心電図は心臓に流れる電流を記録したものですが、この電流を異なる12方向から記録した波形が12誘導心電図です。
12誘導心電図では、電流の変化を詳しく解析できること、部位診断が正確にできるなどのメリットがあります。
手足につけた電極から記録される心電図を四肢誘導、胸部につけた電極から記録される心電図を胸部誘導といいます。
12誘導を理解する上で電極を人間の目にたとえて考えると便利です。
電極を付けた方向から心臓を眺めると想像してください。
電流が電極の方に向かってくるときは上向きのR波が、電極から遠ざかるときは下向きのQ波やS波ができます。(図1)
point point電流が向かってくるときは上向きの波、遠ざかるときは下向きの波!
左手首につけた電極は左肩に電極をつけるのと同じで、左上から心臓を見おろすことができます(Ⅰ、aVL)。
同様に右手首につけた電極は右上から心臓を見おろします(aVR)。
足首につけた電極は心臓を下から見上げています(Ⅱ、Ⅲ、aVF)。
胸につけた6個の電極からは、心臓を水平に横から眺めることができます。
右からV1から順にV6まで心臓を水平方向に場所を変えながら心電図を記録します。
12誘導心電図は病変部位を明らかにする目的があります。
心臓は左室の働きが重要で、左室側壁、左室下壁、心室中隔、左室前壁に分けて病変部位を診断します。
point pointⅠ、aVL ➡ 左室(高位)側壁、
Ⅱ、Ⅲ、aVF ➡ 左室下壁、
V1からV2 ➡ 心室中隔、
V3からV4 ➡ 左室前壁、
V5からV6 ➡ 左室側壁
左室肥大は心室中隔や左室側壁で記録しやすく、深いS波(V1、V2)と高いR波(V5、V6)が特徴です。
心筋虚血や心筋梗塞では、血管の病変に応じて左室側壁、左室下壁、心室中隔、左室前壁のいずれかに、ST-T変化が現れます。右室梗塞はまれですが、aVRに異常が現れます。
左室下壁→右冠動脈、心室中隔→左冠動脈前下行枝、左室前壁→左冠動脈本幹、左室側壁→左冠動脈回旋枝 の冠動脈病変が分かります。