あごの関節部が痛い、口を大きく開けられない、口を開けたときポキポキ、カクカク音がする-こんな症状が顎(がく)関節症です。
最近の調査によれば顎関節症は男性の10%、女性の17%にのぼり、三十代女性では三割前後に達しています。各年齢層で女性に多くみられる特徴がありました。
関節の痛みが強いと口をわずかしか開けることができなくなり、その結果関節がかたまってしまい、よけいに口をあけることができなくなります。こうなると日常生活にも大きな影響が出てきます。
顎関節症には多くの要因があげられます。歯のかみ合わせの不良、歯ぎしりや歯を強くかみしめる癖、頭部打撲などの外傷、悪い姿勢に加えて、運動不足、急激な温度変化、ストレスも影響します。
このため、それぞれの患者で、単独のはっきりとした原因を特定することがむつかしいとされています。歯ぎしりやほおづえなど、あごに負担をかける動作を避けることが大切です。
内科で多くみられる原因として、睡眠中に歯を強くかみしめているために、顎関節に力が加わって炎症を起こして顎関節症を起こしてくることがあります。このような睡眠中の癖はストレスが原因で、熟睡できないときにみられることがあります。
また昼間でも緊張感が強く、知らず知らず歯をくいしばっているのが原因で起こることがあります。このように顎関節症が心身症として起こってくることがあります。
顎関節症の症状は、以下の3つが主です。(図1)
どの歯か分からないが歯が痛い、首が痛い、耳が聞こえにくいといった症状を伴うこともあります。
治療はまず顎関節症の要因となる日常の動作などを避けることがスタートです。テレビを見ているときなどに歯を強くかみしめていたり、歯ぎしりを自覚したら止めるように努力します。
固い食べ物は避けるようにします。急に大声で笑ったりして口を開けると症状が悪化するので、ゆっくりと口を開けるようにします。ほおづえや電話の受話器を肩と首にはさんだり、うつぶせで眠る姿勢はあごや顔、首の筋肉に負担をかけるので止めるようにします。
あごからほおを冷やさないように冬はマフラーでおおうようにします。全身の血行をよくするような適度の運動(ストレッチ体操など)も有効です。
こうした生活指導でも症状が改善しないときには、マウスピースでかみ合わせ調整をする「スプリント療法」、歯を矯正する咬合療法、薬物療法などが行われます。このような治療は歯科・口腔外科で受けることができます。
心身症が原因と思われる場合には、薬物療法(抗不安薬、抗うつ薬など)が必要になることがあります。
歯科の領域からは、永久歯の歯列が完成し、あごの関節が成長する十代から顎関節症が増加してくることが指摘されています。この時期に生活指導で正しい習慣を身につけ、十八歳までは少なくとも年一回歯科医の受診を受けることが予防に役立つとされています。