気管支喘息は軽い・重いにかかわらず、気管支の慢性炎症が根本的な原因と考えられています。
慢性炎症があると気管支の過敏性が増すために、気管支が急にけいれんを起こしたかのように収縮したり、気管支の壁からの分泌物(いわゆるたん)が増して気管支の流れを悪くしやすくなります。(図1、2)
したがって気管支喘息は、気管支の発作時(けいれん様の収縮)だけの治療だけでよくなるものでなく、炎症の原因を除去や予防、継続した炎症に対する予防的な治療が重要になってきます。
このような気管支の慢性炎症を起こす原因としては、アトピー素因、感染症、気道過敏性などが考えられます。
小児喘息の90%以上にアトピー素因が認められるといわれています。アトピー素因とは、アレルギーを起こしやすい外界の物質に対して、体が過敏に反応しやすい体質のことを指していて、強い遺伝的な背景がみられます。
小児喘息は典型的には乳児期に始まりますが、乳児期には卵白、牛乳、大豆、小麦などの食物に対してアレルギー反応を起こしやすくなります。1歳を過ぎるころから、ハウスダストの中のダニなど、環境的なアレルギーに入れ替わっていきます。
そして室内のペットの飼育やダニの多い環境の中で、喘息などのアレルギー疾患が悪化していきます。
乳幼児期は中耳炎、鼻炎、副鼻腔炎、急性上気道炎や気管支炎などにかかりやすい時期です。いろいろなかぜのウィルスが気管支の炎症を起こす結果、喘息と同様の症状を引き起こし、かぜを繰り返すことによって喘息に移行することがしばしば認められます。
また副鼻腔ができあがる3歳以降では、細菌が膿のような鼻水に混じって夜間に気管に流れ落ちるようになり、慢性炎症に関わっていることが疑われています。
こうして4歳までに約75%が、小学校入学前までに80%以上が小児喘息の診断がなされるようになります。したがって副鼻腔や気道の感染症の対策も、喘息の予防や治療に大切な意味を持っています。
気道の過敏性には大気汚染、喫煙などが関係しています。また最近は、気密性の高い部屋での暖房器具や建材から発生する二酸化窒素やホルムアルデヒド、プラスチック容器やおもちゃなどに含まれる化学物質の影響が指摘され、これらの原因で気道が過敏になってきています。
喘息症状を起こす前に、かぜに引き続いてせきやゼーゼーいう喘鳴を繰り返したり、長い間夜間のせきが続いていることがあります。「かぜ」の症状として扱われることがありますが、喘息の前駆症状のことがあります。
家族に喘息などのアレルギー疾患がないか、本人にもアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などがないか、注意する必要があります。
小発作 |
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中発作 |
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大発作 |
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喘息の子どもが夜間や休日に喘息の発作を起こしたときに、どのようにしたらよいのでしょうか?
上の小児アレルギー学会の分類で、小発作の程度なら、自宅で吸入ができれば吸入を行い、指示されているように気管支拡張薬を内服する、また次にのべるようなタンを出すように工夫して、自宅で様子をみることができます。
しかし、小発作でも軽快しない場合、中・大発作であれば迷うことなく、夜間や休日の病院を受診すべきです。
(小児診療マニュアル:日本医師会雑誌、vol.102 no.10から抜粋)
子どもの喘息の多くがアレルギー性ですが、おとなの喘息はかぜやストレスがきっかけとなって発作が起こりやすくなります。おとなでは元々気管(気道)が過敏な人が、ストレスやかぜをきっかけにして喘息が起こることが多くあります。おとなの喘息の約60%がかぜが引き金となっています。
おとなでは気道の過敏な人は、人口の約10%いるといわれます。かぜが治ってもせきが一ヶ月ほど続くようなら喘息(せき喘息)を疑う必要があります。息を吐くときにヒューヒューいえば、喘息と分かりやすいのですが、実際の症状はかぜが治ったのに咳が続く場合が多いので、喘息を見逃しやすくなります。
せき喘息の特徴は、❶一日のうち、夜間から早朝にかけて強く出る、❷暖かい所から寒い所、あるいはその逆といった、温度差のある所でせきが出やすくなる ことの二つです。
心身ともに健康な状態に保つことが大切です。
かぜなどの発作の原因を避けるほか、次の点に注意してください。