年齢とともに睡眠中などに急にこむら返りを起こすことが多くなってきます。
激しい痛みや不安のために十分な睡眠を取ることができなくなることもしばしばです。
ふつうこむら返りは運動中に起こりますが、睡眠中に何回もこむら返りを起こすとどこか具合が悪いのかと不安が強くなります。
こむら返りは専門的には「腓腹筋痙攣(ひふくきんけいれん)」と呼ばれているもので、ふくらはぎのひふく筋や神経が異常な緊張を起こし、筋肉が収縮したまま弛緩しない状態になり、激しい痛みを伴う症状です。運動中に起こるほか、立ち仕事の多い人やお年寄りに多くみられます。
こむら返りはふだん使っていないふくらはぎの筋肉(ひふく筋)の運動神経が何かのきっかけに急激に高ぶるために起こる現象で、運動を長時間続けて疲れていたり、体力が落ちていたりする時、運動不足の時などに起こりやすくなります。
高齢者では慢性の運動不足のために常にひふく筋が緊張した状態にあり、少し足を伸ばしたりふくらはぎを打っただけでもこむら返りを起こすことがあります。また腰椎の変形が原因で、脊髄神経を圧迫するために神経の異常な興奮が起こりやすくなり、こむら返りを起こすことがあります。
こむら返りがどうして起こるかもう少し詳しく考えてみましょう。
私たちヒトのからだは筋肉の収縮と弛緩を調節することによって、バランスのとれた動きをします。この筋肉の調節の仕組みは、脳や脊髄などの中枢から信号が神経を通って筋肉に送られ、筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱のセンサーから逆方向に信号が中枢に送られ、どれくらい収縮するか弛緩するかが決められています。こむら返りは、この仕組みの中で起こる異常収縮です。
筋肉の異常収縮が起こる理由は2つ考えられます。ひとつは神経や筋肉が刺激を受けやすく状態になっていることです。スポーツなどで多量の汗をかいたときは血液中の電解質(ナトリウムやカリウムなど)のバランスがくずれ、神経や筋肉が興奮しやすくなります。
熱中症のひとつの「熱けいれん」と呼ばれるものは、多量の発汗とともに多量の電解質が失われたにもかかわらず、水だけ飲んで電解質が補給されない時に血液が薄められて起こるものです。
もうひとつは、筋肉や腱のセンサーがうまく作動しない場合で、立ち仕事の後や久しぶりに運動した後、加齢とともに夜に起こりやすくなるこむら返りなどはこの理由が考えられます。
足の筋肉が緊張した状態が長時間持続すると、センサーが常に刺激された状態に置かれやがてセンサーがうまく働かなくなります。このときにふくらはぎに余分な力がかかるとセンサーが過剰に反応し、異常な収縮が引き起こされこむら返りが起こります。
また寝ている時は足の温度が低下し、センサーの感度が鈍くなることも上げられます。布団の重みや重力のため足先がのびた状態になっているのもこむら返りを起こしやすくします。寝ていてのびのびをする時に、かかとを前に出すようにするとこむら返りは少なくなります。
ほとんどのこむら返りは病気とは無関係に起こるものです。しかし健康な人でも夏に多量の汗をかいた時に水だけ飲んで電解質が補給されないと、熱けいれんと呼ばれるこむら返りを起こすので危険です。
妊娠中のカルシウム不足、下痢によるカリウム不足などでも起こりやすくなります。利尿剤やある種の漢方薬、民間薬などの薬剤も電解質バランスを崩すことがあります。アルコール依存症や胃摘出後数年たってからビタミン欠乏によって起こることがあります。
最近ビタミンB1不足(若者などの食生活のかたより)によって生じる場合が増加しているので、足のむくみができていないか確かめておくことも必要です。
糖尿病、ある種の筋肉や神経の病気、甲状腺の病気でもこむら返りが起こりやすくなることがあります。変形性腰椎症による神経症状としてこむら返りが起こることがあります。足以外に筋肉にけいれんが起こったり、がんこなこむら返りでは医師による診察が必要です。
ほとんどのものが病気と無関係に起こるものなので特別な治療法はありません。こむら返りがひどい時には、筋弛緩薬、抗不安薬、漢方薬などが用いられます。一般的にはビタミンEを摂取すると効果的といわれています。
スポーツや立ち仕事の後では、筋肉の疲労を取ることが予防に大切です。血行を良くする意味からスポーツマッサージや指圧などを早めに行い、スポーツドリンクなどで水分と電解質の補給を心がけましょう。
慢性的なこむら返りでは運動不足の注意信号と考え、ふだんからストレッチ体操を行うようにしましょう。