1夜間に起こるけいれん発作のような激しいせき込み、
2せき込みの後、息を吸おうとしたときのどの奥がひきつったような窒息・閉そく感が起こり、そのまま息ができなくなり死んでしまうのではないかという強い恐怖感を伴いやすい ことです。
最近、百日咳の免疫がなくなったおとなだけでなく、高齢者にもしばしば見られるようになりました。一度経験すると忘れられないほど激しい窒息・閉そく感ですが、うっかりすると心因的なもの、気管支ぜん息やせき喘息などと間違えやすいので注意が必要です。
百日咳は百日咳菌による感染症です。かぜのような症状で始まり、だんだんせきが強くなります。けいれんするような激しいせきや、息を吸うときにヒューと音が鳴るなどの特徴的な症状があります。せきやくしゃみのしぶきで広がり、治療には抗菌薬を使いますが効果は限定的です。
ワクチンをうっていない赤ちゃんが重症になりやすく、肺炎や脳炎を発症することや死亡する場合もあります。特に生後6ヶ月未満は注意が必要です。近年の患者報告数は年に2千~3千人で、1980年代初めにワクチンが導入された結果、約30年で報告数は約10分の1になりました。かつては患者の多くは0歳児でしたが、2002年頃からはおとなの患者が増えてきました。
おとなの百日咳は子どものように重症になることは多くありません。しかし、子どもを守るためにはおとなの百日咳を予防することが必要です。子どもの百日咳はおとなが主要な感染源になっているとみられるからです。
家族内に感染者がいると、百日咳に対する免疫がない人が感染する確率は80%を超えます。米国では、乳児への百日咳の感染源の75%が父母や祖父母などのおとなという報告があります。おとなは重症にならないだけに、知らぬ間にうつしてしまう恐れがあります。
百日咳の予防にはワクチンが有効です。国内ではワクチンが定期接種になっており、生後3ヶ月から計4回の接種を原則無料で受けることができます。ただ問題は、その効果が長続きしないことです。4~12年で急激に低下することが分かってきました。
つまり、ワクチン接種を受けていても20歳を過ぎる頃から効果が弱くなり、百日咳に感染しやすくなることが分かります。
おとなの百日咳は、まさしく名前が示す通りせきが百日くらい続いて自然に治癒する病気です。抗菌薬の効果は限定的で、一度かかると対症療法しか効果はありません。しかし、途中に窒息・閉そく感を伴うけいれん様のせき発作を起こすため、適切な診断を下すことは重要です。
血液検査は必ずしも有用とは言いがたいのですが、百日咳抗体価(PT-IgG)が100EU/mlなら、最近(4週間以内)の感染を示唆するので百日咳感染の目安になります。