「風があたっても痛い」と言われる痛風は、生活習慣が原因の関節炎ですが、特に原因もない関節の炎症で激しい痛みと発熱を伴うのが偽痛風です。
70歳以上の発症が多いため、本人だけでなく家族の対応も大切です。
痛風も偽痛風ももともと関節に結晶成分が沈着し炎症が起きますが、結晶成分が尿酸である痛風に対し、偽痛風はピロリン酸カルシウムである点が大きく異なります。
さらに痛風は暴飲暴食や肥満など、不摂生が原因で尿酸値が上がって関節に尿酸が沈着しますが、偽痛風はピロリン酸カルシウムが沈着する原因はよく分かっていません。
血液中のカルシウムが増加する副甲状腺機能亢進症や体内に鉄分がたまるヘモクロマトーシスなどが原因のケースもありますが、それらはごく一部です。ほとんどの場合、沈着の原因は不明で、加齢に伴い誰にでも起こりえます。
痛風が最初に足の親指のつけ根に起きやすいのに対して、偽痛風は膝での発症が多く、続いて手首、首、肘などでも起きると言われています。炎症と同時に38~39度の熱が出やすいのも偽痛風の特徴です。
原因が不明なためこれといった治療法はなく、発症した場合は消炎鎮痛薬の服用など対症療法が主体となります。偽痛風を発症すると、痛みや発熱で動けなくなります。
高齢者は3~4日寝込むと体力が落ちるので、症状が出たら我慢せず、早めに受診して症状を和らげるのが後々のために大切です。
偽痛風と似た病気に、細菌の感染で関節が化膿する化膿性関節炎があります。偽痛風よりも緊急を要する疾患で、重症になると細菌が血液に侵入し、全身に炎症が及ぶ敗血症になることもあります。
またまれですが、成人スティル病との鑑別も必要です。診察と血液検査、レントゲン検査、場合によっては関節液検査をしなければ偽痛風と化膿性関節炎とは見分けはつきません。
疾患を特定するためにも、偽痛風と思われる症状が出たら、早期に整形外科かリウマチ内科を受診することが大切です。
急性経過の単関節炎では痛風や偽痛風の発作が頻度としては最も多くみられます。ただし、死亡率が11%と高く、治療開始が遅れると不可逆的な関節破壊が発生する化膿性関節炎はどのような状況下でも必ず鑑別に入れます。
化膿性関節炎では発熱は40%弱にしか認めず、炎症所見は陽性であれば疑いを高めるのには有用ですが、陰性であっても化膿性関節炎を除外するのは危険です。
診断の鍵となるのは関節穿刺ですが、グラム染色の感度は50%程度と言われます。化膿性関節炎患者の5割弱に関節の基礎疾患があると言われており、グラム染色で尿酸もしくはピロリン酸カルシウムの結晶を認めても、感染の除外はできないことに注意すべきです。