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内科から見た肩こり

1.肩こりに必要な知識

肩こりは、頭痛やしびれ、めまい、目の痛み、息苦しさ、疲労感など肩こり症候群と呼ぶことができるほど多彩な症状を起こします。

人間は他の多くの動物と違い、直立して生活しています。人間もはじめは四つ足に近い状態で生活していましたが、進化とともに脳が発達して重くなり、四つ足では脳を支えきれなくなり、直立する必要があったと考えられています。
脳の発達とは反対に、生活が便利になるにつれて筋肉を使うことが少なくなり、脊椎や筋肉が脳の発達ほど強くならなかったことが、肩こりを多くした原因の一つと考えられます。

肩こりのいろいろな症状を理解するためには簡単な解剖の知識が必要です。肩こりの多彩な症状には、骨格・筋肉・神経・血管などが深く関係しています。

1)骨格について

頚椎

首を支えるための頚椎は七つからなっています。頚椎の第一の働きは重い頭を支えたり、首を前後に曲げたりそらしたり、左右に動かしたりすることです。第二の働きは中を走る脊髄を守ることです。

脊椎だけでは積み木を積み上げたようなもので不安定です。脊椎を安定させるために、脊椎の間の椎間板と関節、それに脊椎を支えるための筋肉やじん帯が重要な役割を担っています。

【図1】 脊椎の生理的ワン曲
図1脊椎の生理的ワン曲

(図1) 「せぼね」と言われる脊椎は全部で24個の骨から出来ています(頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個)。人間の骨格は、腰から背中、頚へとゆるやかなS字カーブを描いています。
このS字カーブは重い頭を無理なく支えるためにきわめて重要ですが、うつむいたり前屈みの姿勢では頭が重すぎてうまく支えることが出来なくなります。姿勢が悪いと首すじや腰の負担が大きくなり、肩こりや腰痛の原因になります。

頸椎の七つの骨と骨は、椎間板と椎間関節によってつながれています。椎間板と椎間関節は肩こりと深い関係があります。椎間板は一つ一つの椎骨への衝撃を和らげるクッションの働きと頸椎のなめらかな動きに関係しています。椎間板は中にあるラグビーボールのような形をした髄核(ずいかく)とその周囲をとりまく繊維輪からできています。

椎間板

【図2】 椎間板のしくみ
図2椎間板のしくみ

(図2) この椎間板は年齢による影響を最初に受ける部分で、20歳までに成長を終えるとあとは老化の一途をたどります。椎間板の真ん中にある髄核は水枕のようなものです。
椎間板の老化とはこの髄核の水分が減少することで、水分が減少すると柔軟性が悪くなり、クッションの働きも可動性も悪くなります。このため早い人では10歳代後半から、遅い人でも30から40歳代から肩こりを自覚しやすくなります。

◆椎間板が変性してくると肩がこる理由
椎間板の一番外側には脊椎-洞神経という痛みを感じる神経が分布しています。この神経が椎間板に加わった無理な力を感じるとその刺激が脊髄に伝えられ、肩甲骨のまわりの筋肉を反射的に緊張させるためと考えられています。

椎間関節

椎間関節は本当の軟骨からできています。
とくに頸椎の上から一番目と二番目の骨には椎間板はなく、椎間関節だけでつながっています。椎間関節の軟骨が加齢やさまざまな原因ですり減ってくると、すぐそばにある脊髄や神経の根本に影響を与えることになり、痛みやしびれなどの神経症状を起こしやすくなります。

2)筋肉について

肩こりと関係の深い筋肉は首すじと背中の筋肉群になります。
首すじや肩のまわりには骨や関節をつつむように20以上もの大小さまざまな筋肉があり、4kgほどもある重い頭を支えながら、曲げたり回したりという動きをしたり、左右それぞれ4kgほどの重さのある腕を動かすというダイナミックな運動をしています。これらの筋肉のこわばりは血流を悪化させ、こりや痛み・しびれなどを引き起こすことにつながります。

( 図3、図4、図5)背中と肩周辺の筋肉群は、姿勢の維持と腕の動きに大きな役割を果たしています。
こうした運動をコントロールするには、かなりの筋力を必要としますが、その役目を担っているのが、鎖骨の上から肩にかけてある「僧帽筋(そうぼうきん)」、肩から上腕の外側にある「三角筋(さんかくきん)」、背中から首と肩にかけて広がる「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」、「棘上筋(きょくじょうきん)」、「棘下筋(きょくかきん)」、「菱形筋(りょうけいきん)」などです。
肩こりとはこれらの筋肉が疲労してこわばったときに起こる不快感です。

