日常外来診療に基づいた総合内科のアプローチ
-- 臨床研修医のために --

主に下肢に限局する浮腫
❷両側性(上肢や顔面浮腫を伴うことも)

下肢の浮腫は下肢だけに限局する場合は片側性のことが多く、両下肢に存在する場合には程度に差はあっても上肢や顔面にも浮腫が存在することが多いと思います。

したがって下肢中心の浮腫は、❶片側性❷両側性(上肢や顔面の浮腫を伴うことも) に分けて考えることにします。

両下肢浮腫は心不全や腎疾患などが一番遭遇することの多い一般的な疾患ですが、ここではこのような教科書的な疾患は除いて考えます。
夏季に多いのですが、中高年の男性が水分を過剰に摂取して両下肢浮腫を発症することがあります。原因を指摘して納得してもらうことは、信頼関係の構築には必要なことです。

1.好酸球性血管性浮腫

好酸球性血管性浮腫は、再発性のEAE(episodic angioedema with eosinophilia)と非再発性で若年女性に好発するNEAE(non-episodic angioedema with eosinophilia)とに分類され、本邦ではNEAEが大部分を占めます。
両者ともに、熱感や圧痛を伴わない非圧痕性浮腫を特徴とし、末梢好酸球増加を認めます。

皮疹や皮膚掻痒感、発熱などを伴うことがあります。NEAEでは浮腫は四肢に限局し、一過性に関節痛(45.7%)も見られ、全身症状も比較的軽微です。
若年女性に好発する点では、ヒトパルボウィルスB19感染と鑑別を必要とします。

2~3ヶ月以内に自然軽快が期待されますが、低容量のステロイドが著効します。鑑別となる好酸球増多症候群HESは皮膚(69%)の他、肺(44%)、消化管(38%)、心臓(20%)などの内臓臓器への浸潤を認めより重篤な疾患である点で異なります。

2.高齢発症関節リウマチ、RS3PE症候群

自験例の高齢発症関節リウマチで初発症状が両下肢浮腫と関節痛の例があり、鑑別に加えました。高齢発症関節リウマチは一般的には60歳以上で発症するRAと定義され、通常のRAと比べて次のような特徴があります。

  • 急性発症、発熱、倦怠感、体重減少
  • 肩や肘、膝関節など大関節>手指や足趾の小関節
  • 手、足背部に浮腫を伴うこともある
  • リウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性となる頻度が高い など

同じくRS3PE症候群の自験例は手指や足趾、下腿部の浮腫が著しく、一度経験すると忘れることができないほどの高度の手指の浮腫と関節腫脹を認めました。(写真1、2)
その特徴は、

  • 予後の良い (Remitting)
  • リウマチ因子陰性 (Seronegative)
  • 対称性 (Symmetrical)
  • 手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎 (Synovitis With Pitting Edema)

*R=remitting, S3=seronegative, symmetrical, synovitis, PE=pitting edema

RS3PE症候群:自験例の手指の浮腫
写真1RS3PE症候群:自験例の手指の浮腫

RS3PE症候群:自験例の足趾の浮腫
写真2RS3PE症候群:自験例の足趾の浮腫

ポイント高齢者の急性発症の大関節痛では、高齢発症関節リウマチ、RS3PE症候群、リウマチ性多発筋痛症PMRが鑑別に挙がります。

臨床像の比較 (植木幸孝 他 日本内科学会雑誌 2017;106:2118-24.を一部改変)
  EoRA PMR RS3PE
症候群
性差 女性>男性 女性>男性 男性>女性
突然発症 3分の1が該当 ほとんどが該当 全例で該当
末梢関節炎 4分の1であり まれ 全例であり
肩関節炎 4分の1であり 全例であり ほとんどあり
手指の変形 3分の1であり なし なし
圧痕性浮腫 まれ まれ 全例であり
炎症反応 高値 高値~著明高値 高値~著明高値
貧血 あり あり あり
リウマトイド因子 3分の1で陽性 陰性 陰性
骨X線上の
びらん
あり なし なし
ステロイド
への反応
良い とても良い とても良い

リウマチ性多発筋痛症PMRは比較的多く経験しますが、関節痛の訴え方に特徴があります。
PMRでは近位部に関節痛・筋肉痛が起こりやすいため、「痛くて寝返りをうてない」「痛みやこわばりで起き上がれない」と訴えます。多くの患者が、「痛みのために起き上がるのがやっと」と表現されます。
始めから「肩や腕があがらなくなった」と訴えることは少ないのですが、診察室で両上肢を挙上してもらう(バンザイをしてもらう)と動作から容易に本症を疑うことができます。

PMRではCRP高値が特徴とされますが、慢性に経過した例ではCRP上昇が軽度のこともあります。始めにPMRと考えられた例で、最終的にRAと診断を受けることもあり、慎重に経過をみる必要があります。

3.自己免疫性甲状腺疾患

橋本病は全身性の粘液水腫が有名ですが、バセドウ病でも前脛部または足背に紫~黄褐色調の色素沈着を伴った非対称性の限局的皮膚硬化、すなわち限局性粘液水腫を認めることがあります。

これらは原則として非圧痕性であり、圧痕を呈する際には心不全の合併を考慮しますが、バセドウ病の数%では心不全の存在なしに対称性の圧痕性浮腫が出現します。この浮腫はムコ多糖類の沈着ではなく、末梢血管抵抗減少による水分貯留と考えられています。

