しゃっくりは肺を動かして呼吸させる横隔膜が強く収縮して、息が早く吸い込まれるのと同時に、声帯が急に閉じることによって起こります(声門閉鎖を伴う呼吸筋の繰り返し起こるけいれん)。
どうしてしゃっくりが起こるのか?しゃっくりの役割は明らかではありませんが、生物が陸に上がりえら呼吸から肺呼吸に切り替わる過程で、肺に水が入らないように気管をふさぐ仕組みの名残という説があります。
しゃっくりをする時には「ひっく」という音が出ます。「ひっ」は声帯が急に閉じようとする時の声帯の振動音で、「く」は声帯が閉じて息が止まった時の音と考えられています。
どうして横隔膜の収縮と声帯の閉鎖が同時に起こるのでしょうか?
しゃっくりの指令センターである延髄のしゃっくり中枢に刺激が与えられて起こると考えられています。
炭酸飲料を飲む、あわてて食べる、激しく笑う、せきをする などの刺激がのどに分布する舌咽神経から延髄のしゃっくり中枢に伝わります。延髄は、①横隔神経を通して横隔膜を収縮するように、②迷走神経を通して声帯を閉じるように、同時に命令を出します。こうしてしゃっくりが起こることになります。
ただし、こうした刺激で常にしゃっくりが出るわけではありません。延髄のしゃっくり中枢は、ふつうはGABA(ギャバ)と呼ばれる神経伝達物質により、しゃっくりが出ないよう脳から抑制を受けています。
この抑制よりも刺激が強くなるとしゃっくりが起こるようになります。一度起きると止まりにくいのも特徴です。
GABAによる抑制を減らす例としては、飲酒や一部の薬の服用などがあげられます。また子どもは大人に比べて発達が未熟で、GABAによる抑制がきかず、しゃっくりがおこりやすくなります。
しゃっくりの起こる原因についてもう少し考えましょう。
しゃっくりは延髄のしゃっくり中枢、横隔神経、舌咽神経のほか迷走神経、交感神経などの間の神経反射によって起こります。脳腫瘍や脳卒中があると、しゃっくりが現れることがあります。
その他の脳神経疾患でも起こる可能性があります。脳が刺激されて起こるしゃっくりは止まりにくい特徴があります。
迷走神経は心臓や胃などの消化管、のど(咽頭や喉頭)に広く分布しています。迷走神経に関係したしゃっくりの多くは胃に関係したもので、胃液の逆流、急性胃炎、胃潰瘍、胃がんなどです。中でも胃液の胃食道逆流症は持続性のしゃっくりの原因の50%以上を占めるとも言われます。
48時間以上しゃっくりが続く場合、あるいは睡眠障害を伴う場合は基礎疾患を精査する必要があります。おもな持続性のしゃっくりの原因は次のようなものが考えられます。しゃっくりが長引く場合にはその原因を詳しく調べることが大切です。
持続性しゃっくりの原因 | |
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中枢神経疾患 | 脳血管障害、脳炎、頭部外傷 |
迷走神経・ 横隔神経刺激 |
咽頭炎、甲状腺腫、横隔膜下膿瘍 |
胸部疾患 | 肺炎、肺癌、縦隔腫瘍、リンパ節腫脹 |
心血管疾患 | 心筋梗塞、心外膜炎、大動脈瘤 |
消化器系疾患 | 胃食道逆流症、食道癌、胃拡張、消化性潰瘍、 胃癌、肝炎、肝癌、胆嚢疾患 |
代謝性疾患 | アルコール |
薬剤性 | ジアゼパム、バルビツール酸系薬、 デキサメタゾン、オピオイド |
しゃっくりは自然に止まるので気にせず待てばよいのですが、会議や宴会であいさつをしたり、半日ほど続いて不自由を感じる場合には何らかの刺激を与えると止まりやすくなります。
即効性のある止め方としては、昔から誰かに驚かしてもらう方法がありますが,その他に①人差し指を両耳に強く入れて30秒ほど押す、②舌を30秒ほど引っ張る方法があります。
どちらも舌咽神経にしゃっくりを止める刺激が入ると考えられます。