肩こりを起こしやすい動作や作業は、編み物や読書、デスクワーク、パソコン、スマホなどで前屈みの同じ姿勢で、長時間じっと作業や仕事を続けた場合に起こりやすい特徴があります(うつむき症候群と呼ばれることがあります)。筋肉を使うと乳酸などの疲労物質が蓄積してきます。
大きな動きを伴う運動は、血行を促し筋肉から疲労物質を運び去りますが、動きの少なくじっとしたうつむいた姿勢では血行は促進されず疲労物質がたまりやすく、疲労感や不快感を引き起こします。

【図3】 おもな背筋群
図3おもな背筋群

①僧帽筋(そうぼうきん)、②菱形筋(りょうけいきん)、③棘下筋(きょくかきん)、④頭半棘筋(とうはんきょくきん)、⑤頭・頚板状筋(とうけいばんじょうきん)、⑥肩甲挙筋(けんこうきょきん)、⑦棘上筋(きょくじょうきん)

【図4】 項部筋群-その1
図4項部筋群-その1

⑧頭板状筋(とうばんじょうきん)、⑨頚板状筋(けいばんじょうきん)、⑩肩甲挙筋(けんこうきょきん)

【図5】 項部筋群-その2
図5項部筋群-その2

⑪背最長筋(はいさいちょうきん)、⑫頭半棘筋(とうはんきょくきん)、⑬頚半棘筋(けいはんきょくきん)

肩こりの悪循環

1 長時間のデスクワークや悪い姿勢(うつむき症候群)による筋肉のこり(緊張)
2 筋肉のこり(緊張)が続くと、筋繊維中の血管を圧迫して血流障害を引き起こす
3 血流障害は酸素の供給を妨げ、エネルギー源のブドウ糖の不完全燃焼を起こし、乳酸などの疲労物質を生み出す
4 血流障害のために疲労物質が洗い流されずに蓄積しやすくなる
5 乳酸などの疲労物質は、筋肉の神経終末を刺激するようになる
6 神経の刺激は脊髄から脳へ伝わり、大脳で痛みとして認識され痛みの感覚を生じる
7 痛みの感覚に伴って、筋肉内の神経が興奮するために、反射的に筋肉がさらに緊張して硬くなる
 1  のサイクルに組み込まれて悪循環に陥り、肩こりがさらに悪化する

ここまでは骨や筋肉といったからだを支えるしくみを簡単にみてきました。人間のからだは肩こりになりやすくできているわけですが、不思議なことに肩こりは日本人には非常に多いものの、欧米人にははっきりとした肩こりの症状はありません。また肩こりは圧倒的に女性に多くみられます。

一番に考えられる理由は筋力の差です。欧米人は日本人よりも骨格が大きくがっしりとしたからだつきです。さらに筋肉も日本人よりも発達しているために肩こりを起こしにくいと考えられます。からだつきのきゃしゃな女性に肩こりが多いのも同様の理由からです。

年齢別にみると、15歳から24歳という若い年齢から肩こりがつらいという人が多くなってきます。そして30歳前後の働き盛りに入る時期に爆発的に数が増え、その後も少しずつ増えていくのですが、なぜか65歳から74歳の年齢を境に肩こりを訴える人は減少します。肩こりのピークは30歳前後から定年までのハードに働き時期に一致するようです。

高齢になるにつれてデスクワークなどうつむいて仕事をする機会が減り、ストレスから解放されることも理由としてあげられます。骨や筋肉のからだのつくりからみると、高齢になるにつれ組織の老化が進み、筋肉や関節の組織が硬くなるために動きが制限されるようになります。
すると頚椎が安定し、骨や筋肉に負担が加わる大きな動きも自然と減るようになります。こうして肩こりが少なくなっていくと考えられます。老化が肩こりには有利に作用するというのは不思議な事実です。

