外来で腹痛を訴えて来られる子どもは全体の5~10%にあたり、かぜに伴うものからショック状態の腹膜炎までさまざまです。
最近は精神的ストレスによる反復性腹痛も増加していて、子どもの胃・十二指腸潰瘍は「心の病」として注目を集めています。
話せない乳幼児には家族や医師が子どもの表情や姿勢などから腹痛を推察しなければなりません(たとえば腸重積など)。2歳以上になると、「ポンポンが痛い」と言えるようになりますが、胸の痛みや耳の痛みを腹痛と誤って訴えたりしてあいまいなことがあります。
学童になるとはっきりと言えるようになりますが、意識的に軽く言ったり大げさに訴えることがあります。(図1)
腹部の病気だけにとらわれず、全身的な病気がないか注意すべきです(ぜん息発作の始まりに腹痛を訴えることがあります)。
虫垂炎、腸重積、ソケイヘルニアかんとんなどの緊急を要する腹痛の進行は速く、容易に腹膜炎を起こしたり、腸の壊死を生じるため、注意が必要です。
乳幼児が「急に激しく泣き出し、あやしてもミルクを与えても泣きやまない」というときに、日常多い原因を挙げてみます。(1)、(2)は浣腸が決めてとなります。
*アレルギー性紫斑病とは:おもに2~8歳の子どもで、かぜの症状や溶連菌感染症に引き続いて、皮膚の出血・激しい腹痛・関節の炎症と痛み・腎炎の合併 などが起こります。子どもで原因不明の腹痛を繰り返すときには、アレルギー性紫斑病を考えることが大切です。
顔面蒼白で冷や汗を流し、背中を丸めるほどの激しい腹痛を生じて、浣腸により多量の便とガスが出ると、数分後には元気になり笑顔を見せるようになることがしばしばあります。
「家で浣腸すると腸が破れそうで怖い」という未経験ママもいますが、便秘に対する浣腸は簡単にできるホームケアーであり、浣腸薬を常備し便秘が考えられるときには、浣腸を自宅で行ってみる必要があります。
保育園児や学童が数ヶ月から数年間にわたって繰り返して腹痛を訴える場合に「慢性反復性腹痛」といいます。へそ付近にさまざまな強さの腹痛を訴えますが、医師の診察の所見に乏しく、ときに頭痛やおう吐、倦怠感を伴います。
静かに寝ていたり排便すると1~2時間で痛みが消える といった特徴があります。腹痛は朝登校前、食事前後に多いため、親にとっては不登校ではないかと心配されます。
原因は大部分が心因性ですが、まれに腹性てんかんや数%の潜在的な器質的な病気が原因のこともあります。原因としては心因的なことが多いため、まず実際にお腹が痛むことを認めてあげることが必要です。
子どもや親の不安感を取り除いてあげることが大切で、単に「異常なし」と説明するのではなく、「多少腹痛があっても何も心配することはない」ことを納得させてあげるようにしましょう。
参考文献
豊原 清臣ら編:開業医の外来小児科学第3版.南山堂,1997.