4.栄養障害に伴う低蛋白血症やビタミンB1欠乏症

低蛋白血症に伴う浮腫は腎疾患や肝疾患に伴う病態が想起されますが、ここでは栄養障害に伴う低蛋白血症やビタミンB1欠乏症に伴う下肢浮腫について私見を混ぜながら簡単に言及します。

世相を反映してかどうかは不明ですが、「一人暮らし、るいそう、アルコール多飲」の3条件が揃う男性は少なくありません。他人の意見には耳を貸さずに頑なに自分の生き方と偏食を通すため、栄養障害とくに低蛋白血症とビタミンB1欠乏症を伴いやすいと考えられます。

ビタミンB1欠乏症による浮腫は圧痕性で全身性浮腫となります。細動脈拡張と細静脈収縮による浮腫で、脚気心などの心不全を伴わない場合もあるので要注意です。

栄養障害の病態として低蛋白血症は想起しやすいのですが、ビタミンB1欠乏症は見落としやすいので注意が必要です。栄養障害がなくてもループ系利尿薬による排泄亢進やアルコール・制酸剤・タンニンあるいは十二指腸上部空腸病変などでの吸収障害が原因でもビタミンB1欠乏症は起こります。

ビタミンB1欠乏症を疑う3条件●一人暮らし(男性) ●るいそう ●アルコール多飲

5.薬剤性浮腫

降圧薬の中で、ACE阻害薬/ARBによる血管性浮腫は有名です。忘れてはならないものにCa拮抗薬による薬剤性浮腫があります。

Ca拮抗薬による浮腫の機序は、末梢細動脈拡張作用による毛細血管内圧上昇です。血漿量は増加しないため、利尿剤は効果がみられません。
副作用出現率はジヒドロピリジン系(12.3%)で高く、低容量(5.7%)よりも高容量(16.1%)、開始後1ヶ月(2.3%)より6ヶ月後(23.8%)で高いとされます。浮腫発現までの平均投与期間は28.2ヶ月(1.5~97ヶ月)で、21ヶ月以降が53%という報告もあり、遅発性が多いことに注意します。

ジヒドロピリジン系にはほとんどすべてのCa拮抗薬が含まれ、非ジヒドロピリジン系はベラパミル(商品名:ワソラン)とジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)です。
Ca拮抗薬による浮腫は、降圧効果が不十分でCa拮抗薬を増量したときに起こりやすい印象があります。したがってCa拮抗薬を中止する必要はなく、減量により浮腫は改善することが多いです。

6.腸骨静脈圧迫症候群

腸骨静脈圧迫症候群は、腹腔および骨盤内腫瘍、妊娠、大動脈瘤、後腹膜血腫、後腹膜線維症などにより、腸骨静脈が圧排され下腿浮腫を呈する症候群です。
女性では巨大な子宮筋腫や卵巣腫瘍による圧迫の例が多く、男性では前立腺肥大による尿閉から膀胱が拡張して起こることが多いです。その他、神経因性膀胱や尿道狭窄による膀胱拡張でも起こります。

下腿浮腫の他、外腸骨静脈の遠位にある大腿静脈からの分枝である浅腹壁静脈の怒張は本症候群の所見の一つです。両下肢浮腫をみた場合には、腸骨静脈圧迫症候群を疑い腹部超音波検査を行うことが重要です。

7.心のう水貯留や収縮性心膜炎

心のう水貯留の原因としては、特発性またはウィルス性を筆頭にSLEなど膠原病、悪性腫瘍、IgG関連疾患などが挙げられ、結核性の割合は3~6%です。
結核性心膜炎は胸痛などの自覚症状が乏しいことに加え、細菌学的・組織学的に偽陰性が多いために診断の確定が難しいとされます。結核性心膜炎の30~60%が収縮性心膜炎を発症します。

収縮性心膜炎では心外膜の拘縮性変化により、胸水・腹水・浮腫などを認めます。大多数の例では頸静脈圧の上昇がみられ、奇脈・心膜ノック音・心膜摩擦音を確認できることもあります。胸部X線やCTの心膜石灰化は25%程度しか認められず、心膜肥厚が明らかでない症例では見逃されやすいです。

最近話題のIgG4関連疾患は膵臓、胆管、唾液腺、涙腺、リンパ節が好発部位ですが、稀に胸膜や心膜に浸潤し両下肢浮腫や労作時呼吸困難を起こすことがあります。

8.Cushing症候群

Cushing症候群では末梢性浮腫は50%に認められると報告されています。過剰に分泌されたコルチゾールの蛋白異化作用により表皮と皮下組織が菲薄化し、易出血および創傷治癒遅延を生じます。
軽微な外傷での紫斑や、腹部の赤色皮膚線条は特徴的な所見です。月経異常も84%に認められます。稀な疾患ですが、鑑別の一つに加えます。

9.好酸球性筋膜炎(びまん性筋膜炎)

好酸球性筋膜炎(びまん性筋膜炎)は筋膜を中心に皮下脂肪織、真皮深層に炎症細胞浸潤と線維化を起こす自己免疫疾患です。
通常は亜急性の経過で、四肢の浮腫、皮下組織の硬化、関節拘縮を来しますが、顔面と指趾は侵されません。末梢血の好酸球増多と病理組織における筋膜および皮下組織への好酸球を伴うことが多いです。

自験例では頸部から肩にかけての筋膜の拘縮が著明で、頸部の運動が著しく制限されていました。原因が特定できない緩徐進行性の両下肢の非圧痕性浮腫からはリンパ浮腫が想定されますが、階段の降りづらさなど足関節などの可動域制限をみた場合には好酸球性筋膜炎(びまん性筋膜炎)も鑑別に加えます。

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