痛みの強い発疹で知られる帯状疱疹は、高齢化により確実に増加しています。
帯状疱疹と診断がつくまでの7日間くらい、ピリピリ・チクチクとした痛みが先に続くことがあります。神経痛のようなこの痛みは、後頭部や顔、体の背面から胸・腹部、またお尻から足にかけて片一方だけに起こるのが特徴です。
この時期には発疹は出ていないので帯状疱疹と診断することは困難ですが、風呂上がりなどにニキビに似た発疹が出てこないか注意します。
帯状疱疹は80歳までに3人に1人が経験すると言われますが、症状は人によって異なります。帯状疱疹の原因は帯状疱疹ウィルスです。水ぼうそうのことを水痘と呼びますが、帯状疱疹ウィルスと水痘ウィルスは同一です。
初めて帯状疱疹ウィルスに感染すると水痘を発症します。水痘が治るとウィルスは消えてなくなるわけではなく、脊髄神経節と呼ばれる場所に潜んで休眠します。
その後加齢やストレス、疲労などで「細胞性免疫力」と呼ばれる免疫力が低下すると、脊髄神経節に潜伏・休眠していたウィルスが再活性化し、神経に沿って増えていきます。これが帯状疱疹で、ピリピリとした神経痛を伴います。
小児の帯状疱疹では痛みは軽度ですが、年齢が上がるにつれて痛みは強くなる傾向にあります。小児期に獲得した免疫も徐々に低下していくため、50歳以上では年間100人に1人発症すると言われます。
帯状疱疹の危険がある水痘の感染者は成人の9割を超えています。細胞性免疫は50歳ごろから加齢とともに低下するため、高齢化が進むにつれて帯状疱疹はますます増加します。
帯状疱疹で困るのは、発疹が治っても神経の損傷が残るため帯状疱疹後神経痛PHNが少なくないことです。細胞性免疫が低下するとPHNになりやすく、症状も重くなることが分かってきました。
今後、帯状疱疹が増えると予想される背景にはもう一つの要因があります。2014年10月から水痘ワクチンが定期接種になり、それまで毎年約100万人発生していた水痘が激減しました。
これ自体は喜ばしいことですが、子どもに水痘が流行することで、成人の免疫が刺激されて帯状疱疹の発症が抑えられてきたとも考えられています。これが全国的な傾向なら、高齢化と相まって帯状疱疹はさらに増えるはずです。今後注意深く見守る必要がありそうです。
帯状疱疹の治療は抗ウィルス薬の登場で大きく進歩しましたが、早期の治療開始がたいへん重要です。発疹が出て3日以内に服用を開始することが望ましいとされますが、様子を見ていて悪化するケースも少なくありません。
水痘ワクチンは2017年3月から50歳以上の帯状疱疹予防にも効能が追加されました。米国で販売されている同等のワクチンでは、接種後少なくとも3年までは帯状疱疹を半減させたとのデータがあります。効果の持続期間や年齢による効果の違いなどが、今後の検討課題となりそうです。
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