足の静脈瘤は静脈といわれる血管が太くこぶのように浮き上がってきて、足がだるくなって立っているのがつらくなったり、足のむくみを起こす血管の病気です。
一日中立ち仕事をする人や妊娠経験のある中高年の女性に多くみられます。
足の表面近くには、太ももから足首にかけて走る大伏在静脈とひざから下のふくらはぎに沿って走る小伏在静脈と呼ばれる2本の太い静脈があります。
静脈は動脈によって心臓から足に送り込まれた血液を、再び心臓に送り返す役割があります。
静脈の所々には血液が逆流しないように弁が付いています。弁は太ももだけでも数カ所以上あります。
長年立ち仕事を続けていたり、妊娠によって足の静脈の流れが圧迫されると、静脈の弁の働きが悪くなって血液が逆流を起こすようになります。
こうなるとふくらはぎのあたりの血管にこぶができ、見た目にも気になるようになってきます。
初めのうちは足がだるい、むくむなどの症状が起こりますが、やがて静脈が青黒く浮き上がってきます。(写真1)
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静脈瘤の部分は血流が悪くなるために、長くたつと色素沈着、かぶれ、湿疹、治りにくい潰瘍などの皮膚の変化が起こってきます。
時には静脈瘤が炎症を起こして、赤くはれ痛みを生じてきます(血栓性静脈炎の一種)(写真2)。
冬は血管が収縮するために静脈瘤の症状は軽くなりますが、夏は血管が拡張するためにこれらの症状ががひどくなりやすく、中年以降の女性を悩ますことになります。
最近、足の静脈瘤の人はエコノミー症候群を起こしやすいことが指摘されています。
長時間飛行機に乗ってじっとしていると、足や骨盤内の血液が固まりやすくなり(血栓)、立ち上がった際に血栓が血流に乗って肺に移動し、肺の動脈が詰まって肺塞栓症を起こすことがあります。
足の静脈瘤の人では静脈瘤に血液がたまりやすく血栓ができやすいので、エコノミー症候群になりやすいと言われています。
静脈瘤の治療としては軽いうちは、ゴム入りの圧迫ストッキングで足を締め付けるとむくみやだるさには効果が期待できます。
夏場暑いのと一時的な効果しかありませんが、静脈瘤の進行を遅らせることができます。
昔から根本治療としては手術で静脈を抜き取る方法が主流を占めてきました。
足の静脈は内部に別の深部静脈があるので、表面の2本の表在静脈をそっくり抜き取っても問題はありません。
静脈を抜き取らず、くくる方法もあります。深部静脈にも異常がある場合には手術はできません。
硬化療法は血管の中に血液硬化剤を注入し、そっくり血管を固めてしまう方法です。
あらかじめ足を上げた状態に保ち、血液を押し出し静脈をへこませてから硬化剤を注入するという簡単な治療法です。
軽度の静脈瘤に適していますが、ある程度進んだ静脈瘤では硬化療法だけでは治りにくく再発しやすいだけでなく、血栓が流れて肺塞栓を起こす危険性も指摘されています。
足の静脈瘤は一度できると治ることはありません。
飲み薬で効果的なものは見あたらず、圧迫ストッキングを着用して進行を予防させることが望ましいでしょう。