膀胱炎はとくに女性に多い病気です。
膀胱炎は排尿時の不快感や痛み、頻尿、残尿感などの症状を起こしてくるので自分でも気がつきやすい病気の一つです。膀胱炎の診断はこれらの自覚症状に加えて、尿検査で赤血球が混じってくることから診断できます。(図1)
女性は尿道が短い上、外陰部は膣(ちつ)からの分泌物などによって湿っており、しかも肛門と接しています。そのため細菌が尿道を通じて膀胱内に侵入しやすく、炎症を起こすとされています。
膀胱炎になったきっかけを尋ねると、過労、腰を冷やした、かぜをひいた、げりや便秘、水を飲まずにがまんした、汗をよくかいた、尿意があるのにがまんしていた などの答えが返ってきます。
膀胱には細菌が常在している可能性が大きいのですが、ふつうはある程度膀胱内で増えても、排尿とともに排出されてしまうし、膀胱粘膜は感染に対して防御機能が働き、炎症を起こすことはないようです。しかし、膀胱粘膜に浮腫、うっ血、傷などができると膀胱内で細菌が増えて粘膜に侵入、炎症が発生します。
膀胱炎が再発を繰り返すようになり、半年に数回も起こるようだと慢性化が疑われます。尿検査を行っていると、自覚症状がないにもかかわらず尿中に多数の細菌が認められることがあります。
尿中に細菌があるからといって、膀胱粘膜に炎症が起こっているとは限りません。炎症の証拠としては赤血球の混入があれば急性、白血球の混入があれば慢性の膀胱の炎症が疑われることになります。
慢性の膀胱の炎症が持続しているとさまざまなきっかけで炎症が増悪し、自覚症状を伴った膀胱炎を繰り返してくると考えられます。
(注意)急性腎盂炎では、高熱とともに尿中に白血球が著しく増えてきます。詳しくは、家庭の医学-大人-膀胱炎とじんう炎 をご覧ください。
膀胱炎を繰り返しているとき、原因となっている病気がないか十分に検討してみる必要があります。子宮や卵巣の腫瘍などが原因で、膀胱が圧迫され膀胱炎を繰り返していることがあります。
また、大腸ガンが膀胱に浸潤し、交通を生じて膀胱炎を繰り返したり、膀胱憩室といって膀胱にポケットを生じて膀胱炎を繰り返している例もありました。
治療としては、抗生物質を常備し、症状が現れたらすぐに薬を飲むのも良いでしょう。就寝前に少量の抗生物質を服用する方法もあります。しかし、抗生物質の乱用は耐性菌の出現につながりやすく、注意が必要です。
尿中の常在菌、とくに高齢者や術後の患者に現れる慢性の尿路感染では、薬剤に耐性を持っているものが多く、治療に困難を生じます。抗生物質で尿がきれいになったと思われても、しばらくすると再び尿中に混濁を生じてきます。健康人の繰り返す膀胱炎も、このような原因が関係しているものと推測されます。
予防としては、ふだんから利尿を心がける必要があります。しかし利尿剤や利尿効果がある民間治療は勧められません。体に大切なカリウムなどをいっしょに排出してしまう可能性があるからです。
冷えや疲労に気をつけ、水分摂取を心がけましょう。膀胱炎は夏季に多くなる印象があります。この理由は、発汗などで尿量が少なくなり、尿が濃くなるからと考えられます。
膀胱炎は多少時間がかかっても、水分をたくさんとり下腹部を温めるだけでも自然治癒することが多いようです。しかし、このような治し方を繰り返していると、細菌が住み着いてしまい慢性膀胱炎の原因になったり、膀胱炎の症状はなくてもふだんから尿中に細菌や赤血球、白血球を認めることになってしまいます。
健康診断などで検尿を行うと、中年以降の女性の三人~四人に一人くらいの割合で潜血の陽性を認めるようになります。この多くは病気とは関係ないのですが、このような原因で潜血陽性例が増えてくるのではないでしょうか。
20~30代の比較的若い女性が、尿の回数が多くなった(頻尿)ために受診されることがあります。膀胱炎のような排尿時の痛みや残尿感、不快感などはなく、20~30分ごとに尿意を生じます。
実際は尿がたまっていないため、トイレに行ってもほとんど尿はでません。尿検査でも混濁は認められず、腹部超音波検査でも子宮や卵巣に異常は認められません。
こんなときにはストレスや精神的な原因で、膀胱が過敏になっているのではないかと推測されます。
頻尿はつらいため、トイレに行ってもまた行きたくなるのではないかと心配になり、緊張感のためにまた尿意が起こってきます。悪循環に陥るわけですが、抗不安薬や自律神経調整薬を飲むと良くなることがほとんどです。