高血圧症や動脈硬化、糖尿病など中年を過ぎてから現れるはずの生活習慣病が、子どもの間に急増してきています。
このままいくと日本人の平均寿命を十年以上も縮めかねないと言われている「子どもの生活習慣病」、何が原因でどう予防したらよいのでしょうか?
子どもの生活習慣病は、その段階によりいくつかのグループに分けられます。
第一はすでに成人と同じ糖尿病や胃潰瘍などにかかっているグループ。たとえば糖尿病は現在一万人に一人の割合で発病しており、さらに増える傾向にあります。
第二は、今は症状はないものの、将来生活習慣病になりやすい危険因子を持っているグループ。この生活習慣病予備軍の子どもの数が最も多く、年を追って増えてきています。
最近、事態の深刻さを裏付ける数字が次々と明らかになってきました。最大の危険因子-コレステロールの平均値は、小・中学生とも毎年1mgというハイペースで上昇していると言われています。
最近の調査では、コレステロールが200mg以上の子どもの割合は、女子で1993年に9%だったのが2001年には19%と2倍以上に増えていることが明らかになりました。男子でも同時期、11%から16%に増えていました。平均値も女子が166から175に、男子が168から174に増えていました(アメリカで小児用に設けられた基準では、200以上が「高い」とされています)。
また肥満児はこの十年あまりで倍増し、小・中・高校生の2-3% に高血圧がみられます。これらの危険因子を抱えている子どもが十人に四人もいる、とする調査もあり、さらに悪化する一方です。
肥満に関する最近の調査では、体重(キロ)を身長(メートル)で2回割ったBMIという指標で比較したところ、女子では肥満(BMI20.3以上)は1993年に10%だったのが2001年には12%に増え、男子では肥満(BMI20.2以上)は13%から15%に増えていました。
こうした数値は欧米と肩を並べるまでになっており、将来心筋梗塞などの病気も欧米並みに近づくのではないかと心配されています(現在は3分の1以下にとどまっています)。
その原因としては、食生活の洋風化や運動不足、受験などによるストレスの増大、喫煙などが挙げられます。大人が生活習慣病になるのと同じ要因が、子どもの世界まで入り込んできた結果ともいえます。運動も遊びもしないで塾に通わせ、受験戦争に駆り立てるのは、子どもを生活習慣病で早死にさせる可能性を高めています。
予防策のかなめは、正しい食生活の習慣づけと運動といえます。具体的には和風、洋風、中華風の献立を組み合わせて雑食する(一日三十品以上)、朝食を抜かずにしっかりと食べる、砂糖や塩分、動物性脂肪を控えて偏食をしない などが大切です。
適度な運動を継続して行うと、コレステロールの中でも動脈硬化を抑制する「善玉コレステロール」が増えて予防につながります。続けなければ意味がないので、水泳など自信を持って楽しくできる運動を選ぶ必要があります。
それに加えて両親や祖父母などの家族歴を調べ、自分のなりやすい病気を割り出して重点的にそれを予防する生活習慣に切りかえることも大切です。幼いうちから親が食事などの日常生活にちょっと気をつければ、生活習慣病の進行は予防できます。その意味で親の役割は重要です。