狭心症は急激な心筋の血流不足が原因で起こる胸痛発作です。
典型的な冠動脈硬化症では、胸痛発作が起こらない場合でも常に心電図で虚血性ST-T変化を伴います。
これは冠動脈硬化により心筋が慢性的な血流不足の状態にあることを示しています(図1、2) 。
これに対して、狭心症は急激な心筋の血流不足が原因で起こる胸痛発作です。
心筋の血流不足はふつうは冠動脈硬化症で起こりますが(労作性狭心症)、一時的に冠動脈がけいれんを起こして細くなって起こることもあります(安静時狭心症または冠れん縮性狭心症)。(図3)
労作性狭心症は、重い物を持ち上げたとき、急いで歩いたとき、興奮したときなどに発作的に起こる狭心症で、じっと安静にするとすみやかに発作は治まります。
労作性狭心症は運動時など、高度の冠動脈硬化症が原因で血流が不足するために起こる発作です。心筋梗塞を起こしやすい危険な狭心症です。
安静時狭心症(冠れん縮狭心症)も多くみられます。
早朝の決まった時間に胸痛を生じます。運動や興奮とは関係なく、安静時に突然発作が起こり、30分近くまたはそれ以上の長時間胸痛が続きます。
毎日発作が続いた後に、自然に発作は起こらなくなります。
安静時狭心症は冠動脈のけいれん性の収縮(冠れん縮)が原因で起こり、心筋梗塞は起こりにくい特徴があります。
心電図では、労作性狭心症はST部分の水平降下、安静時狭心症ではST上昇が起こります。
発作が治まるとST部分は基線に戻るのも特徴です。
正常でも心拍数が増えるとST部分が降下します。この場合は水平な降下ではなく、右上がりの降下なので区別は比較的簡単です。(図4、5)
労作性狭心症は冠動脈硬化が進行して起こる胸痛発作なので、非発作時でも運動負荷心電図を記録すると特有な水平降下を生じやすくなります。
これに対して安静時狭心症は非発作時は冠動脈は正常なので、運動負荷心電図では異常は示しません。(図6)
運動負荷心電図陽性例では、ST降下は水平か右下がりです。
正常でも運動により心拍数が増加するとST降下を生じることがあります。
これは運動により冠動脈硬化症による血管狭窄がなくても、相対的な血流不足を起こすためです。この場合は右上がりのST降下を示し、運動負荷陰性と判定します。(図7)