3)神経

肩こりと神経の関係を理解することは、痛みやしびれの起こる仕組みを知ることにもつながりたいへんに重要です。

脊髄

脊椎が24個重なり合って脊柱をつくります。脊椎椎体の後ろには脊髄の通る空間が上下にできあがります。この空間を脊柱管といい、脊髄はこの中を脊椎により守られるようにして通っています。

◆脊髄のおもな働きは3つあります。◆

  1. 筋肉を動かすための脳からの命令を伝える神経路
  2. 温・痛覚や触覚などの知覚の刺激を脳へ伝えるための神経路
  3. 脳からの命令や伝達とは関係なく起こる脊髄レベルで起こる反射に関与する神経路
【図6】脊髄の断面
図6脊髄の断面

(図6) 脊髄も脊椎と同じように、頚髄・胸髄・腰髄・仙髄と分けることができます。脊髄の断面には特徴的な層状構造がみられます。

脊髄の働きの一つ、筋肉を動かすための命令は脳から脊髄に下向きに伝達されます。運動神経繊維の束になった通り道は皮質脊髄路と呼ばれます。

知覚(痛覚、温度覚、触覚)は、末梢神経(手足やからだにある神経の末端)に加わった刺激が知覚神経を通り、脊髄から脳へと伝達されます。知覚神経繊維の脊髄内の通路は、1.脊髄視床路、2.後索と呼ばれる2つが存在します。脊髄レベルで起こるしびれや痛みはこれら2つの通路の障害で起こります。

脊髄の中では知覚神経繊維は足→腰→手→頚部と順に外側から内側に規則正しく配列しています。したがって、脊髄そのものが脊椎の変形や靱帯の骨化により圧迫されると痛みやしびれといった知覚障害は、足から起こることになります。

神経根

【図7】脊髄と神経
図7脊髄と神経

(図7) 脊髄からはムカデの足のように多数の神経繊維が出ています。これらの神経繊維の働きは運動神経や知覚神経の刺激を伝達するための通路です。

脊髄を出たすぐは、前根と後根という2種類の神経繊維があります。前根は脊髄からの運動神経(皮質脊髄路からの神経繊維)の通路で脳からの命令を伝達します。後根は知覚神経の通路で、脊髄の中では脊髄視床路や後索を上向し、脳に刺激が伝えられます。

前根と後根は短いものですぐに合わさって神経根を形成します。神経根は椎間孔(ついかんこう)という脊椎からの出口にちょうど位置しているため、もっとも圧迫を受けやすい所の一つです。神経根症状は肩こりのしびれや痛みの原因として重要です。 

神経根症状

神経根の圧迫が軽い場合は炎症状態となり、腕や手先に痛みやしびれを感じます。神経根性疼痛といって末梢神経に沿った痛み、いわゆる神経痛(放散痛)を起こしてきます。
頚椎部では後から話す上腕神経痛が、腰椎部では座骨神経痛や大腿神経痛が神経根症状です。神経根症状の多くは、神経繊維そのものではなく、まわりを包む膜に機械的な炎症が生じる結果だといわれています。

頚椎レベルでの神経根症状は痛みのある側に首を傾けたり、後ろにそらせたりすると痛みが誘発されたり、痛みといっしょにしびれが出たり強くなったりする特徴があり、診断は容易です。
ふつうの首や背中の痛みとちがって、神経根圧迫による放散痛はえぐられるようにつらくなることがあります。夜に上を向いて眠ることができなくなったり、歩くときも手をおろしたままでは痛みのために歩けないほどです。

圧迫が強く長く続いて神経繊維そのものがやられてしまうと、神経根性の運動麻痺(筋力の低下)が起こってきます。こうなると事態は深刻です。麻痺が強くなる前、できれば刺激状態である痛みの段階に適切な治療を受ける必要があります。それだけ回復がよいからです。

脊椎-洞神経(椎間板性疼痛)

【図8】脊椎-洞神経(椎間板性疼痛)
図8脊椎-洞神経(椎間板性疼痛)

(図8) 脊柱管内壁の知覚神経は脊椎-洞神経と呼ばれます。脊椎-洞神経は脊髄神経から枝分かれし、交感神経からの枝と合わさった後に椎間孔から脊柱管内に分布します。

この神経は、加齢による椎間板の変性による刺激をキャッチして脊髄に伝達して、肩甲骨周囲の筋肉を反射的に収縮させる点で肩こりと関係が深いと考えられます。またこの神経には交感神経という自律神経も含まれるため、肩こりと自律神経症状の発症に何らかの関係があるのではないかと考えられます。

