- 家庭の医学 -
よく見られる大人の病気

首の後ろ(後頸部)の痛み

首の後を後頸部といいますが、代表的なこの部の痛みはいわゆる寝ちがえとよばれるものです。

これは不自然な姿勢で睡眠を取った後に起こりやすく、頸部周囲の靭帯や筋肉の急性炎症による痛みの総称としてとらえてよいかと思います。

この寝ちがえに似た痛みが、次に述べる環軸関節に起こる偽痛風(crowned des syndrome: CDS)で、高齢者に多くみられます。
これと似た症状を起こす石灰沈着性頸長筋腱炎があります。本症は発熱、咽頭痛、嚥下時痛、頸部の運動制限を伴った急性発症の首の後ろ(後頸部)の痛みが特徴ですが、好発年齢は20~50歳です。
さらに咽後膿瘍、椎骨動脈解離も後頸部の痛みを生じるため鑑別することが大切です。

首の後ろ(後頸部)の痛みの原因として、次の病気を挙げることができます。

  1. 環軸関節に起こる偽痛風(crowned des syndrome: CDS)
  2. 石灰沈着性頸長筋腱炎
  3. 咽後膿瘍
  4. 椎骨動脈解離

1.環軸関節に起こる偽痛風(crowned des syndrome: CDS)

環軸関節に起こる偽痛風(crowned des syndrome: CDS)は環軸関節の偽痛風で、軸椎歯状突起周囲の靱帯(環軸横靱帯)にピロリン酸カルシウムが沈着して石灰化を生じ、急性の後頸部痛を起こします。
高齢女性に多く、発熱、後頭部から頸部のかけての疼痛、頸椎の回旋制限が3徴です。嚥下時痛や嚥下困難はありません。頸部単純CTで環椎横靱帯の石灰化を認めます。

2.石灰沈着性頸長筋腱炎

石灰沈着性頸長筋腱炎は頸長筋膜へのカルシウム塩(ハイドロキシアパタイト)の沈着によって起こる結晶誘発性の急性炎症です。好発年齢は20~50歳で、急性の項頸部痛、頸部運動制限、嚥下痛などで発症します。
血液炎症所見の陽性化を認め、嚥下痛や嚥下困難を伴うことから、咽後膿瘍や化膿性脊椎炎などとの鑑別が大切です。

発症前に上気道感染や頭頸部の軽微な外傷がみられることがあります。後頸部痛、頸部運動制限(とくに回旋)、嚥下困難を主徴とし、発熱も認めます。血液検査で白血球上昇、炎症反応上昇を認めます。
予後は良好で、頸部固定による局所の安静、消炎鎮痛薬の内服で1~2週間で改善します。

X線写真、4頸部単純CTで第1~2頸椎前面の頸長筋腱付着部に石灰化、第1~4(時に第6)頸椎前面の軟部組織(後咽頭腔)に腫脹、浮腫性変化による低吸収域を認めます(造影効果はありません)。好発年齢は20~50歳とされますが、高齢者でもみられます。

3.咽後膿瘍

咽後膿瘍では、発熱、嚥下時痛、頸部の運動制限などの症状はみられますが、後頸部痛はありません。近年咽後膿瘍の年齢別発生頻度が変化した理由は、抗菌剤の発達で乳幼児に多い原発性咽後膿瘍が減少したこと、免疫の低下した基礎疾患を有する成人例が増加してきていることが考えらます。
小児では発熱や食欲不振などが初期症状として現れます。進行するにつれて、食べ物の飲み込みにくさや痛みが出ることもあります。
膿瘍が大きくなって気道をふさぐと、呼吸困難によって「ぜーぜー」という音が鳴ったり、頭を斜めにする斜頸が見られたりすることが特徴です。

成人では、発熱、のどの痛み、飲み込む時の痛みや飲み込みにくさなどが症状です。炎症が進むとのどが腫れるため、呼吸がしにくくなったり、喋りにくくなったりします。また前頸部に腫脹と発赤を生じることがあります。
首を前屈・後屈するととくに後屈制限が起こることから分かることがあります。咽後膿瘍は縦隔というスペースを通して胸腔に広がりやすく、縦隔炎を起こすことがあります。

4.椎骨動脈解離

椎骨動脈解離は強い外傷だけでなく、頸部のマッサージ、後屈位での洗髪、ゴルフ、激しい咳などの動作、体位、運動などが誘因で起こることがあります。血管性頭痛は一般的に何かをしているときに突然起こることが多く、誘因がない場合もあります。
いつもと違う後頭部や後頸部の痛みを生じた時には、常に本症も考えなければいけません。脳梗塞やTIAなどの神経脱落症状を伴わず、頭痛のみの発症が多いです。
疑わしい場合には脳MRI・MRAを行います。

椎骨動脈解離

*椎骨動脈解離について詳しくは本サイト、「よく見られる大人の病気・症状:中年に多い椎骨動脈解離」をご覧下さい。

よく見られる大人の病気:目次へ

よく見られる大人の病気

1. 診察室でよく見られる症状 肩こり 肝機能障害 更年期障害 口の中の病変 せき めまい 頭痛 動悸 耳鳴り 腹痛 味覚障害と舌の痛み ニオイの異常(嗅覚障害) 胸の痛み(胸痛) 睡眠の障害(不眠症) 胸やけ、げっぷ 胃痛・胃もたれ 腹部膨満感、腹鳴 下痢 便秘 口臭 喉のつかえ(喉の異常感) ふわふわめまい・頭重感 ジャーキング 神経調節性失神 長引く声がれ-声帯まひ 眼瞼痙攣 しゃっくり 疲れがとれない・疲労感 口の渇き(ドライマウス) 手足のしびれ 失神 むくみ(浮腫) 物忘れ 手のふるえ 立ちくらみ おなら 声のかれ 冬のかゆみ あごの痛み-顎関節症 冷え症 こむら返り 頻尿 いびき 鼻出血(鼻血) 鼻づまり 汗の異常 微熱 尿もれ(尿失禁) 金縛り・悪夢 目のまわりや顔の痙攣 大人の歯ぎしり 歩くと足の裏に激痛:モートン病 首の後ろ(後頸部)の痛み 中高年に多い弛緩性便秘 中高年者に多いめまい 中高年者の腰痛のときに考える4つのM 2. 皮膚の病気 毛虫かぶれ 大人の蕁麻疹 帯状疱疹 たこ、うおのめ 薬剤性光線過敏症 いろいろある蕁麻疹 りんご病(大人) 足の静脈瘤 みずむし 破傷風 シイタケ皮膚炎 高齢者の帯状疱疹 3. 診察室でよく見られる病気 慢性疲労症候群 偽痛風 リウマチ性多発筋痛症 線維筋痛症 むずむず脚症候群 前立腺肥大症 過活動膀胱(OAB) 間質性膀胱炎 うつ病 単純ヘルペス感染症(大人) 眼瞼下垂 おとなの百日咳 中年に多い椎骨動脈解離 腸内フローラとは 脳脊髄液減少症 高齢者の急な寝ちがえ:頸椎偽痛風を疑う! 咳が続く…大人にも多い百日咳 痛風 急性扁桃炎 膀胱炎と腎盂炎 EBウィルス感染症 食中毒 機能性胃腸症 慢性膀胱炎 過敏性腸症候群 口内炎 高血圧 微小血管狭心症 痙攣性発声障害 肋間神経痛 偽痛風と痛風、化膿性関節炎に注意 緑内障 女性と痛風 子どもの病気はこちら

サイト内検索

 上に戻る