更年期の女性が訴える胸痛の原因として「微小血管狭心症」が多いことは意外に知られていません。女性ホルモンの減少が原因と考えられています。
就寝前など安静にしたときに、胸が締め付けられるような激しい痛みが起こります。胸痛は就寝時など安静にしたときに起こりやすい特徴があります。検査では異常が見つからないため、気のせいにされて、あちこちの病院を受診するケースも少なくありません。
女性ホルモンのエストロゲンには血管を広げる働きがあります。更年期になるとエストロゲンが減少するため、血管が収縮しやすい状態になります。このためストレスが加わったときなどに心筋の細い血管が収縮して、胸痛を起こすと考えられています。
心臓の太い血管が急に収縮して起こる狭心症には、冠攣縮性狭心症というものがありますが、これは男性に多く、早朝に起きやすいのと対照的です。
40~60歳代の女性の約14%が、微小血管性狭心症と思われる胸痛発作を経験すると言われています。しかし、多くの例では診断がつかないまま、あちこちの病院を訪れているケースが多いと専門家は指摘しています。
狭心症の治療で一般的に使われるニトロ製剤の有効性が低いことも、「狭心症でない」と考えられがちな原因の一つです。ニトロ製剤はある程度以上の太さのある血管には作用しますが、微小血管狭心症に関係の深い細い血管には作用しにくいことが、この原因として推察されています。
異常なしと診断されても胸痛はあるので不安が募り、うつ状態になる人もいます。心電図検査や心臓カテーテル検査などをしても異常が発見されないので、気のせいにされているケースも多くあります。このため、あちこちの病院を受診するはしご診療を重ね、悪循環に陥ることもあります。
微小血管狭心症はあまり知られていないため、まずこういう病気があることを理解することが大切です。そして、検査で異常がないと診断されても胸痛が続くような場合は、塩酸ジルチアゼム(商品名ヘルベッサー)やベラパミル(商品名ワソラン)などのカルシウム拮抗薬を試して効果があるか調べます。
これらの薬は心筋の細い血管を拡張する作用があり、この病気に対する有効性が認められています。服用して胸痛が改善すれば、微小血管狭心症だという診断になります。
微小血管狭心症はとくに日本人に多いことがわかってきました。心身の過労や不眠、寒冷などが誘因になりやすいので気をつける必要があります。
逆流性食道炎や更年期のうつ症状として胸痛が起こることもあるため、これらの病気の除外も必要です。 (図1)
↓こちらもご覧ください。