通常、便通は1~2日に1回といわれています。そのため、1~2日便通がないと便秘だと思う人が多いかもしれません。しかし、回数は一つの目安にすぎず、3日に一度でも、その人に苦痛がなければ便秘ではありません。
しかし、便が排泄されるまでの時間が長くなると、便に含まれている水分が大腸から吸収され続け、便が硬くなり、排便が困難となってしまいます。このように排便に苦痛を感じる状態を便秘といいます。また、便秘は一般的に女性と高齢者に多くみられます。
私たちの消化管では、口から入ったり、胃液・胆汁などのように体内で産生されたりする体液が毎日9リットルにも上るといわれています。そのうち8リットルが小腸で再吸収ないし回収されて、約1リットルの液体が小腸から大腸に入っていきます。
したがって大腸に入るときには腸内容は液状といってもいいくらいです。これが大腸を通過する間に液体の90%がふたたび再吸収され、体外に出るときには水分の少ない固形の糞便となるわけです。水分量が多いときにげり、少ないときには便秘となります。
便秘の分類にはいくつかあります。発症の仕方によって急性と慢性、原因により機能性と器質性、基礎疾患の有無により症候性(続発性)と突発性などと分類されます。このなかでもっともふつうにみられる便秘は慢性機能性便秘です。
慢性機能性便秘はとくに原因のみあたらないで起こる便秘で、習慣性便秘とも常習性便秘ともいわれます。この便秘はさらに弛緩性便秘、けいれん性便秘、直腸型便秘に分類されます。これらの慢性機能性便秘が日常によくみられる最も多い便秘です。
大腸の運動機能が低下して、糞便の腸内通過時間が長くなることによって起こる便秘を弛緩性便秘といい、常習性便秘のうちで最も多くみられます。
食生活のかたより、生活環境の変化、不規則な排便習慣などが原因のことが多く、繊維性食品が不足したり、便意があっても無理にがまんしたり、長時間すわって仕事をして運動不足が原因で起こることもあります。さらにストレスにより起こるもの、腹圧の低下で起こるもの(老人、経産婦、呼吸器障害者など)もあります。旅行時にみられる一時的な便秘も環境の変化によるものです。
若い女性では食事量が少ないため、とくに朝食を減らしたり、まったく食べないこと、また朝化粧に時間がかかって排便時間がとれないために、腸の排便リズムが乱れて起こることがあります。
大腸のけいれんや腸運動(ぜん動運動)の亢進により大腸の輸送機能・排便運動の障害で起こり、若年者に多く腹痛を伴います。ころころとしたウサギの糞のよう硬い便の排出により腹痛は楽になります。過敏性腸症候群に似た便秘と考えられています。
糞便が肛門近くの直腸に達しても、便意が起こらないために生じる便秘です。便意をむりやり抑えてしまう生活習慣、下剤や浣腸の乱用、痔などの肛門疾患および弛緩性便秘に合併して起こることがあります。
食物は胃の中で消化酵素と強い酸の働きで消化され、十二指腸に送られます。小腸の入り口で胆汁とすい液によってさらに消化が進み、小腸へ送られ栄養分が吸収されます。残りかすは大腸へと送られ、水分が吸収され便が形づくられます。
大腸は便を貯留し、排泄する働きがあります。私たちの便意のきっかけをつくっているのが「胃-結腸反射」です。食べ物が胃に入ると胃がふくらみ、動き出します。そして胃の動きが刺激となって大腸が運動を始めます。その結果、便が肛門へと移動し、直腸に達すると便意を感じるのです。こうして自然な排便が起こります。(図1・2)
胃-結腸反射が起こり、便意を感じていても、そのときにトイレに行かないとそのうちに便意はなくなってしまいます。こうしたことを繰り返しているうちに胃-結腸反射が起こりにくくなり、便意を感じにくくなってしまいます。
朝食を抜いたために腸の運動が不十分になり、便意が起こらないことがあります。また、食物繊維の少ない食事や、水分の摂取量が少ない場合にも便秘が起こりやすくなります。
腸の運動は自律神経によって支配されています。自律神経は意識して動かすことはできませんが、感情やストレスの影響を受けやすく、そのため腸の動きも影響を受けることになります。緊張やストレスで腹痛やげりを生じるのもその例です。逆にストレスが原因で腸の動きが低下して便秘になることがあります。
便秘と食生活は大いに関係がありますから、その見直しが大事になります。朝食はきちんと食べているか、食物繊維の豊富な野菜を十分にとっているか、無理なダイエットをしていないかなどチェックしてみましょう。
野菜は食物繊維を含むものが多いので、毎日いろいろな種類の野菜を十分にとるようにしましょう。ある程度の量をとるには温野菜が適しています。また、豆類、乾物(干し椎茸、かんぴょう、切り干し大根など)、海草類にも豊富な食物繊維が含まれています。
朝起きてから、一杯の水や牛乳を飲み食事をして、胃と腸を刺激したところでトイレタイムにしましょう。朝は忙しいものですが、慢性の便秘に悩んでいる人は、こうした余裕を持って欲しいものです。はじめは便意を感じなくてもトイレに行くことを習慣にすると、排便のリズムが戻ってきます。
運動不足でも便秘になりがちです。腸の動きを活発にさせるためにも、適度な運動を取り入れましょう。腹筋を使った運動、ストレッチ体操なども腸への刺激になります。
また、手のひらでゆっくりと時計回りにエンを描くようになでて、マッサージするのもよいでしょう。ストレスを感じているときには、入浴や運動で気分転換をするのも効果的です。