁桃は発赤してくるため、はじめにはかぜによる扁桃炎と診断されることが多いようです。しかしかぜによる扁桃炎は3,4日で解熱するのに対して、EBウィルス感染症では高熱が延々と1~3週間近く持続してきます。実際にはかぜによる扁桃炎と診断されながら、解熱しないためにEBウィルス感染症が疑われることになります。
EBウィルス感染症では扁桃炎に加えて、発熱後数日後には頚部のリンパ節が大きくはれてくるのが特徴的です。かぜの扁桃炎のリンパ節のはれに比べて、EBウィルス感染症では大きくはれてくるため、慣れるとすぐにそれと疑うことができます。
EBウィルス感染症は検査で特徴的な変化がみられます。血液検査ではAST(GOT)、ALT(GPT)が上昇し肝機能障害が起こってきます。またリンパ球の変化が起こり、異型リンパ球というふつうにはみられないリンパ球が現れてきます。
腹部エコーでは肝臓や脾臓のはれ(腫大)がみられるようになります。脾臓のはれは(脾腫)、強いウィルス感染症の特徴です。
EBウィルス感染症は自然に軽快していきますが、高熱が長期間持続するために食事が取れなくなったり、消耗したりで入院を余儀なくされることも多いようです。
肝機能障害の改善はゆっくりとしているために慢性化が心配されますが、EBウィルス感染症の肝機能障害は慢性化することはなく、徐々に正常値に回復します。重篤な合併症はありませんが、脾臓のはれが著しい場合には脾臓破裂に対して注意が必要であると指摘されています。
20~30歳代の若者が、急に高熱と扁桃炎、頚部のリンパ節のはれを生じて受診されることがあります。高熱が持続するためにEBウィルス感染症を疑い、血液検査を行っても肝機能障害やリンパ球の変化が認められず、EBウィルスの抗体の変化もみられないことがあります。
EBウィルス感染症とは診断できませんが、このような場合もEBウィルス感染症に似た経過をたどります。