- 家庭の医学 -
よく見られる大人の病気

手のふるえ

ふるえのように自分の意志とは無関係に動く体の一部の動きを不随意運動といいます。

不随意運動には手足や頭のふるえ(振戦)、口や舌をもぐもぐ動かす(口ジスキネジア)、あたかも踊っているようにみえる(舞踏病様運動)、まばたきが多くて両眼を開けることができない(眼瞼けいれん)、片一方の眼の縁や顔がひきつける(半側顔面けいれん)などがあります。

手のふるえの原因

これらの不随意運動の中では、手のふるえがもっとも起こりやすく、加齢とともに頻度が増してきます。手のふるえがひどくなると字を書いたり、食事やお茶や水を飲むにも不自由を生じるようになります。

こうした高齢者の不随意運動の原因としては、

  • 脳の老化に伴う変性、
  • 動脈硬化による脳血流障害、
  • 薬剤によるもの 

などが挙げられます。

このような原因の鑑別のためにも、ふるえをみた時には一度は脳CTやMRIを撮影しておく必要があります。また薬の服用歴を明らかにしておく必要があります。原因のはっきりしない不随意運動では、薬を中止して様子をみるのも有用な方法と考えられます。

ふるえの主な原因疾患

高齢者の手のふるえ(振戦)をみた場合に考えねばならない病気や原因としては以下のようなものです。

  1. パーキンソン病、
  2. 本態性振戦および家族性振戦、
  3. 老人性振戦、
  4. 薬剤性振戦、
  5. 中毒性振戦

1)パーキンソン病

パーキンソン病は脳の黒質という部分の変性が原因で起こる難病の一つです。

初期症状としては、静止時の手などのふるえ(振戦)の他、筋肉の硬直(腕を屈伸させると歯車様のコクンコクンとした抵抗を生じる)がしばしば起こりますが、進行するにつれ表情の変化が乏しくなり動きも少なくなる、歩行時に前屈姿勢となり手の振りも少なくなり急に方向を変えたり立ち止まることが困難になる などの症状がみられるようになります。

パーキンソン病の診断は一般医では困難で、専門医の診察が必要になります。

2)本態性振戦

本態性振戦は人口10万人に対して1000人以上の頻度(パーキンソン病の10倍以上)でみられる遺伝的素因が深く関与している手のふるえです。脳には全く異常はみられません。

家族性に発生するときは思春期から青年期に発症し、同一家族内に同じような手のふるえを認めます。

3)老人性振戦

老人性振戦はパーキンソン病による振戦とよく似ていますが、意識するとかえって手のふるえが強くなり、他のパーキンソン病の特徴がみられません。振戦は腕、頭、下あご、唇に著明です。

本態性振戦が高齢になってから発症したものと考えられています。

4)薬剤性振戦

薬剤性振戦は診察室でまれならず遭遇します。プリンペランやドグマチールなどの薬を長期間飲んでいると手のふるえなどが現れることがあるので注意が必要です。

とくに何か薬を飲み始めてから不随意運動が起こってくると薬による影響を考えなければなりません。

5)中毒性振戦

中毒性振戦は甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病)などの内科的な病気や、アルコール、タバコ、水銀、コカイン中毒などでみられることがあります。

本態性振戦とパーキンソン病のちがい(イラスト1)

手のふるえの本態性振戦とパーキンソン病のちがい
図1手のふるえの本態性振戦とパーキンソン病のちがい

実際には本態性振戦とパーキンソン病による手のふるえが最も多く、この2つの病気の鑑別が重要です。

パーキンソン病は手足にふるえが多くみられるのに対して、頭にはあまり起こりません。
本態性振戦は頭や手によくみられ、足に出ることはあまりありません。

またパーキンソン病の手のふるえは静止時に(いつとはなく)出やすく、何か動作をしようとするとふるえが軽くなる特徴があります。
本態性振戦のふるえは静止時には起こりにくく、字を書くとか物を持つ時など何かしようとするときにふるえが強くなります。

また本態性振戦は飲酒で軽くなりますが、パーキンソン病のふるえは飲酒に影響を受けません。

パーキンソン病は進行性に症状が悪化しますが、本態性振戦は何年も悪化することはありません。

本態性振戦の動作時振戦は、頭のふるえや声のふるえを伴うことがあります。本態性振戦ではふるえ以外に他の神経学的な異常は認められません。

手のふるえをみたときに、字を書く、両指をあわせる、両手を水平にそろえて上げる、コップの水を飲む、コップに水を注ぐ などがうまくできない時には本態性振戦の疑いが強くなります。
パーキンソン病の手のふるえはこのような動作時には軽くなりますが、反対に何もしない無意識のときに強く現れます。

手のふるえなどの不随意運動の診断は一般医には診断が困難なことが多いため、神経内科医の専門的な診察と診断が必要になります。

よく見られる大人の病気:目次へ

よく見られる大人の病気

1. 診察室でよく見られる症状 肩こり 肝機能障害 更年期障害 口の中の病変 せき めまい 頭痛 動悸 耳鳴り 腹痛 味覚障害と舌の痛み ニオイの異常(嗅覚障害) 胸の痛み(胸痛) 睡眠の障害(不眠症) 胸やけ、げっぷ 胃痛・胃もたれ 腹部膨満感、腹鳴 下痢 便秘 口臭 喉のつかえ(喉の異常感) ふわふわめまい・頭重感 ジャーキング 神経調節性失神 長引く声がれ-声帯まひ 眼瞼痙攣 しゃっくり 疲れがとれない・疲労感 口の渇き(ドライマウス) 手足のしびれ 失神 むくみ(浮腫) 物忘れ 手のふるえ 立ちくらみ おなら 声のかれ 冬のかゆみ あごの痛み-顎関節症 冷え症 こむら返り 頻尿 いびき 鼻出血(鼻血) 鼻づまり 汗の異常 微熱 尿もれ(尿失禁) 金縛り・悪夢 目のまわりや顔の痙攣 大人の歯ぎしり 歩くと足の裏に激痛:モートン病 首の後ろ(後頸部)の痛み 中高年に多い弛緩性便秘 中高年者に多いめまい 中高年者の腰痛のときに考える4つのM 2. 皮膚の病気 毛虫かぶれ 大人の蕁麻疹 帯状疱疹 たこ、うおのめ 薬剤性光線過敏症 いろいろある蕁麻疹 りんご病(大人) 足の静脈瘤 みずむし 破傷風 シイタケ皮膚炎 高齢者の帯状疱疹 3. 診察室でよく見られる病気 慢性疲労症候群 偽痛風 リウマチ性多発筋痛症 線維筋痛症 むずむず脚症候群 前立腺肥大症 過活動膀胱(OAB) 間質性膀胱炎 うつ病 単純ヘルペス感染症(大人) 眼瞼下垂 おとなの百日咳 中年に多い椎骨動脈解離 腸内フローラとは 脳脊髄液減少症 高齢者の急な寝ちがえ:頸椎偽痛風を疑う! 咳が続く…大人にも多い百日咳 痛風 急性扁桃炎 膀胱炎と腎盂炎 EBウィルス感染症 食中毒 機能性胃腸症 慢性膀胱炎 過敏性腸症候群 口内炎 高血圧 微小血管狭心症 痙攣性発声障害 肋間神経痛 偽痛風と痛風、化膿性関節炎に注意 緑内障 女性と痛風 子どもの病気はこちら
 上に戻る