脊髄後枝内側枝(椎間関節性疼痛)

【図9】脊髄後枝内側枝(椎間関節性疼痛)
図9脊髄後枝内側枝(椎間関節性疼痛)

(図9) 後枝内側枝は神経根から脊髄神経を枝分かれした後にすぐに出る神経で、椎間関節に分布しています。椎間関節に起因する関連痛を肩や背中に放散痛として伝える神経です。

頚部痛や背部痛が起こる直接的な原因としては、脊椎-洞神経と後枝内側枝が関係しています。神経が圧迫される脊椎の部位により頚部から背部に症状の場所に違いが現れます。

脊髄神経

神経根症状を理解するためには神経根から枝分かれしていく末梢神経について知っておくことも重要です。 (図7)

頚椎部分では脊髄から8対の神経が枝分かれしてからだに伸びていきます。神経が枝分かれする部分を神経根と呼びますが、8対の神経根のうち、上の2対は後頭部に、3対目以下は肩・腕・背中などにそれぞれ伸びていきます。(図6)

脊髄も脊椎と同じように、頚髄・胸髄・腰髄・仙髄と分けることができます。脊髄の断面には特徴的な層状構造がみられます。

ⅰ)腕に分布する神経

脊髄から神経根がムカデの足のように枝分かれしています。神経根から先では一本ずつの神経に枝分かれします。頚髄からは上腕神経叢(じょうわんしんけいそう)という神経の束が腕に神経を分布しています。上腕神経叢は斜角筋という筋肉の間を通って、鎖骨と第一肋骨の間からワキの下へとつながり、やがて腕から手先に分布する末梢神経に連なります。

女性のなで肩の人は第一肋骨が水平ではなく斜めになっていることが多く、鎖骨との隙間が狭くなっています。このため腕から手先を栄養している血管とともに上腕神経叢も圧迫されやすくなります。
これを「胸郭出口症候群」といいますが、腕や手の指の先がしびれたり、重だるく冷たく感じたり、腕を高く保つとよけいにこれらの症状が悪化しやすくなります。胸郭出口症候群では肩こりも起こりやすくなります。 

ⅱ)肩と背中に分布する神経

【図10】肩と背中に分布する神経
図10肩と背中に分布する神経

(図10)肩こりは頚椎を左右から支えている僧帽筋や肩甲挙筋、菱形筋、棘上筋、棘下筋などがこわばって固くなったときに起こる不快感です。肩こりでは多くの場合、背中と肩(棘下筋部、菱形筋部、僧帽筋部)を押さえると痛みを感じる部分(圧痛点)を認めます。

これらの圧痛点は頚椎から出た脊髄神経の通り道にあたっています(肩甲上・下・背神経)。神経が浅いところを走っているために圧迫を受けやすくなるわけです。東洋医学でいう「ツボ」に相当する部分です。

これら背部の筋肉のこりが強いとき、神経の圧迫と腕の重さで上腕神経叢が牽引されるなどの理由により、腕や手先のしびれ感を生じたり、歩行時やまた姿勢によって背部に耐え難い痛みを生じることがあります。

このような神経根症状や末梢神経の刺激症状は頚椎の変化とは無関係に起こることがあります。急にゴルフの素振りや運動をして背部の筋肉を強く痛めたときに起こってくるのがその例です。(筋・筋膜の障害)。頚椎レントゲンや頚椎MRIで異常が認められないにもかかわらず、強い神経根症状が起こることが経験されます(筆者の経験より)。

はじめから神経根症状を起こすような頚椎の変形などの原因が隠れている可能性も大ですが、背部筋群の障害を引き金にして、肩甲(上・下・背)神経の圧迫・刺激→反射的な背部筋肉群の一層の緊張→神経根の刺激といった原因もあるのではないかと推測されます。

ⅲ)後頭部に分布する神経

第一頚椎と第二頚椎の間からから出て後頭部に分布する大後頭神経が圧迫されたり、頚部に広く分布している自律神経(後述)が刺激されると後頭部痛(大後頭神経痛)を生じます。後頭部に電気が走るような痛みを感じたり、髪の毛をさわるとビリビリするのは大後頭神経の刺激症状です。

