たかが肩こり、されど肩こり。肩こりでお困りの方は多いと思います。
筋肉のこりが肩だけにとどまっていると、そんなに辛くはないのですが、肩の筋肉は首筋や胸・背中につなっがているため、肩こりが原因で多彩な症状が起こってきます(図1)。
首筋の筋肉のこりが強くなると後頭部が重くなるだけでなく、毛髪の生えぎわのところには、神経の通り道があるためこの神経の刺激症状が出てきます(図2)。
片一方の後頭部にときどき電気が走るような痛みが急に起こったり、毛髪をさわるとピリピリした感じが起こることがあります。
このような後頭部の神経の刺激症状は首筋のこりが原因で起こる場合と、こりとは関係なく原因の神経痛として起こる場合とがあります。両者では治療方法が異なってきます。
首筋がこりが強くなってくると、連鎖反応で頭の筋肉がこりやすくなります(図3)。
頭の筋肉のこりは緊張型頭痛といわれる頭痛を起こしてきます。この頭痛は頭を重たく感じたり、時にはズキズキするはげしい頭痛を起こしたりしますが、何日も続きやすい特徴があります。
頭の一部が痛くなることがあるため片頭痛と間違われることがありますが、片頭痛では寝込むくらいの強い頭痛が発作的に起こり、半日くらいたつと軽快します。
緊張型頭痛は朝起きた時から起こることも、疲れのたまる夕方から起こることもありますが、寝込むほどではありません。
緊張型頭痛は一般の鎮痛薬が効きにくいことがありますが、そのような場合には鎮痛薬に加えて筋肉の弛緩剤や抗不安薬(これも筋肉の弛緩作用があるものを使用します)を併用すると効果が出やすくなります。
また目頭が重たく感じたり、昼間から眠たく感じたり、目がボーと感じやすくなるのも、肩こりが強いときの特徴です。時には目の奥に強い痛みを感じることもあります。
肩こりだけでなく、目の疲れ(眼精疲労)でも同様の症状が起こりますが、この痛みは目の周囲に走っている神経の刺激症状が原因と思われます。
肩こりが強くなると歯ぐきが浮いてくることがありますが、これも歯ぐきに走っている神経の刺激症状が原因と思われます(正座をした後に、足のしびれが切れるのと同じです)。
また頭の筋肉のこりが強くなると、ふわふわとしためまい感を起こしやすくなります(図3,4)。
ちょうど雲の上を歩いているような感じで、ときにはフーと感じたり、まっすぐに歩いているつもりでもどちらかに傾くような感じが起こることもあります。
このようなふわふわした感じや頭痛などが筋肉のこりが原因と診断するためには、高血圧や脳の病気などがないかどうか、専門の医師により診察と検査を受けておく必要があります。
肩の筋肉は胸や背中にもつながっています。したがって肩こりが強くなると、これらの筋肉のこりが強くなります(図1,2)。
胸や背中に筋肉のこりが強くなると、胸の圧迫感を生じるようになります。こうなると息苦しく感じたり、心臓が悪いのではないかという不安を感じるようになります。
また全身の倦怠感や微熱、朝起きづらいなどの多彩な症状が起こってきます。
以上のように、肩こりが強くなると首筋や頭の筋肉のこり、さらには全身の筋肉のこりを起こしていろいろな症状を起こしてきます(図1)。こうなると体のどこかに病気があるのではないかと不安感が強くなってきます。
適切な診察や検査の結果、他に異常がないときには筋肉のこりを軽くするような治療を受けると、このような症状は良くなってきます。
■[特集]内科から見た肩こり で、肩こりの原因を解剖の知識から詳しく述べていますのでご覧下さい。