- 家庭の医学 -
よく見られる子どもの病気

きげんが悪いとき

外来を訪れる子どもの中には、母親が「何となくきげんが悪い」、「何となく子どもの様子がおかしいので」といって来られることがあります。

その中にはときに重大な病気が認められることもあり、母親の勘の良さに敬服させられることがあります。日常とは子どもの様子が違うとか、何かわずかな症状(微症状)がみられるときには、いろいろなことを考えなければいけません。

乳児(1歳未満)の微症状

乳児の場合には、ミルクを飲まない、きげんが悪くてぐずる、いつものように昼寝をしない、ぐったりしている、泣きやまないなどの微症状が何らかの病気の始まりのことがあります。

乳児突然死症候群もこのような微症状が始めに起こることが少なくありません。このような乳児については、かぜやおなかの病気、腸重積の始まりではないか注意する必要があります。

また、乳児の顔色が良くないとか、他の子どもに比べておとなしすぎるというような場合には、貧血や甲状腺機能低下症などのことがあるので注意が必要です。
とくに未熟児で出生した子ども は、後になって貧血が出やすいので注意します。

幼児・学童の微症状

いつもと違ってゴロゴロしている、食欲がない、微熱があるといったときには何かの病気の始まりのことがあります。
一方、いつも元気のない子、朝起きが悪くてぐずぐずする子などもあり、このようなときには起立性調節障害ではないか疑う必要があります。

微症状のとらえ方

親や医師が良く気がつく場合には、顔を合わせたときの印象がきわめて大切です(図1)

家庭でできる子どもの病気チェックポイント
図1家庭でできる子どもの病気チェックポイント

一見して気がつくことも多いのですが、大切なことはまず顔をみることです。顔色が悪く、青白いときには重大な病気が潜んでいることを示すことが多くあります。
高度の脱水があると目が落ち込むようになります。激しく泣きやまないときには痛みを伴う病気のことがあり、逆にほとんど泣けないようなときには緊急を要する病気を疑います。

声をかけたり、体に触ったり、おもちゃを持たせたりして、外からの刺激に対する反応の仕方に注意を払います。重大な病気があるときには、これらの刺激に対してもあまり反応しないようになります。

家庭でできる検査

1)全身の観察

大切なことは裸にして全身を観察することです。

乳児では頭部 の柔らかい部分(大泉門といいます)の張り具合をみます。この部分が緊張して盛り上がっているときには、脳内に異常(出血、髄 膜炎、脳圧亢進など)が起こっていることを示しています。

呼吸ではゼーゼー鳴っていないか、口や胸に耳を近づけてみると分かります。また、ぜん息発作では、呼吸とともに胸の肋間の筋肉がくぼむことで分かります。

腹部では、腸重積ではよくみるとヘソの右やや上部に軽いもりあがりがみられ、そこを押すと痛がって泣き出します(詳しくは、よく見られる子どもの病気-腸重積 をご覧ください)。

おむつを下げて股をみて、ヘルニアがないか男児では陰嚢もはれていないか調べてみます。

乳幼児の虫垂炎は比較的まれですが、気がついたときにはせん孔を起こしやすく注意が必要です(詳しくは、よく見られる大人の病気-急性虫垂炎 をご覧ください)。

手足の動きも大切です。動きの少ないときには、麻痺や骨髄炎を示していることがあります。肘の脱臼(肘内障)も不きげんから気がつかれることがあります。発疹や出血斑がないかも大切です。
口の中では、口内炎や虫歯にも気をつけます。夜中などに急にきげんが悪くなったときに中耳炎が原因のこともあります。

2)体温、体重、呼吸数、心拍数の変化

発熱はもちろん異常なことですが、新生児期では低体温が感染症の始まりの症状であることがあります。体重の急激な減少は脱水症を、体重の増加不良は慢性的な病気や不適切なケアの可能性があります。

吸数や呼吸の状態、無呼吸なども大切です。心拍数の変化は子どもでは簡単に調べることが困難ですが、異常に早いときや遅いときには不整脈の可能性が高くなります。

考えられる病気

1)発熱があるとき(図2)

きげんが悪く、発熱があるとき
図2きげんが悪く、発熱があるとき

発熱があるときにはまず感染症を疑います。
呼吸状態が悪く顔色も悪いときには、髄膜炎、敗血症を疑います。
やや不きげんという程度なら、尿路感染症、肺炎、中耳炎、かぜなどを考えます

2)発熱がないとき(図3)

きげんが悪く、発熱がないとき
図3きげんが悪く、発熱がないとき

呼吸困難

重症のぜん息発作ではせきやゼーゼー鳴る喘鳴がはっきりしないこともあります。また、呼吸器の病気ばかりでなく、無呼吸やチアノーゼがけいれん発作で起こることもあります。

意識レベルの低下

「元気がなく寝てばかりいる」というときに意識障害が原因のことがあります。頭部の出血、高度の脱水症などを考慮します。

顔色不良

貧血を起こす病気(鉄欠乏性貧血、白血病など)、脱水、腸重積、低血糖、発作性頻拍症などが上げられます。激しいおう吐・げりの後に低血糖の状態に陥ることがあります。

食欲低下

発熱、口内炎、胃腸炎など食欲低下を生じる原因は多種多様です。

痛み、体を動かさない

子どもは必ずしも痛みを訴えるとは限りません。手足を動かすと泣き出すなどの様子から気がつくこともあります。
肘内障(肘の脱臼)、上腕骨骨折、鎖骨骨折などの頻度の多い病気を忘れないようにします。
おなかに痛みがありそうなときは、虫垂炎、腸重積、ソケイヘルニアのかんとんを考えます。
また、急性陰嚢症(精巣ねんてん症など)は緊急の病気であり、泌尿器科に紹介しなくてはなりません。

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