立ち上がる時にふらっと感じたり、目の前が白くなって気を失いそうになる症状は若い女性に多く見られます。
立ちくらみはお風呂で長湯した後に急に立ち上がった時にはだれでも感じるものですが、強くなると気を失って倒れることもあり危険を伴います。
立ちくらみは「起立性低血圧」と呼ばれます。一般には20~30歳代の女性に多く見られますが、年齢とともに増加し高齢者では20%前後に認められます。
血圧の上が100より、下の血圧が60より低い場合、低血圧といわれます。
血圧は低くても自覚症状がなく日常生活にも支障がない体質的な低血圧も少なくありませんが、一部の低血圧の人は立ちくらみや倦怠感、ふらふらやめまい、朝に起きづらいなどいろいろな症状が出てきます。
これを低血圧症といいますが、立ちくらみを強く感じる場合(立った時に上の血圧が20以上下降する時)を起立性低血圧といいます。
低血圧は高血圧と異なり、脳出血のような重い病気に結びつかないので、血圧を上げることよりもいろいろな症状を軽くする治療が中心になります。
それほど頻度は多くありませんが、心臓や神経の病気、内分泌(ホルモン)の異常などで強い立ちくらみなど低血圧症の症状が現れることがあります。また内服している薬のせいで立ちくらみなどが起こっている場合もあります。
このような低血圧を二次性低血圧といい、専門医による診断と原因に対する治療が必要になります。
脳貧血と貧血がしばしば混同され誤って理解されていることがあります。貧血は様々な原因で、血液中の赤血球の異常(ふつう数が減少しますが正常のこともあります)を生じた場合を指します。
俗にいう脳貧血は立ち上がった時にふらつきやめまいなどを感じる場合を指していて、赤血球の変化とは関係なく血圧の変化で起こってきます。
貧血が強くなると、たちくらみやめまい、疲労感、息切れや動悸が起こってきます。脳貧血の症状と似通っていますが、血液検査で赤血球数や血色素量の変化で貧血の診断は容易にできます(詳しくは、血液検査で分かること-貧血の検査 をご覧下さい)。
私たちのからだの中には脳や脊髄を中心にした中枢神経とそこから出ている末梢神経とに分けることができます。末梢神経には、手足や顔などの筋肉を動かす運動神経や痛みやかゆみ、触覚に関係する知覚神経、それに自律神経が散在します。
自律神経は血液の流れ、血圧や心拍数、体温などの調節、胃腸の運動などに深く関係していて、私たちのからだを守る上できわめて重要な働きをしています。自律神経は私たちの意志ではコントロールが不能で、脳にある自律神経の中枢から自動的にコントロールされています。
自律神経の重要な働きの一つは脳の血流を守ることです。横になっている時に全身を平均的に流れている血液は、起きあがると血液そのものの重力の影響で足の方にたまってしまいます。すると脳が血液不足になりふらつきやひどいと失神を起こします。
健康な人ではそうなる前に自律神経が働いて血管を収縮させ、血液が下の方に一気に落下するのを予防しています。ところが自律神経の働きが弱いと、これが十分にできなくなります。これが立ちくらみの原因です。
自律神経失調症とは、TPOに応じて働かなければならない自律神経の機能が鈍ったり、働きが悪くなることを指しています。
以上の場合には、自律神経の反応が過敏であったり、反対に鈍感である可能性があります。ただし、このような異常がみられても自覚症状がなければ自律神経失調症とはいえません。
自律神経の働きを整えるための日常生活の一般的な注意を上げてみましょう。
こうした方法でも良くならない時や立ちくらみが強い時には、血圧を上げる作用のある薬を使い治療することができます。