高尿酸血症は尿酸値が高い状態です。その症状として最も有名なのは、痛風発作でしょう。本来なら血液中に溶けているはずの尿酸が結晶となり、関節に沈着することであるとき強烈な痛みを起こします。
高尿酸血症は痛風が怖いだけではありません。
結晶が腎臓に沈着すれば、腎臓の働きが悪くなり腎不全から人工透析が必要になる場合があります。
また最近では、尿酸値が高いと動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞の引き金になることが報告されています。
高尿酸血症は健康寿命を縮めたり、命に関わったりする病気の一つでもあるのです。
痛風の患者数は現在100万人ほどといわれますが、そのうち女性患者は6%と言われます。
もともと30~50代の男性に圧倒的に多い病気でした。
1992年の調査では女性患者の割合は1.5%で、実にこの30年で4倍に増加したことになります。
しかも今後、女性の痛風患者がさらに増える可能性があると言われます。
私の診療所でも、30代前半の小柄な女性が典型的な痛風発作で来られ、初めての経験で驚いたことがあります。
ビールなどのアルコールは一切飲まない方でしたが、よく聞くと生レバーが大好きで前日に200~300g(?)もの生レバーを一度に食べたそうでした。
女性ホルモンには尿酸値が高くなることを抑える働きがあります。
女性ホルモンが減少する閉経後に尿酸値が高くなる傾向があり、閉経前までは痛風発作まで起こす女性は少なかったのです。
ところが最近、女性で尿酸値が高めの人が多くなり、閉経前の女性の痛風発作が増えてきました。
肥満、ストレスなども影響していますが、体内で尿酸に変わるプリン体の取りすぎも、大きな要因のひとつです。
結婚後も外に働きに出る人が増えたことにより、仕事でのストレスや、ライフスタイル自体の変化、さらに食生活の欧米化など、女性をとりまく社会環境は大きく変わりました。
それとともに、10~20年ほど前から、おもに男性がかかると思われていた痛風になる女性が増えてきたわけです。
プリン体は“うまみ成分”に含まれ、レバー、内臓、魚卵、干物などに多く含まれます。
また、ビールに多く含まれていることはよく知られています。
仕事帰りに、焼き鳥やもつ鍋を食べながら、生ビールをというライフスタイルを楽しむ女性も現代では少なくありません。
ビールだけでなくアルコール自体に尿酸値を上げる作用があります。
また、ダンスやホットヨガといったハードな運動をする女性も最近は増えていますが、発汗量が増えて、体内の水分が減っても、尿酸は体外に出にくいため、尿酸値は高くなります。
さらに運動後にビールを飲んだりすると、一気に危険な状態になりがちです。
砂糖の多い清涼飲料水が原因になることもあります。
お酒を止めたのに尿酸値が下がらないとき、代わりに清涼飲料水を飲み尿酸値に影響することがあります。
血液検査で尿酸値が基準値を超えて7mg/dl台になっても、まず薬よりは食事や生活習慣を見直しましょう。
3ヶ月から半年で正常値に戻る人は多いです。効果がないようなら薬を飲むことになりますが、それぞれの薬の特徴を考えながら使用します。
高尿酸血症は生活習慣病の一つにも位置づけられるようになりました。
男女にかかわらず、予防や治療が大切です。