SAPHO(サッフォー)症候群は、特徴であるSynovitis(滑膜炎)、Acne(ざ瘡)、Pustulosis(膿疱症)、Hyperostosis(骨化過剰症)、Osteitis(骨炎)の頭文字を取り命名されました。
関節炎と掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、ざ瘡、乾癬(かんせん)の皮膚疾患の関連が強く、関節炎としては末梢関節炎の他に胸鎖・胸肋関節炎および異常骨化が特徴的です。
*掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は手のひら(手掌)や足の裏に膿をもったような小さな水ほう(膿疱)を生じる皮膚病で、決して珍しくありません(写真1、写真2)。
これに加え脊椎や仙腸関節炎などの軸性関節炎も出現し、HLA-B27や炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)とも関連する可能性が示唆されていることから、Ⅱ章で述べた脊椎関節炎の亜型とも考えられています。
日本での発症頻度の報告はありませんが、世界的には0.04%程度という報告もありまれな疾患です。やや女性に多いという報告もありますが、ほぼ性差はなく30-50歳台が好発年齢とされます。本院で経験した例は60歳代の掌蹠膿疱症のある女性でした。
それぞれの症状は増悪・緩解を繰り返す上、関節炎と皮膚疾患の関連が強いとされているにもかかわらず、発症時に全ての症状がそろわない患者さんも多くみられます。原因は未だ不明で、確立された治療法はありません。
最も頻度が高い症状は、前胸壁(胸鎖・胸肋関節部)の痛みです。胸鎖・胸肋関節部の病変は80-90%程度の患者さんにみられ、本疾患の特徴的所見とされます。一般的に骨炎・骨化過剰症を来たし、それぞれ、疼痛・腫脹および骨性膨瘤を認めます。
これについで脊椎、末梢関節炎、膝関節、仙腸関節痛の頻度が高頻度です。また皮膚症状は80%程度に認められます。関節炎先行型、皮膚症状先行型、同時発症の3つに分けられ、報告によりその頻度はまちまちですが、ほぼ同じくらいの頻度です。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)を認める症例では、皮疹が比較的特徴的で、関節炎の合併を疑って診察することもあることから、比較的診断がつきやすいですが、その他の皮疹を伴う場合は、関連に気がつかれない症例も少なくありません。数年の経過でようやく両方が発症することもあり、実際に診断確定までに平均9年を要すると報告している論文もあります。
皮膚症状は80%を超える症例で認められ、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、乾癬(かんせん)、ざ瘡(いわゆるニキビ)が挙げられます。それぞれ、掌蹠膿疱症が30%、尋常性乾癬 10%、重症ざ瘡 20%、掌蹠膿疱症と乾癬の合併が20%程度とされ、3者を合併する者も10%弱存在することから、診断に苦慮する例も多く認められます。一方で15%前後の患者さんでは長年の経過でも皮膚病変を認めないこともあります。