最後に、名前の付いた心電図の変化を見ていきましょう。
正常房室伝導路とは別に房室副伝導路(Kent束)が存在するために、より早期に心室興奮を生じます。PR時間短縮(PR ≦ 0.12秒)とデルタ波が特徴です。発作性上室頻拍をきたす例があり注意が必要です。
頻拍発作の既往の有無をよく聞き、必要に応じてホルター心電図、心エコー(心筋症、WPW症候群B型の場合エプスタイン奇形の可能性に注意)を施行します。
大多数は良性ですが、まれに死亡例も報告されています。発作頻発例や発作時循環不全をきたす例は、電気生理学的検査さらにはカテーテルアブレーション目的で病院に紹介します。
不整脈が原因で心停止を起こして失神発作を起こしそうになることがあります。
このような不整脈としては、高度房室ブロック、洞不全症候群(心房細動や洞房ブロック、洞停止も含まれます)、心室頻拍症、心室粗・細動などがあります。
失神発作を起こすと危険で、急死の危険性も伴います。
中年の女性にみられる胸痛発作と運動負荷心電図の異常です。狭心症に似た前胸部痛のこともあれば、狭心症とは異質な胸痛を頻回に訴えることがあります。
安静時心電図では異常がみられませんが、運動負荷心電図を行うと一見負荷陽性と思われる虚血性ST-T変化を生じます。しかし、心筋シンチグラムや冠動脈造影検査では異常を見いだすことはできません。
先天的QT延長症候群の中には、先天性聾(唖)を合併しないRomano-Ward症候群と合併するJervell-Lange-Nielsen症候群があります。
心電図では共通してQT延長が認められ、心室性不整脈から突然死をきたすことがあります。
Romano-Ward症候群は先天性QT延長症候群のうち,先天性聾唖を伴わないものです。
遺伝形式は常染色体優性遺伝の形をとります。
右側胸部誘導(V1-3)のいずれかでJ点あるいはJ点から40msecで0.2mV以上のST上昇かつ波がcoved型またはsaddle-back型を示します。右脚ブロック様所見(late r' の小さい場合を含む)をしばしば認めますが不可欠ではありません。
本症候群にみる失神発作は心室細動に由来し、突然死をきたすものがあるので注意が必要です。安静時または睡眠時に不整脈発作がおこる傾向あります。
一般に中年以降の男性に多くみられ、学童ではそれほど多くはありません。
Brugada型心電図(Brugada様心電図)波形を呈している例では、家族歴や失神発作の既往の有無を聴取することが大切です。
QRS波形と振幅が周期的に変化する特殊な心室頻拍です。種々の原因によるQT延長に伴って出現します。短時間で自然停止することもあるが、心室細動に移行し突然死することもあります。
抗不整脈薬、向精神薬、抗ヒスタミン薬、消化管運動促進薬、抗生物質(マクロライド系)などに含まれる一部の薬剤の副作用としてQT時間延長が現れることがあります。
とくに抗不整脈剤はQT時間延長を起こすものが多くあり注意が必要です。