髄膜炎は大きく細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎とに分けられます。
無菌性髄膜炎の大部分はウィルス性で、とくにエンテロウィルス(夏かぜによる髄膜炎の多くを占めます)およびムンプスウィルス(おたふくかぜをおこします)が重要です。
無菌性髄膜炎は自然に軽快することが多く、臨床的には細菌性髄膜炎が重要です。
細菌性髄膜炎は小さな乳幼児に多く、早期発見が重要となります。乳幼児の髄膜炎では、両親や医師など周囲の者が早期に異常を気がつく必要があります。
しかし症状として特徴的なものは少なく、元気がない、哺乳力低下、おう吐、泣き声が弱い、母親が何かおかしいと感じる など原因を説明できない症状や状況の時には、髄膜炎の疑いを持つ必要があります。
新生児の細菌性髄膜炎の主要な感染経路としては、出産時のトラブルやその治療手技に伴うものや出産後のいろいろな治療手技に関係して発症してくるものが考えられます。年齢の進んだ乳幼児の多くでは、上気道感染→菌血症→髄膜炎と進行してくるものが考えられます。
無菌性髄膜炎は比較的年長の幼児や学童に多く、発熱・頭痛・おう吐が3大症状といわれます(図1)。
しかしこれらの症状はかぜの症状としてはむしろ一般的で、うっかりするとウィルス胃腸炎などと間違えることがあります。頭痛とおう吐をみたときには、常に髄膜炎の可能性を忘れないことが重要です。
髄膜炎の特徴的な症状は髄膜刺激症状といわれるもので、その一つが項部強直といわれるものです。項部強直とは首の後ろが硬くなり、首を前に曲げにくくなる所見を指します。
軽い項部強直をみつける方法としては、子どもをベッドや床に座らせて手をつかないで自分の力で首を前屈させます(図2)。このとき窮屈そうにして首を前屈できないときには項部強直を疑うことができます。このとき首の後ろや背中に痛みを訴えれば、さらに疑いは強くなります。
しかし髄膜炎の診断はときとして困難なことも多く、項部強直がみられなくても説明のできない発熱が持続し、頭痛を訴えるときには常に髄膜炎を疑っていく必要があります。
おう吐などのため脱水症があると髄膜炎がなくても項部強直を生じることがあります。