- 家庭の医学 -
よく見られる大人の病気

大人の蕁麻疹(じんましん)

からだのすみずみにまで存在する細い血管では、ふつうでも常にいろいろな物質や水分のやりとりが血管の内外で行われています。

蕁麻疹は皮膚の浅いところの血管で、水分が血管の中から 外に洪水のように一方的に流れ出て、部分的に水たまり-限局性浮腫-を生じたものです(図1)

蕁麻疹=血管の洪水
図1蕁麻疹=血管の洪水

このように血管からの水分の流出を起こすのは、いろいろな刺激に反応してヒスタミンという物質が放出される結果、血管の壁の変化が起こり血管の透過性の亢進が起こるための考えられています。

大人の蕁麻疹の多くは原因がよく分からずに起こります。
食べ物が原因で起こる蕁麻疹は大人では少なく、体調が悪いときや体質が何らかの原因で変わったときに起こりやすく、また自律神経失調症として起こることもあります。

本院でよくみられる蕁麻疹様の発疹を紹介しましょう。
典型的な蕁麻疹では、蚊に刺されたときのような盛り上がった発疹(膨疹)がまたたく間に大きく広がっていきます(写真1,2)
かゆみが強く、かいた痕は赤い盛り上がったすじを作ります。

写真をクリックすると拡大します

蕁麻疹-写真1
写真1典型的な蕁麻疹

蕁麻疹-写真2
写真2典型的な蕁麻疹

蕁麻疹は数時間もたつと自然に消失していきますが、一日のほぼ同じ時間になると再び出現してきます。
朝から出る蕁麻疹もありますが、多くは夕方から出ることが多く、入浴でからだが暖まった後や、飲酒後に出やすくなります。

したがって蕁麻疹の出るときには長湯はさけてさっと入る程度にし、飲酒はさけて食事はあっさりとしたものにした方が無難です。

蕁麻疹の出やすい時にとくにカニ、エビ、カイ類を食べると急にかゆくなるときがあるので注意しましょう。
このタイプの蕁麻疹は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬がよく効き、比較的治りやすい蕁麻疹と言えます。

ふつうの蕁麻疹は地図状の大きな膨疹を作りますが、中には2,3cmくらいまでの小さな膨疹がからだや腕にたくさんできることがあります(写真3)

蕁麻疹-写真03
写真3蕁麻疹の小さな膨疹

蚊に刺されたくらいの膨疹がたくさん出ますが、中には周囲だけが赤くなり中心部は比較的白く見えることもあります。
このタイプの蕁麻疹はかゆみが強いだけでなく、長期間持続しやすい特徴があり、何ヶ月も蕁麻疹に悩まされることがあります(慢性蕁麻疹)。

原因はよく分かりませんが私見としては、疲れやストレスなど自律神経が関与しているのではないかと考えています。
この蕁麻疹は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬などの内服薬の効果が乏しく、治療にたいへん苦慮します。

かゆみが強く、治りにくい場合には少量のステロイドの内服を併用すると軽快していきます。
ステロイドは早期に徐々に減量していきますが、中止すると再び悪化しやすくなります。
このような治りにくい蕁麻疹も数ヶ月もすると自然に出なくなるようです。

蕁麻疹と蕁麻疹様紅斑

蕁麻疹と思われる発疹の中には、蕁麻疹様紅斑と思われるものがあります。
紅斑とは皮膚の血管が拡張して赤い皮膚の色の変化を生じたものです。
この場合も軽く盛り上がってきたり、軽度のかゆみを伴うことがありますが、蕁麻疹ほどかゆくはないようです。

周囲だけ赤くなり、中心部は比較的白く見えるもの(写真4,5)や、

蕁麻疹-写真04
写真4蕁麻疹様紅斑

蕁麻疹-写真05
写真5蕁麻疹様紅斑

くっきりと赤く盛り上がって膨疹をつくるものもあります(写真6)

蕁麻疹-写真06
写真6蕁麻疹様紅斑

また両者の中間と思えるようなものもあります(写真7)

蕁麻疹-写真07
写真7蕁麻疹様紅斑

蕁麻疹が、血管の透過性亢進-限局性浮腫-強いかゆみと膨疹が原因であるのに対し、このような皮膚の変化は、血管の拡張-紅斑-軽いかゆみと軽度の膨疹 といった反応で起こるのではないかと考えています(私見)。

いずれにしてもこれらの紅斑を蕁麻疹とはっきりと区別することは困難と思われます。

関連ページ

↓こちらの子どもの蕁麻疹のページもご覧ください。

よく見られる大人の病気:目次へ

よく見られる大人の病気

1. 診察室でよく見られる症状 肩こり 肝機能障害 更年期障害 口の中の病変 せき めまい 頭痛 動悸 耳鳴り 腹痛 味覚障害と舌の痛み ニオイの異常(嗅覚障害) 胸の痛み(胸痛) 睡眠の障害(不眠症) 胸やけ、げっぷ 胃痛・胃もたれ 腹部膨満感、腹鳴 下痢 便秘 口臭 喉のつかえ(喉の異常感) ふわふわめまい・頭重感 ジャーキング 神経調節性失神 長引く声がれ-声帯まひ 眼瞼痙攣 しゃっくり 疲れがとれない・疲労感 口の渇き(ドライマウス) 手足のしびれ 失神 むくみ(浮腫) 物忘れ 手のふるえ 立ちくらみ おなら 声のかれ 冬のかゆみ あごの痛み-顎関節症 冷え症 こむら返り 頻尿 いびき 鼻出血(鼻血) 鼻づまり 汗の異常 微熱 尿もれ(尿失禁) 金縛り・悪夢 目のまわりや顔の痙攣 大人の歯ぎしり 歩くと足の裏に激痛:モートン病 首の後ろ(後頸部)の痛み 中高年に多い弛緩性便秘 中高年者に多いめまい 中高年者の腰痛のときに考える4つのM 2. 皮膚の病気 毛虫かぶれ 大人の蕁麻疹 帯状疱疹 たこ、うおのめ 薬剤性光線過敏症 いろいろある蕁麻疹 りんご病(大人) 足の静脈瘤 みずむし 破傷風 シイタケ皮膚炎 高齢者の帯状疱疹 3. 診察室でよく見られる病気 慢性疲労症候群 偽痛風 リウマチ性多発筋痛症 線維筋痛症 むずむず脚症候群 前立腺肥大症 過活動膀胱(OAB) 間質性膀胱炎 うつ病 単純ヘルペス感染症(大人) 眼瞼下垂 おとなの百日咳 中年に多い椎骨動脈解離 腸内フローラとは 脳脊髄液減少症 高齢者の急な寝ちがえ:頸椎偽痛風を疑う! 咳が続く…大人にも多い百日咳 痛風 急性扁桃炎 膀胱炎と腎盂炎 EBウィルス感染症 食中毒 機能性胃腸症 慢性膀胱炎 過敏性腸症候群 口内炎 高血圧 微小血管狭心症 痙攣性発声障害 肋間神経痛 偽痛風と痛風、化膿性関節炎に注意 緑内障 女性と痛風 子どもの病気はこちら

サイト内検索

 上に戻る