かぜをこじらせて鼻づまりが強くなると、口をあけてしか息ができなくなり大変に苦しいものです。
花粉症のシーズンともなるとくしゃみや鼻水とともに鼻づまりは頭痛のたねです。
鼻づまりは誰でも日常よく起こる症状の一つです。
鼻の中の空間を鼻腔といいますが、鼻腔の通気性が低下して鼻呼吸が十分に行えなくなると鼻づまりです。
鼻から吸い込まれた空気は、鼻腔では上方に円を描くように流れて後方に向かいます。
息を吐く時には逆の流れが起こります。
(図1)鼻腔は表面積を大きくするために、上・中・下鼻甲介という突起物が出ていますが、このために鼻腔の断面積は小さくなっています。
したがって鼻粘膜のわずかなはれや少量の鼻水でも、鼻呼吸の気流は妨げられ、鼻づまりを起こすことになります。
ふつうでも鼻粘膜は、約3時間毎に左右交互に腫脹を繰り返しています。
しかしこの程度の腫脹では鼻づまりを自覚することはありませんが、これを超える腫脹があったり、鼻水の出現、鼻腔内の形の異常があると鼻づまりを起こします。
鼻づまりを起こす原因として、(1)鼻粘膜の腫脹と(2)鼻腔内の形の異常がおもなものです。
鼻粘膜の腫脹は、かぜやアレルギー性鼻炎(花粉症も含まれます)の際に起こるもので、細い血管の拡張や血管透過性亢進(この結果、血液の水成分が血管外に漏れ出てきます)によって生じる浮腫により起こります。
鼻腔には鼻甲介と呼ばれる突起物があるため表面積は大きいものの断面積は小さくなっています。
このため浮腫があると容易に鼻づまりを起こします。
(図2)急性副鼻腔炎(急性のちくのう症)では鼻づまり、うみのような鼻水、頬や上あごの痛み、眼や眉間の奥の痛み、頭痛を起こしてとても不愉快になります。
慢性副鼻腔炎(ちくのう症)では、痛みはそれほど強くはありませんが、頑固な鼻づまりが起こります。
そのため、子どもでは集中力がなくなり、口で息をするためポカンと口を開けてぼんやりとした表情になります。
副鼻腔の感染が起こると鼻腔の中で鼻たけといわれるポリープが急速に成長することがあります。
アレルギー性鼻炎や花粉症があると鼻粘膜の浮腫により鼻づまりが起こりやすくなりますが、鼻を通すために点鼻薬を常用していると、鼻粘膜の肥厚を起こして慢性的な鼻づまりを生じることがあり注意が必要です。
また、アレルギー性鼻炎が続くと、鼻水が副鼻腔にたまりやすくなり、二次的に細菌感染を起こして急性副鼻腔炎を起こすことがあります。
朝冷気を吸い込むと、急にくしゃみ・鼻水・鼻づまりを起こすことがあります。
これはアレルギー性鼻炎とは異なり、血管運動性鼻炎といわれるものです。
何かのアレルギーのかわりに冷気、タバコの煙、香料などに鼻粘膜が過敏に反応して症状が起こるもので、その人の体質によると考えられます。
これに対して鼻腔内の形の異常は、鼻の構造的な問題で起こる鼻づまりです。
鼻腔は薄い軟骨と骨でできた鼻中隔で左右に分けられていますが、この鼻中隔が変形して鼻づまりを起こしているのが鼻中隔わん曲症です。
鼻中隔わん曲症は以前に受けた外傷によることが多く、古いものであったり子どものころであったりして、覚えていないことが多いようです。
中学生やそれ以上の年齢で、いつも片方の鼻だけがつまっているようなら鼻中隔わん曲症が疑われます。
日本人のほとんどは少し骨が曲がっているといわれていますが、アレルギー性鼻炎やその他の鼻疾患があるとよけいに鼻づまりがひどくなりがちです。
高血圧症の治療で降圧薬を服用していると、鼻がつまることがあります。
血圧を下げるため血管拡張作用のある薬では、鼻粘膜の血管も拡張し鼻づまりを起こすことがあります。
高齢者が鼻づまりを訴える時には、常に鼻・副鼻腔・上咽頭の悪性腫瘍を考える必要があります。
子どもの鼻づまりについて詳しくは本HPをご覧下さい。
家庭の医学-子ども-鼻水、鼻づまり
かぜをひいた時に起こる鼻づまりや鼻水は鼻粘膜の浮腫によることはすでに述べましたが、鼻水の色変化について少し考えてみましょう。
かぜをひいた時、無色透明の水ばなから白色、黄色、緑色と変化していくにつれ、鼻水も粘っこくなります。このため鼻水の色が緑になり粘っこくなると鼻かぜが治ってきたと誤解されることがあります。
一般的にはかぜの原因は何種類かのウィルスで、鼻粘膜にウィルスが侵入すると血管拡張と浮腫(いわゆる炎症反応)が起こります。
炎症部位では血管が拡張し、血管壁の透過性が亢進するため血液の水成分が漏れ出てきます。
これが水ばなで、かぜの初期やアレルギー性鼻炎、花粉症でみられる鼻水です。
ウィルスに感染すると、鼻粘膜の抵抗力が落ちるため細菌感染にもかかりやすくなります。
さらに鼻水自体タンパク質に富んでいるため、容易に最近の増殖が起こります。そうすると細菌や炎症反応ための白血球、鼻粘膜の一部などが鼻水に混じることになり、色が黄色からうみのような緑色に変化していきます。
鼻の奥と副鼻腔に細菌感染を起こすと、副鼻腔炎となりいろいろな症状が起こってきます。
適切な時期に抗生物質を内服して、副鼻腔炎を予防することが重要です。