後頭部痛のほかに、首筋の痛みや肩こり、さらには自律神経の刺激の結果、めまいや不安感、頭重感など多彩な不定愁訴を合併することがあります。

自律神経

肩こりの強い人にはめまいや血圧上昇、不安感、頭重感、耳鳴りなどの多彩な不定愁訴を合併することがあります。こうした多彩な症状が「内科からみた肩こり」のおもなテーマになっています。これらの症状が自律神経に深く関係していることは容易に推測できますが、正確な機序となると推測の域を出ません。

肩こりがストレスや生活様式などによる現代病、一種の生活習慣病として捕らえられることが多くなってきました。頚椎の周囲には自律神経の一つ交感神経が発達していて、症状の発現に深く関係しているのではないかと考えられます。

(図7)交感神経は胸椎上部から発して、頚部を上向して頭蓋内に達します。頚部交感神経は椎骨に沿うように頸動脈や頚部の筋肉中を走行しています。こうした位置関係から頚部交感神経の緊張が、頚部の筋肉緊張、椎骨動脈循環不全(後述)などと関係して、肩こり、めまい、血圧上昇、頭重感、耳鳴りなどの症状の発現に関係していると推測されます。

追突事故で頚椎ねんざを受けた人がときとして訴えるめまいも同様の機序で起こり、「バレ-リュウ症候群」として知られています。

図8図9脊椎-洞神経には交感神経が含まれているために、この神経の刺激も自律神経症状の発現に関係しているのではないかと考えられます。

脳神経の一つ、迷走神経も副交感神経(自律神経の一つ)を主成分とし、咽頭・喉頭・口蓋への運動神経も含む混合神経です。迷走神経は頚部を下向きに走って胸部に達します。
副交感神経は血圧の低下、心拍数の減少など、交感神経の作用を押さえるように働いています。今のところ、迷走神経が交感神経ほど肩こりの症状の発現に関係しているという証拠はありませんが、めまいや立ちくらみに何らかの関与をしているかもしれません。 

4)血管

【図11】肩こりと血管
図11肩こりと血管

(図11) 肩こりの症状に血管がどのように関係しているのでしょうか?
しびれや痛みには血管は無関係ですが、めまいや立ちくらみには多いに関係している可能性があります。

頚椎の横、「横突起孔」と呼ばれる穴には脳の延髄などを栄養する椎骨動脈が通っています。椎骨動脈の循環不全は、意識に関係する延髄の酸素不足を引き起こすために軽い場合にはめまい、強くなると失神発作を引き起こすことがあります。立ちくらみや脳貧血による失神は、一種の椎骨動脈の循環不全といえます。

横突起孔が年齢とともに椎骨の変形などによって狭くなると、椎骨動脈が圧迫されるようになり、循環不全を起こすことがあります。また圧迫されないまでも椎骨動脈が刺激を受けて反射的に血管が収縮して血流が悪くなることがあります。生まれつき左右どちらかの椎骨動脈の発達が悪いこともあります。

椎骨動脈循環不全では、特定の首の位置によってめまいが起こる特徴があります。横を向いたり、洗濯物を干すために上を向いたり、洗髪のために仰向けに横になったときに起こりやすくなります。強く首を後にそらすと、誰でも一時的に椎骨動脈の血流が悪くなるので注意が必要です。
このとき頚部の交感神経が同時に刺激されることがあり、めまいが増幅されたり、頭重感や耳鳴り、血圧上昇を伴うことがあります。

5)筋緊張の発生メカニズム

【図12】筋緊張の発生メカニズム
図12筋緊張の発生メカニズム

(図12) 神経末端に加えられた痛み刺激は知覚神経を通して脊髄後根から脊髄に伝えられます。この刺激が痛みとして感じられるには、刺激が上向して脳に伝達される必要があります。

一方、後根から脊髄に入った刺激は、脊髄レベルで前根に入り運動神経を介して反射的に筋収縮を強くします。また交感神経への刺激は、筋肉中の血管収縮を生じて血流障害を起こします。

その結果、筋肉中の老廃物質の運搬が悪くなり、老廃物質が蓄積されやすくなり、このことは筋収縮を一層悪化させることになります。こうして肩こりの悪循環が形成されるようになります。

>>次ページで肩こりと痛み・しびれについて解説します。

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