正常な便は70~80%が水分で半ねり状またはバナナ状です。しかし、この水分量が90%を超えると水様の便になってしまいます。このように、便に水分が多く含まれた泥状、水様の排便が一日に数回起こる状態を下痢といいます。また、下痢には急性の下痢と慢性の下痢があります。急性の下痢は一過性のものですが、慢性の下痢は2週間以上続きます。
下痢を起こす原因はさまざまですが、下痢はおう吐と同様にからだに害となるものを早く外に出そうとする反射作用でもあります。腸まで達してしまったものを、早く排出しようとするために下痢が起こるのです。そのため下痢はからだを守るための大切な働きとなっていることもあります。
下痢の発生には、以下の3点がそれぞれ関係しあっていると考えられています。(図2)
水分は腸の粘膜から吸収されますが、腸に送られた内容物によっては、水分の吸収が妨げられてしまい下痢が起こります。
腸粘膜の炎症や細菌性毒素により、腸管壁から電解質や水分が過剰に分泌されてしまいます。
腸管は便を送り出すためにぜん動運動をしていますが、精神的なストレスなどがあると、この運動が激しくなり、腸粘膜の水分吸収が妨げられてしまいます。
下痢を起こした場合、その発生の原因となっていたものをすべて排出し、腸管内を空にすることが先決です。ですから食事は控えた方がよいでしょう。
食事をとる場合には少量にし、消化の悪い食品や腸管を刺激する食品の摂取はできるだけ控えましょう。ただし食事は控えても水分補給は十分にするようにしましょう。
下痢によって体内から急激に水分や電解質が失われるので、まずその補給が必要になります。補給には、ナトリウムやカリウムといった電解質が含まれている天然果汁のジュース類、スポーツドリンクなどが適しています。とくに乳幼児や高齢者では、下痢が続くと脱水症を起こしやすいので、下痢を安易に考えずに、十分に気をつけましょう。
下痢の治療として次のような薬物療法があります。
ストレスが原因かもしれません。
不安や緊張といったストレスが原因で、腹痛や便通異常(下痢や便秘)が起こることがあります。これは過敏性腸症候群といわれ、多忙な人やストレスに弱い人、若い女性に多いという傾向があります。
生活上の注意としては、規則正しくゆとりのある生活を送ることと、バランスのとれた食事を心がけることなどがあげられます。そして最も重要なことはストレスをためないようにすることです。
以上のことに気をつけても症状がよくならないときや、日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合には、消化器科や心療内科などを受診しましょう。