後頭部やうなじに経験したことのないような痛みが起こる椎骨動脈解離は、40~50代に多く、ふだんの何気ない首の動きが積み重なって起こります。
血管は老化に伴い傷がついては修復されています。わずかなものも含めると、一般成人の約10%に椎骨動脈解離があると言われています。
正常な動脈の壁は内側から内弾性板、中膜、外膜の3層構造になっています。動脈解離は何らかのきっかけで内弾性板が裂け、そこから血液が内弾性板と中膜の間に入り込んで起こります。
全身のどこの動脈でも起こりますが、最も多いのは心臓から全身に血液を送る大動脈解離です。それに次いで起こるのが脳動脈で、首の後側を走る椎骨動脈解離が約7割りを占めます。
日常的な首の運動の積み重ねや軽いけがで、内弾性板が弱って椎骨動脈解離が起こると考えられています。ゴルフのスウィングやカイロプラクティックの施術時、車をバックさせる時の首の急なひねりでも椎骨動脈解離は起こることがあります。首をポキポキとならす癖がある人も要注意です。
内弾性板に亀裂が入って解離が生じた時に、頭痛が起こります。うなじから後頭部に欠けてズキズキと脈打つような痛み、重くだるい痛みがありますが、これらは片頭痛や緊張型頭痛と区別することが困難です。
解離した血管自体が詰まったり、解離したところから枝別れした血管が詰まったり、血栓という血液の塊が血管の中を移動して別の場所を閉塞させたりして、脳梗塞を起こすことがあります。血液がたまってできたこぶ(動脈瘤)が破れると、クモ膜下出血を起こしてたいへん危険です。
こぶ(動脈瘤)がまだ破裂していない状態であれば、血圧の管理などをしながら経過を観察する保存的治療が中心になりますが、クモ膜下出血が起こればすぐに手術が必要になります。
痛みが起きた時点でMRIなどの検査を受ければ診断がつくことが多いのですが、症状が軽いと受診しない人も少なくありません。
頭痛持ちでないのに、後頭部やうなじ付近に経験したことがないような強い痛みを生じ、仕事や家事を休まなければならないほど強い時には専門病院を受診する必要があります。