- 家庭の医学 -
よく見られる子どもの病気

子どものむずむず脚症候群

むずむず脚症候群を発症する子どもは決してまれではなく、とくに思春期の児童に生じやすいと言われています。

子ども全体の2~4%でみられ、そのうち0.5~1%が中等症から重症のむずむず脚症候群と報告されています。

子どものむずむず脚症候群の症状

子どもは脚の不快感があってもうまく表現できなかったり、親もそれほど問題と考えないこともあり、見逃されることが多いです。

脚の不快感には、「むずむず」だけでなく、痛みや熱さのこともあり、「誰かが触っている」「ぴりぴりとする」などいろいろな表現があります。また、寝つきが悪くなったり、足指に力を入れて広げる、脚どうしをこすりつける、脚を布団や壁に押しつける、脚のマッサージをせがむなどの行動をとることもあります。

毎晩、寝かしつけるために親が脚のマッサージを1~2時間続けることもあります。子どもが成長してから「脚がむずむずする」と言葉で表現できるようになり、発症から数年してから初めて診断できることもあります。

子どものむずむず脚症候群
図1子どものむずむず脚症候群

またむずむず脚は夜間だけでなく、日中にも症状が起こる場合があります。眠気や居眠り以外にも、注意や集中力の低下、抑うつ、反抗、挑戦的な行動など、情緒・行動面で問題を生じることがあります。
不注意、多動性、衝動性に特徴を持つ注意欠如・多動性障害(ADHD)の子どもがむずむず脚症候群を合併しやすいことが知られています。

子どものむずむず脚症候群は、カフェイン摂取の制限や規則正しい生活リズムなどの指導で改善する軽症から、入眠困難や中途覚醒のため子どもだけでなく親の生活リズムも崩れる重症のこともあります。

子どものむずむず脚症候群の発症要因と危険因子

1)鉄欠乏

成長期の子どもは鉄需要が多いため、大人に比べて鉄欠乏になりやすいです。貯蔵鉄減少のマーカーは血清フェリチン値ですが、子どものむずむず脚症候群では血清フェリチン値が50ng/mL未満が70~75%を占めるとされています。

2)遺伝要因

大人のむずむず脚症候群は家族歴が多いことが知られています。子どものむずむず脚症候群でも家族歴をもつものは63.3%であったと報告されています。

3)感染症

マイコプラズマやA群溶連菌などの感染により、むずむず脚症候群の症状を起こすことがあります。

4)薬剤

抗ヒスタミン薬(特に第一世代抗ヒスタミン薬)、SSRIなどの抗うつ薬、H2ブロッカー、フェニトイン、吐き気止めのプリンペラン(商品名)などのドパミン遮断薬が悪化因子となることがあります。

5)その他

睡眠不足やカフェインの過剰摂取も子どものむずむず脚症候群の発症や悪化因子となることがあります。

子どものむずむず脚症候群の診断と治療

子どものむずむず脚症候群では、眠れない、朝起きられないなど、脚の不快感とは異なる訴えを持つ場合があります。そのため、睡眠に問題を持つ子どもでは脚の不快感がないか、脚を気持ち悪そうで動かしている様子がないか注意する必要があります。

家族の中で似た症状を持つ人がいないかも注意します。他にも、睡眠不足がないか、緑茶や紅茶、コーヒー、エナジードリンクなどの清涼飲料水による夕方以降のカフェイン摂取、誘因となる薬剤の服用がないかにも注意します。

軽症のむずむず脚症候群は十分な睡眠、規則正しい生活習慣、カフェイン摂取の制限で改善することがあります。多量の紅茶や緑茶を飲んでいる場合は、カフェインを含まない麦茶などに変えるようにします。

脚のマッサージやストレッチが有効な場合もあります。また脚の熱感が強い場合は、足元にアイスを置く、冷却剤を貼るなどを試します。

血清フェリチン値を測定し、50ng/mL未満である時には鉄剤の投与を行います。鉄剤が飲めない場合にはシロップを使います。
鉄剤の有効性は高く、5~11歳までのむずむず脚症候群の約80%で有効と言われています。症状が改善または消失するまでの期間は3.8ヶ月とされています。
米国では最低3ヶ月以上内服することが勧められています(3~6mg/kg/日)。

鉄剤がどうしても飲めない場合には、鉄分を強化したお菓子やサプルメント、栄養剤も可能ですが、鉄の含有量は薬に比べて少なくなります。鉄剤で効果が得られない場合には、大人のむずむず脚症候群を治療できる睡眠専門の医療機関を紹介してもらいます。

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