内科の外来では原因不明の筋肉痛や関節痛で受診される人にしばしば出会います。慢性関節リウマチや痛風と診断できる人もいれば、原因が明らかではなく診断に悩むことも多くあります。
このような診断が困難な筋肉痛を起こす病気の一つとして線維筋痛症についてすでに本コーナーで説明しました。線維筋痛症ほど多くみられる病気ではありませんが、リウマチ性多発筋痛症もそうした病気の一つです。(図1)
リウマチ性多発筋痛症は一般に50歳以上、とくに60歳以上の高齢者に起こる原因不明の病気です。体の中心に近い部分(肩、腰周囲)の筋肉の痛みやこわばりが主な症状です。
線維筋痛症が血液検査でまったく異常を認めないのに対して、リウマチ性多発筋痛症では高度の炎症反応を認めるのが特徴です。しかし、他にこれといった決め手になる検査がないため、診断は、感染症などを否定しながら総合的に行われます。男女比は1:2とやや女性に多いといわれています。
リウマチ性多発筋痛症では、全身症状、筋肉症状、関節症状の3つが主な症状です。前兆になるような感染症などはとくに知られていません。体に近い部分の筋肉の痛みやこわばりから始まり、それが2週間以上続くのが特徴です。
こうした筋肉の症状以外では、発熱(多くは37℃台の微熱)、全身のだるさ、体重減少などの全身症状と、関節の痛みを伴います。ただし、関節がはれ上がるほどになることは少ないといわれています。これらの症状が急速に出現して、2週間程の短期間に病勢はピークに達します。
筋肉症状としては、筋肉痛が、頚部、肩周囲、腰部、臀部、大腿部に見られ、この痛みは自分で感じられる痛み(自発痛)で、押さえたり、運動してもそれ程変わらないのが特徴です。また、筋肉には赤みや腫れなどはなく、筋力が弱くなったと感じることもありません。
関節症状は、主として痛みが肩、膝、手首の関節やその周囲に見られ、関節そのものが腫れたりすることはほとんどありません。
症状は、急に始まることが多いのですが、治療しないとそのまま続くため、数カ月にわたって徐々に進んだようにみえることもあります。炎症反応を示す赤沈検査や血清CRP濃度が高値となり、そのほかに軽い赤血球数の減少と、白血球数および血小板数の増加がみられますが、この病気の診断を確定する特有な検査はありません。
一方、筋痛があるにもかかわらず、多発性筋炎にみられるような筋肉由来の血清酵素(CKなど)の増加はみられません。また、リウマトイド因子や抗核抗体(こうかくこうたい)などの免疫異常は、通常認められません。
特徴となる症状や検査所見などを組み合わせた診断基準が診断の助けになります。いくつかの診断基準が提唱されていますが、いずれも高齢者であることが第一条件です。
しかし、高齢者の定義については、50歳以上とするものから70歳以上までまちまちですが、60歳以上とするのが一般的です。ただし、実際には、50歳前後でも特徴的な症状がある場合は、この病気と診断されます。
側頭動脈炎を20~30%に合併しますが、このような場合はズキンズキンとした拍動性頭痛と圧痛を一方のこめかみに生じます。
リウマチ性多発筋痛症では側頭動脈炎を合併しない場合には、副腎皮質ステロイド薬が著効します。