就寝中に意識があるのに、からだが硬直して動かない。
こうした金縛り(睡眠まひ)は悪夢とともに、不快感や恐怖を伴います。
「霊の仕業」などと思いがちですが、寝入りばなに起きやすい生理現象です。
金縛りはそれほど珍しくはなく、海外の調査では一度でも経験しているのは成人の20~50%を占めます。日本では高校生に調査したところ、約30%が金縛りを一度は経験していました。男女差はあまりありませんでした。
金縛りを最初に体験する時期は中学時代がほぼ半数で、受験や対人関係の悩みが急増して、生活や睡眠週間が大きく変化する思春期に起き始めているようです。
月に1回以上金縛りを経験している人は、十人に一人ぐらいですが、眠っているときに見るいやな悪夢はそれよりも頻度は多く起こります。外国の各種の調査によると、月に1回以上、悪夢を見る人は約30%で、女性が男性よりも多く起こりました。悪夢と金縛りは互いに関係していると推測されています。
金縛りや悪夢は、強いストレスを受けたり疲れたりして、精神面での健康状態が低下すると起こりやすくなります。寝付きが悪く、途中でよく目が覚めるなどの不眠症とも深く関わっています。
専門家は、「ストレスの緩和を心がければ予防は可能です。金縛りを経験する人は睡眠時間が短い傾向があり、規則正しい生活をするなど不眠症を予防する対処法が、金縛りを減らすのに役立つのではないでしょうか」と話しています。
逆に、金縛りや悪夢で目がよく覚め、熟睡が妨げられて睡眠不足になるケースも多く、睡眠健康問題の一つとみる必要もあります。しかし、発生の詳しい仕組みは分かっておらず、治療薬はありません。
悪夢に悩む人は全国に何百万人もいると思われ、悪夢を無毒化する技術が開発できないものかと問題が提起されます。個人でもある程度は対処可能です。一度金縛りに遭ったり、誰かに追いかけられているような悪夢を見たりすると、「この先、恐ろしいことが起こる」とつい怖がってしまうことが少なくありません。
金縛りや悪夢にあっても、変な意味づけをして過剰に反応しないようにと専門家は警告します。重大に受け止めると、かえって日中のストレスが増す恐れがあり、寝る前にリラックスして気楽に過ごし、ストレスを少し和らげてから寝る工夫をすることが予防に役立ちます。
もっとも、金縛りや悪夢を頻繁に経験して何回も目が覚め、夜中に暴れたりするような重症の場合には、軽視しないで専門家の診察が必要となります。