現在でも致死率が約10%に上る破傷風。土の中の破傷風菌が原因の感染症ですが、子どもの時に予防接種を受けているから大丈夫と軽視しがちです。
しかし、予防接種の効果は二十代で消失してしまうので、中年を過ぎたら予防を第一に心がけたい病気です。
破傷風菌は、地表から数cm付近の土や泥のなかなどの嫌気性(けんきせい)環境(酸素が少ない環境)で生息、増殖します。
全国どこにでも存在します。傷ついた手で土をいじる、スポーツで擦り傷を負う、古くぎを踏むなどして感染します。
感染してから一週間後くらいに菌の毒素によって神経の抑制系が侵されて発症します。
まれに分娩時の不適切な臍帯(さいたい)処理により感染し、新生児破傷風あるいは妊婦の産褥性(さんじょくせい)破傷風として発症する場合や、消化管などの手術時に感染する場合もあります。
初期症状は、口が開かない、首筋が突っ張る、飲食物を飲み込みにくいなどです。
やがて全身けいれん、後ろ向きに体がそる後弓反張などが起こり、呼吸困難を伴って生命にかかわるようになります。
1950年ころは年間数千人いた破傷風患者が、現在では年間50~100人程度にまで減りました。
しかし、現在でも患者の約10%は死亡します。
子どものころに三種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)を受けていても、その効果が持続するのは二十代くらいまでです。
実際、患者は中年以降の人が多くなります。土と接触するスポーツ愛好者は、とくに予防を心がけることが大切です。
土をいじってけがをした場合、水道水などで砂粒が残らないように傷口を十分洗い流してから消毒をします。
その後、最寄りの外科を受診してトキソイドという破傷風のワクチン接種を受けることが望ましいです。
しかし、気づかないような小さな傷があって本人が知らないうちに感染するケースもあるので、中年以降の人はワクチン接種を受けるほうがよいでしょう。
子どものころに予防接種を受けている人は、1回の接種ですみます。
こうした予防法を怠って破傷風に感染してしまった場合には、初期症状のうちに設備が整った医療施設を受診すべきです。
早ければ発症して数時間後に全身症状が出てきて生命にかかわってきます。
頻度こそ多くはありませんが、怖い病気であることを良く認識して対応することが大切です。