神経調節性失神はあまりなじみのない病名ですが、一般には脳貧血と呼ばれ、原因不明とされている失神の大半を占めるほど多いものです。暑くなるこれからの季節は、脱水などが誘因になるのでとくに注意が必要です。
一般に失神は、脳に血液が充分回らず、一時的に意識を失うため起こりますが、神経調節性失神は「神経の反射で引き起こされる一過性の意識消失発作。脈拍数が少なくなる徐脈や、末梢血管の拡張に伴う血圧低下が原因となって脳の血流が一時的に途絶えて失神を起こす」と考えられます。
この失神は満員電車で長時間立っているときに起こりやすいです。このほか長い間座ったままの姿勢でいるとき、排尿や排便、脱水、発熱、痛み、飲酒なども誘因になります。
また、失神の前兆として約八割に気分が悪い、吐き気がする、動悸がする、汗が出るといった症状が見られます。がまんをしていると、めまいや目のかすみが現れたり、顔面が蒼白となり、意識を失って倒れます。
神経調節性失神にはこうした特徴がありますが、似たような失神発作として、立ち上がったときに血圧が下がりすぎて起こる起立性低血圧があります。
飲酒して一眠りした後、目を覚ましてすぐに歩き回ったときなどに起こりやすくなります。
夜中に起きて、排尿中や排尿後に倒れる排尿失神もあります。これは排尿により一時的に血圧が下がる神経反射が原因で起こり、男性に多く見られます。
失神は不整脈や脳血管障害、てんかんなど他の病気で起こることもあります。万が一、気を失ったときには、専門の医療機関で原因を調べてもらうことが大切です。
神経調節性失神と診断が付けば、失神の誘因のうち避けられるものは避けるようにすることが大切です。
また、前兆となる症状に気づいたときには、仰向けになって足を高く上げると血圧も正常になります。少なくとも椅子に腰掛ける、横になることが必要です。
こうした注意をしていても繰り返すようなら血管を収縮させる作用のあるα(アルファ)刺激薬などを使った治療が必要になります。