脊柱の中を通る脊髄神経からは左右12対の肋間神経が出ています。
肋骨の真下を通る肋間神経により起こる痛みやしびれは、「肋間神経痛」と呼ばれます。肋間神経痛はさまざまな原因で起こりますが、内臓の病気から起こることがあり注意が必要です。痛みの原因を突き止めることが大切です。
肋間神経痛は肋骨に沿って突然キューッと痛くなり、数秒で止まるのが一般的な痛み方です。中には継続した痛みのため知覚過敏になり、触れただけで痛いと感じることもあります。
若い人では、無理な姿勢や重い荷物などを持ち上げた時や強く咳き込んだ時に、肋骨に過大な力が加わって起こることがしばしばあります。その場合、痛みを感じる肋骨の上を軽く叩くだけでも痛みを感じるため、診断は容易です。
気胸や縦隔気腫と間違えないようにするため、胸部レントゲン撮影を行います。
全年齢を通して注意したいのは帯状疱疹で、ニキビに似た疱疹と呼ばれる湿疹が出現する数日前からピリピリとした痛みを生じることがあります。
帯状疱疹では、痛みを感じる所から離れた場所(とくに背骨に沿った付近)に疱疹が出ることがあります。疱疹は痛みを伴いながら、肋骨に沿って左右どちらか一方に帯状に広がります。脊柱の左右にまたがって出現することはありません。
妊婦にも肋間神経痛は多く起こります。おなかの内側からの圧力により、筋肉が伸展されて痛みが生じるのではないかと考えられます。女性で性感染症が原因で肝周囲炎を起こすと、右季肋部(右乳房の下付近)に肋間神経痛様の痛みが起こることがあります。
椎間板ヘルニアや脊柱の病気もありますが、高齢者に多いのは骨粗鬆症による圧迫骨折です。治療後も骨の変形が残り、頑固な痛みが続くことがあります。
注意しなければいけないのは、内臓の病気が原因で起こる痛みです。心臓や血管の痛みを肋間神経痛と思い込んで放置していて、病気の存在に気がつくのが遅れると命の危険もあります。またガンが肋骨に浸潤して起こる肋間神経痛もあり、とくに注意を要します。
内臓の病気があり、その関連痛として肋間神経痛に似た痛みが起こることがあります。痛みの場所から原因となる内臓を推測できます。このように中高年者の原因の明らかでない肋間神経痛では、基礎疾患を見逃さないようにすべきです。
最近、長時間のパソコン使用などと考えられる痛みが増えています。肋間神経は筋肉に挟まれているので、同じ姿勢を長く続けていると凝りが生じて痛みが起こることがあります。できれば15分一度は休憩して、ストレッチなどで筋肉をほぐすのが望ましいです。